軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

桜の国チェリンと七聖剣【四】

三月一日から三十一日までの一か月間は、千刃学院の春季休暇期間となる。

(春休みと夏休み、年に二回しかない貴重な長期休暇だ。しっかり有効活用しないとな……!)

この一年。

偶然とはいえ、俺は黒の組織の計画や作戦をいくつも潰してきた。

そのせいもあって、今は奴等から命を狙われる立場にある。

きっと今後、さらなる強敵が差し向けられることだろう。

(リアやローズ――大切な人を守るためには、もっともっと強くならないとな……)

そのためには、やはり厳しい修業が必要だ。

(よし、やるか……!)

三月一日。

改めて気合を入れ直した俺は、早速素振り部の活動へ乗り出した。

春休みといえど、部活動は変わらず実施されるのだ。

「「「――ふっ、はっ、せいっ!」」」

日中はみんなと一緒に気持ちよく剣を振る。

夕方になって素振り部の活動を終えた後は、リアやローズたちと実戦を想定した模擬戦だ。

さらにその後は寮の裏手にある空き地へ向かい、月明かりに照らされながら一人で素振りに没頭する。

そうして日付が変わる頃になってようやく、

「――おやすみ、リア」

「うん。おやすみなさい、アレン」

リアと一緒に温かいベッドで眠る。

ほとんど全ての時間を『剣術』へ注ぎ込んだ、過酷だけど充実した日々が二週間ほど続いた。

それからまさに『激動』としか表現できない、壮絶なホワイトデーをなんとか乗り越え……ようやく迎えた三月十五日。

今日からちょうど一週間、生徒会の『春合宿』が行われる。

時刻は朝の七時。

俺とリアは待ち合わせ場所の千刃学院正門前で、ローズと合流を果たした。

「――おはよう、ローズ。今日もいい天気だな」

「ローズ、おはよ。よかったわ、ちゃんと朝起きられたのね?」

「ふわぁ……っ。…………おはよぅ」

特別朝に弱い彼女は、大きな欠伸をしながら小さく左手をあげた。

「あはは、眠そうだな」

「普段学校がある日より二時間も早く起きているわけだから、無理もないわね……」

「…………うん」

ローズはまるで小さな子どものようにコクリと頷いた。

(いつもの凛とした彼女からは、想像もできない姿だけど……)

さすがに一年も一緒にいれば、この『ふにゃふにゃ状態』にも慣れた。

「ローズ。ちょっとしんどいと思うけど、もう少しだけ一緒に頑張ろう? 飛行機に乗ってさえしまえば、しばらくの間は寝られるだろうからさ」

俺が元気付けるように声を掛ければ、

「……………頑張る」

彼女は寝ぼけまなこをこすりながら、そう言ってくれた。

「――よし。それじゃ、そろそろ行こうか?」

「えぇ、そうしましょう!」

「…………行こう」

そうして俺たちは、集合場所であるアークストリア家の屋敷へ歩き出した。

その道中、自然と話題は合宿先へ移っていく。

「『桜の国チェリン』か、楽しみだな……」

「ふふっ、そうね。ちなみになんだけど、チェリンの名物は『桜餅』よ! お腹いっぱい食べようね、アレン?」

「あ、あぁ……っ。が、頑張るよ……!」

春合宿の行き先は、桜の国チェリン。

五大国の一つ『ポリエスタ連邦』の端に位置する小国だ。

年中桜が咲き誇る美しい孤島で、世界有数の観光地となっている。

特に国宝とされる『 億年桜(おくねんざくら) 』は、教科書にも載るほど有名だ。

なんでも『十数億年』前から咲く、超巨大な桜の木だと言われている。

(しかし、十数億年か……。一応、俺と『同い年』になるな……)

ちょっとした『仲間意識』のようなものを感じていると、

「……あそこは、いいところだ。本当に、美しい桜が咲く……」

朝日に目をしぱしぱとさせたローズが、ポツリポツリと言葉を紡いだ。

「あれ、ローズは行ったことがあるのか?」

今の口振りは、まるで実際に現地の桜を目にしたかのようだった。

「……あそこは私の生まれ故郷だからな」

「そ、そうなのか!?」

「そんなこと、初めて聞いたわよ!?」

てっきりローズは、リーンガード皇国の生まれだと思っていた。

「ん、言ってなかった……? そうだな……。私が国を出たのは十歳のときだから、チェリンに帰るのはもう五年ぶりになるか……。ただ、 気を(・・) 付けて(・・・) ほしい(・・・) ……。あそこに……は私、の……ふわぁ……っ」

ローズはそこで話を打ち切り、黙り込んでしまった。

どうやら、襲い来る睡魔と必死に戦っているようだ。

(『あそこには私の』……?)

その先が少し気になったけど、こんなところで無理をさせるわけにもいかない。

話の続きは、彼女がしっかり目を覚ましてから聞くことにしよう。

「ど、どうする、アレン……? このままだと本当にここで寝ちゃいそうよ……?」

「そうだな……。ローズ、ちょっとだけ早歩きしたいんだが……いけそうか?」

肩を優しく揺さぶりながらそう問い掛けると、

「…………うん」

彼女はコクリと頷き、わずかながら歩行速度が上がった。

そうして俺たちは、会長たちの待つアークストリア家の屋敷へ足を進めたのだった。