軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

102話: 悪魔の証明

「伊織!」

「なんだよ」

「好きにやって来い」

「うるせえ」

いおりんは総司くんと謎の会話をした後、走って行ってしまった。

今から、いおりんはしおりんに会いに行くんだ。

しおりんが、いおりんに謝りたいって。

そっか。しおりん、はんせーしてくれたんだ!

これで二人は、仲直りってことでいいんだよね?

いやいや待って! 考えるんだよ明里!

あの二人の関係は、昼ドラみたいにどろどろしてる!

そんなに簡単な話じゃないんだ!

そう、ヒントはある!

しおりんは、わざわざライブのステージにいおりんを呼んでる。

それは、たくさんのお客さんに見られながら謝るってこと!

みんなの前だと、謝られたいおりんもNoとは言いにくい!

つまりこれは……、強制的な仲直りの儀式!

教室(※1)で、みんなの前でごめんなさいをするのと一緒だ!

(※1:ここでは小学校の教室を指す)

さっき総司くんが言ってた「好きにやって来い」っていうのも、「別にみんなの前だからって仲直りする必要はないんだぜ」って意味だったんだ!

やばい私、天才かも。

今の私なら、総司くんの考えてることですら手に取るようにわかる!

「なあ、宮本」

「ふっふっふっ。何かな総司くん?」

「悪いが、俺の妹になってくれ」

「………………ちょっと待って」

考えるんだよ明里! この言葉の真意を!

そう、”妹”。この妹が何を指すのかが重要だ!

今考えられる妹のかいしゃくは3パターン。

1、”ナオ”のような、アイドルとしての皆の妹

2、総司くんの弟と結婚してからの、義妹

3、酒を酌み交わした義兄妹

総司くんは一人っ子だから、まず2はあり得ない。

私たちは未成年だから、3の酒を酌み交わすこともできない!

よって、残る選択肢は1!

つまり総司くんは、私にアイドルデビューをしろと言っている⁉

いや、待って! 総司くんが言ったことを思い出して!

………………”俺の”妹になってくれ。

これは、俺だけの妹になってくれってこと?

つまり、俺だけのアイドルになってくれ……とも言えるよね。

俺だけのアイドル……つまり彼女⁉

「だめだよ総司くん! 総司くんには由紀がいるんだから!」

「言葉足らずだったことは謝るが、由紀に妹役は無理があると思うぞ」

「え、妹……役?」

「そうだ。今からお前に、ララバイのライブを撮影中のカメラの前で、俺の妹として大騒ぎしてほしい」

なるほど。つまり、総司くんは私に告白したわけじゃないってことか。

「なあんだ、そんなことか…………それはつまり、私がそんなことをしそうなちびっこに見えるってことかな?」

「ああ、頼む。伊織を助けるためなんだ」

「妹役と二人の強制仲直りに何の関係が⁉」

「強制仲直りってのは意味わからんが、とにかく詩織の謝罪シーンを邪魔する必要があるん。それも、可能な限りファンの反感を買わないように」

しおりんの狙い通りにさせちゃいけないっていうのは、なんとなくわかる。

でもカメラの前ではしゃぐなんて、せいぜい小学校低学年くらいまででしょ?

いくら私がちっちゃいからって、頑張っても中学生くらいにしか見えない。

「無理だよ! いくらなんでもそんなちびっ子に見えるわけないじゃん! ねえ由紀⁉」

「…………」

「ねえチーナ、慎二くん⁉」

「「…………」」

え、なんでみんな目をそらすの?

「大丈夫だ宮本。自分を信じろ」

「自分を信じてるからこう言ってるんだよ!」

総司くんは頭がいいし、作戦を考えるのも上手い。でも、今回に限っては絶対に失敗する!

「なあ宮本。悪魔の証明って知ってるか?」

「総司くん考案の証明方法?」

「さりげなく悪魔呼ばわりされた気がするが今は置いておこう。悪魔の証明っていうのは、”ないことの証明”はとても難しいって話だ。逆に、その反証は非常に簡単だという話にもつながる」

え、ちょっと待って。難しい……。

「……っていうと?」

「そうだな。例えば、”宮本は今後背が伸びない”という命題があったとする」

「伸びるよ」

「それを証明するために、俺は一年間宮本の慎重を測り続け、結果一ミリも伸びなかった」「うっ……」

「しかし、これではまだ証明にはならない。二年後三年後に伸びる可能性があるからな。つまり、宮本の身長が伸びないことを証明するのは極めて困難だということだ。逆に、三日後に身長が2ミリ伸びていたとすると、簡単に命題は否定されてしまう」

「なるほど。つまり、これから伸びる可能性はまだ残ってるってことだね⁉」

「一年間伸びてなかったのか……。まあいい、そういうことだ」

なるほど。それは良い証明だ!

すごく自信がわいてきた!

「でも、それと妹役の何が関係あるの?」

「いいか……」

総司くんは膝を折って私に視線を合わせると、大真面目な顔でこう言った。

「俺は、宮本が小学生だと疑う奴はいないと信じている。これは本当だ」

「そ、そんな……」

「だが、それを証明することは非常に難しい。人類全員に確認することはできないからな。しかし、反証は簡単だ。なぜかわかるか?」

「…………はっ!」

「そう、お前の子供のふりを見て、疑う奴が一人でもいればいい。幸い、ララバイのライブで大勢集まっているし、ナオのファンというロリ専門家も多くいるだろう」

「た、確かに……」

総司くんの私への認識は絶対に改めさせたい。

そのためには、子供のふりをすれば一発で勝てるってことだ。

万が一でも、総司くんの主張は証明できないから、引き分けにはなる。

でも、さすがに恥ずかしすぎる……。

それに、ちょっと屁理屈なような気もするし……。

「うぅん……」

「なあ宮本。俺は、自分が頭のキレる方だと思っている」

「それはまあ、そうだね」

「だがそれと同じように、お前も頭がいいと思ってるんだ。もしかしたら、俺以上かもしれない」

「え⁉ い、いやあ、そんな……えへへ」

「そんな俺達には、ロジカルな決着が似合うと思わないか?」

「思う!」

「よし、ならやるべきことはわかるな?」

「嫌だけど……やるしかないんだね! 行ってくる!」

そして、私は駆け出していく。

結果。私と総司くんは引き分けた。