軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

547話:後輩からの挑戦2

後輩からの挑戦は受けたものの、まずは時間を区切っての打ち合わせ。

僕はあんまりついていけてないネヴロフに、後輩たちの意図を説明した。

「いきなり言い出したのは、俺らを警戒して、準備できないようにするためなんだな? けど話し合う時間くれるって、甘すぎないか?」

「狩りとかならそれでいいんだろうけど、怪我防止にはやらないと。って言うか、そういう気遣い誰がしたんだろ?」

ラトラスがネヴロフに追加で説明しつつ、主導した人物を考える。

すると、ウー・ヤーが何故か僕を指した。

「今回のために怪我をしないように打ち合わせと動きのすり合わせをするように言っていたのはアズだろう」

どうやら僕を見て、怪我の防止策は必要だと後輩は判断したようだ。

それを聞いたイルメが、後輩たちの性格を語る。

「それで言えば、好戦的でも自己主張が激しいわけでもないのに、こうして勝負を仕掛けたのもアズの影響よね」

「え、なんで?」

不穏なこと言い出してない?

僕が喧嘩っ早いみたいに言わないでほしいんだけど。

なんて不満顔してたら、エフィが呆れた目を向けて来た。

「なんでも何も、非力でも魔法に優れていなくても、錬金術があれば勝負に勝てると示したのはアズだ」

「それはどれのこと? 今やったこと? それとも水で的当てのオリエンテーション?」

僕が思わず聞き返したら、エフィが続ける。

「後輩に好戦的なのはウィーリャくらいだ。それが、今は全員がその気になってる。特にアシュルだな。病がちだと言っていたから、勝負ごと自体諦めていたんだろう」

ウー・ヤーも頷いて後輩たちの性格を口にする。

「押し出しが強くないのもあるな。皆品がよく、違うのはウィーリャとポーくらいで、周囲に合わせる。そして合わせるだけ馬鹿を見ると示したのもアズだ」

「あれ、これは僕責められてる?」

大人しかった後輩に、悪の道教えたみたいになってない?

なんて考える僕に、イルメがラトラスで暖を取りながら言った。

ここは屋外だから外の冷えた空気入るんだよね。

「受け身で先輩方のように、就活生になっても自ら行先を選べないようになるよりいいのだと思うわ。今から自分の強みを知るのは」

「俺たちみたいに最初から錬金術でやりたいこと決めてるほうが珍しいって言われてるし、そもそも錬金術の使い方教えてもらえる機会を逃す手ないよ」

ラトラスが僕にウィンクしてるけど、尻尾は不満げにイルメの腕を叩ていてる。

あと使い方って言うのはディンク酒のことかな。

お酒造りは確かにそういう錬金術があるって僕が教えた形だ。

それを聞いてネヴロフが冬毛になってる手を打ち合わせた。

「そっか、これって相手叩きのめすんじゃなくて、俺らが錬金術での勝ち方教えるためにやるんだな? じゃ、何して倒す?」

純然たる疑問なんだろうけど、言ってる内容は容赦ない。

「…………ただの村人がこの学園でこう言っちゃうのって、アズの」

「やめてよ、ラトラス」

不穏な言葉を思わず止める。

というか、言ってるラトラスも気まずい顔してるのは、後輩とは言え貴族がいることを今さら思い出したのかな。

そこに普通に挑戦受けてっていう、ただの平民してたらないような状況だ。

ネヴロフのこと突っ込みつつ、自分も平民として判断がおかしくなってるって自覚したようだ。

貴族側のエフィは気にせず後輩たちの出身を挙げる。

「ウィーリャがロムルーシの大公の縁者、トリキスは帝国宮殿の医師の家系、ショーシはニノホト貴族、イデスは庶子で、アシュルも何処かの庶子で、侍女のクーラも相応の家の出だろうな」

平民じゃない後輩として、立ち振る舞いとクーラの存在で、アシュルの身元を誤解したようだ。

庶子じゃないけど宮殿出されてたはずで、この場合アシュルってなんていうんだろう?

他の家に入れられたらしいし貴族止まり?

継承権持ってるままなら一応王子なのかな?

僕が余計なことを考えてる間に、ウー・ヤーが勝負に関して話を戻した。

「なんにしても、後輩が先を見据えて勝負を挑んだ。だったらここで先達として負けるわけにはいかないだろう」

「だからと言ってやりすぎてもいけないわ。それに、九尾の貴人を相手に負けない戦いを仕掛けた以上。次は勝たないと」

イルメは体面の問題を挙げる。

そして後輩にここで腑抜けても欲しくないからこそ、勝ちを目指す。

僕もそこは同意見だ。

「人数を僕たちに合わせるなら、アシュルは抜ける。これ以上は体力的にも無理だ。足手まといになる」

「それならショーシも無理だな。戦闘に関する意欲というか、品が良すぎて攻撃に向かない」

ウー・ヤーがもう一人抜ける後輩を挙げると、エフィが他の候補を挙げる。

「いや、イデスのほうがやる気という点では低いだろう。最近は錬金術科としての自覚が出たようだが、連携の点では一人遅れてもいる」

「それならポーこそ細いだろ? あいつやる気だけで突っ走るし、連携向かねぇよ」

ネヴロフが中々に厳しい言いよう。

僕たち六人で、向こうは八人だ。

どう見てもアシュルは無理で、けどもう一人誰が抜けるかわからない。

ラトラスとイルメも後輩の顔を思い浮かべながら首を捻る。

「対策のために見極めたいところだけど、逆にこれと言って先頭に立つ子もいないし」

「悩ましいところだけれど、時間が惜しいわね。方向性を決めましょう」

イルメは切り替えて、勝つべき状況からの方策を求めた。

勝った上で錬金術を行使しないといけないけど、道具は手薄、魔法も魔力がほぼからの状態。

考えてみればすごく追い詰められた状況だ。

後輩も勝つ気でこのタイミング狙ったんだろう。

そして僕たちが先輩として断らないし、さらには引き込みたい九尾の貴人の前で退く姿勢は見せられない。

誰が考えたのかわからないけどやってくれるなぁ。

「場を使うべきだね。すでに物陰は多い。そして向こうは人間も多い。つまり、基本的に視覚情報に頼る。獣人でも目がいいウィーリャもそうだ。…………エフィ」

呼んで、僕は視界の端ギリギリに魔法を使って見せた。

それでエフィは何かを察知して頷く。

ラトラスは猫髭を動かして聞いてきた。

「今、アズが火の魔法使った?」

「わかった。俺の少ない魔力でも相手の気を引ける。受け負おう」

応じるエフィには、精霊の真似をしてもらう。

青トカゲのほうじゃなく、人魚のね。

少ない魔力消費で視界の端に火を揺らめかせて意識を逸らしてもらうんだ。

その上でイルメには、使える魔法について確認する。

「魔法で竜巻ってどれくらいできそう?」

「さっきずっと魔法を使っていたから、正直難しいわ。できて一回ね」

「それなら、砂を元に戻す薬を渡しておくよ」

言っただけで、何をするかわかった顔をしてくれた。

次にウー・ヤーだ。

「逆にウー・ヤーには残りの砂を固める薬を渡す」

「ちょっと待て、考えを当てる」

ウー・ヤーは僕の指示を止めてそんなことを言い出した。

砂を固める意図を考えてから、僕に答えを耳打ちする。

残念だけど、障害物を増やすためじゃない。

なんてやってたら、他のクラスメイトも手を挙げて耳打ちしてくる。

うん、こういうクイズ形式、前世にあったな?

この世界って、メガホンあるんだろうか?

「…………確かに薬の効果切れはあるけど、違う。…………小さく固め直して投げつける、違うね。…………いっそ大きく? うん、惜しい。…………いや、ポンプに入る大きさで撃ち出すって、上手くいかないだろうけど、できても当たったら危ないから」

なんか勢いでクイズ形式になったけど、結果的に答えは出なかった。

「けど部分的な正解はあったよ。僕がやってほしいことは…………」

説明するとネヴロフがすぐに声を上げる。

「それ、他で見てる奴らにばれるだろ?」

「もちろん、外野からの口出し厳禁は最初に頷いてもらうよ。向こうは二人抜けるし、言い訳は立つ。だから僕たちが相手にするのは、目の前の後輩でいい」

これはあくまでルールのある試合だ。

急に襲ってくるハリオラータ相手の問答無用な戦いじゃない。

だったら示す実力はどれだけ相手を騙しおおせるかでもいいんだ。

納得とやることを理解して頷き合うと、僕たちは打ち合わせを終えた。