軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

桜の国チェリンと七聖剣【五】

その後、オーレストの街を右へ左へと進んで行けば――アークストリア家の屋敷へ到着した。

(やっぱり立派な家だなぁ……)

広い庭の付いた地上三階建ての木造建築。

『本宅』に『離れ』、その他プライベートジェットの格納庫などなど……。

いったいどれくらいお金を稼げば、こんな 豪邸(ごうてい) を建てられるんだろうか?

(このレベルのは無理だけど、いつかは俺も自分の家が欲しいな……)

理想を言うならば――六畳ぐらいの居間が二部屋。

そこに素振りのできる庭があったらもう……最高だ。

そんな漠然とした将来のことを考えていると、

「――アレンくーん、こっちこっちー!」

少し遠くの方から、俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

そちらへ目を向ければ――玄関口に立った会長が手を振りながら、ぴょんぴょんと小さく跳ねていた。

その両隣には、リリム先輩とフェリス先輩もいる。

「会長、リリム先輩、フェリス先輩。おはようございます」

「おはようございます、先輩」

「…………おはよぅ」

俺たちが簡単に朝の挨拶を述べると、

「みんな、おはよう。これから一週間、思いっきり遊びましょうね!」

「おはよう! およそ半年ぶりの合宿だ、気合を入れていくぞ!」

「…………おはようなんですけど」

久しぶりの旅行でテンションの上がった会長。

いつも通り元気 溌溂(はつらつ) としたリリム先輩。

見るからにぐったりした様子のフェリス先輩。

三者三様の反応が返ってきた。

(確かフェリス先輩 も(・) 、朝は苦手なんだっけか……)

夏合宿のときも、こんな感じだったような気がする。

「そう言えば会長、レイア先生の姿が見えないんですが……?」

俺がそう問い掛けると、彼女は首を横へ振った。

「残念だけど、先生は今回同行しないわ。聖騎士協会の本部で開かれる、『とても大事な会議』に出席する予定なのよ」

「とても大事な会議……ですか?」

そんな話は初耳だった。

「えぇ、一般には公表されていない極秘の会議よ。議題は確か『神聖ローネリア帝国への対応』だったかしら……? 各国の首脳陣に加えて、あの『七聖剣』が四人も顔を出す大規模なものよ。リーンガード皇国からは、天子様とお父さんが出席するの。『黒拳のレイア=ラスノートには、ボディーガードを依頼した』……って、お父さんが言っていたわ」

「なるほど、そうだったんですか……」

どうやら俺たちの知らない『世界の裏側』では、こうしている今も大きな動きがあるらしい。

(でも、七聖剣か……)

強い正義の心と人の域を越えた圧倒的な力を併せ持つ、聖騎士協会が誇る人類最強の七剣士――それが七聖剣だ。

(俺よりも遥か格上なのは間違いないとして、いったいどれほど強いんだろうか……?)

もし機会があるならば、ぜひ一度剣を交えてみたい。

ぼんやりそんなことを考えていると、

「ところで、その……ねぇ、アレンくん? ど、 どう(・・) 、かな……?」

伏し目がちになった会長は、視線だけをこちらに向けて小首を傾げた。

「え、えーっと……? ……あぁ、なるほど」

その『視線の意図』を理解した俺は、彼女のつま先から頭のてっぺんまでジッと見つめた。

薄い青のロングスカートに体の線が浮き出た黒いインナー。

その上からは、半透明の白い羽織ものを着ていた。

胸元には品のいいネックレスが輝いており、とてもよくまとまった魅力的な装いだ。

「はい、とてもお似合いだと思いますよ」

「そ、そう……? そ、それならよかった……っ」

俺と会長がそんな話を交わしていると、

「――うんうん。アレンくんに褒めてもらえてよかったなぁ、シィ?」

にやにやと人の悪い笑みを浮かべたリリム先輩が、横合いからひょいっと顔を出してきた。

その顔と言葉には『含み』があり、それを受けた会長はビクンと体を揺らす。

「り、リリム……? い、いったい何が言いたいのかしら……?」

「いやぁ、別にぃ……? ただ昨日は一日中『可愛い服選び』に付き合わされたものだからなぁ……。その成果があってよかったなぁ、と思っているだけだ」

「んなっ!? ちょ、ちょっと……それは秘密にするって約束でしょう!?」

会長は顔を赤く染めながら、リリム先輩をキッと睨み付けた。

「おー、怖い怖い! そんな顔をしていると、アレンくんに嫌われてしまうぞ?」

「う゛っ……。も、もぅ……っ! ほら、アレンくん! お馬鹿なリリムなんて放っておいて、早く行きましょう!」

「え、あっ、はい」

そうして俺たちは、アークストリア家の保有するプライベートジェットの格納庫へ向かう。

そこにあったのは、夏合宿のときに乗ったものと同じ飛行機だった。

その後、会長の後に続いて乗り込み口を登っていると、

「――あっ、そうだ。今回の合宿では、『楽しい企画』も用意しているから期待しててね?」

彼女はそう言って、鼻歌まじりに機内へ乗り込んだ。

(た、楽しい企画か……)

それは『会長が』楽しい企画なのか、それとも『みんなが』楽しい企画なのか……。

(とりあえず、春合宿中もあまり気は抜けなさそうだな……)

そうして飛行機へ乗り込んだ俺たちは、桜の国チェリンへ飛び立ったのだった。