軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

548話:後輩からの挑戦3

短い打ち合わせで後輩の挑戦を受けることになった僕とクラスメイト。

ないないづくしで最初から劣勢は目に見えてる。

けどそこに文句を言えないし、先輩風は吹かせたい。

というわけで、一撃必殺を目指します。

そのためにはまず、後輩たちに気取らせない小細工が必要だった。

「お、アシュルと一緒に待機はショウシだね。となるとイデスが補助主体。ポーは錬金術で何か用意してるだろうから、やるべきは集中力と観察力の攪乱かな」

戦力分析をする僕に、攪乱担当のエフィが肩を叩いて来る。

「アズも、しっかり囮として怪しい動きを頑張ってくれ」

そう、役割的に僕も攪乱だけど、エフィほど魔法が得意でないので、怪しい動きで囮をする。

なんか、クラスメイトたちから満場一致だった。

絶対僕の動きは警戒されてるからって、そんな後輩たちに睨まれてるような言い方しないで欲しいんだけどな。

そんな囮の僕を守るふりをする予定のネヴロフとラトラスが話し合う。

「うーん、ウィーリャどれくらいで来るんだろうな?」

「全力で飛びかかられても押し負けないでよ?」

一番厄介なのは、身体強化魔法と魔力を温存してるウィーリャだ。

火属性の魔法を得意とする竜人のクーラは、すでに魔力が枯渇してる。

他の後輩たちは人間で、魔法学科レベルの使い手はいない。

うん、僕もそんなに魔法得意じゃないけど、魔力的には一応魔法学科には入れるレベルなんだとか。

ただし入っても魔法学科では底辺扱いになるっぽい。

それに比べて後輩たちは、みんな魔法適性はあっても魔力量が僕以下だ。

どうも魔法を鍛えるだけの環境がなかったり、そっち方面を最初から期待されてないから教育されてないっていう人たち。

そもそも僕と比べるべくもない生まれながらの魔法使い、ウー・ヤーとイルメも小声で段取りを確認していた。

「自分たちはウィーリャの後か。こちらも上手く引きつけなければな」

「あまり目立ちすぎても駄目だけれど、手加減が難しいわね」

僕が囮を担うその動きの裏で、魔力枯渇で警戒も緩いだろう二人が下準備をする予定。

懸念は、実行前に気づかれること。

「ポーは気になるものを見逃さない。気づかれないようにしよう」

僕は警戒を指示して、予定どおりに動き出す。

お嬢さまの割に好戦的なウィーリャは、やっぱり一番に跳びかかってきた。

「こちら二人は引き受けましてよ!」

予定どおり、ネヴロフとラトラスが引きはがされるように僕の守りから離れて、ウィーリャを押さえに回ってくれる。

それを受けて、トリキスとイデスがエッセンスを取り出した。

どうやら僕たちに隠れて用意してたらしい。

まぁ、そこは想定内。

実験室は押さえてたし、間を見て作ったり用意できるものには限度がある。

その上で、こっちが全員魔法使えるから、それを封じるために使うことは予想できた。

そしてこっちも想定どおりに魔力が少なくなってるとは言え、人間以上の使い手であるウー・ヤーとイルメに今さらエッセンスは通じない。

「さて、この程度で止められると思わないことだ。こっちは魔法がなくても戦える」

「えぇ、魔法はあくまで補助なのよ。戦いにおいて頼りすぎるべきではないの」

あの、後輩相手に好戦的すぎない?

さすがに戦いなれてない後輩の腰が引けてるんだけど。

なんて言うか、こうして挑戦してきた割に、やっぱり僕たちの後輩って草食系というか、文系というか。

そんなことを考えながら、僕はあえて砂の台に隠れる動きを繰り返す。

それを追おうとする後輩に対しては、エフィが妨害を行った。

「え、あれ? 今何か、うん?」

実は後輩で一番魔力量が多いタッドが、慣れない魔法を使おうとして、エフィに集中力を乱されてる。

魔力はあっても、鍛えて来なかったから魔法は苦手なんだとか。

視界の端ギリギリに一瞬火を揺らめかせると、熱とそれで起こる風や光で簡単に気を散らされる。

さらに確かめようとしてもすぐに消えるから、素直に思考が引っ張られてしまうようだった。

「タッド、右です! 何かされています!」

クーラが気づいて警告するけど、すぐに消える。

ただの火を揺らめかせるだけなんて思ってないから、後輩たちの警戒感が増すばかり。

そしてエフィは動きながら魔法が使える元魔法学科。

実戦経験が少ないらしいクーラじゃ、エフィの妨害は止められない。

「さて、そろそろかな」

僕は砂の陰に隠れつつ、仕込みだ。

囮だから僕を追う後輩たちもいるから、そのまま引っ張り回す。

ウィーリャも、ネヴロフとラトラスの二人がかりで所定の場所へ誘導されてた。

「あ!」

場外からショウシが声を上げる。

後輩たちを誘導してるのがばれたようだけど、先輩たちが口出し無用で止めてくれてた。

ただ僕たちが動くよりもポーが早かったようだ。

「まずはアズ先輩、止めるよ!」

ポーが投げたのはスライム? いや、粘着質な材質の投網!?

何それ、初めて見たんだけど?

僕の頭上に広がったのは、たぶんくっついて離れない系だ。

向かう先に合わせて広げられたから、タイミングはばっちり。

その上手さに驚いたけど、対処は簡単。

当たらなければいい。

そして病弱だったポーと僕とでは、ヘルコフという家庭教師をつけて武芸を学んだ僕のほうが体術は上だった。

「よ、い、しょ」

「あえ?」

僕は半身で避けて、回転する勢いで深く踏み込む。

そのまま接近してポーの腕を掴むと、地面に転がした。

力がないせいで近くから投網を投げたポーは、踏ん張ることもできず転がる。

「悪くないけど、いっそ勢いよく避けられないように発射する装置でも作ったほうが良かったね。もしくは別の足止め策を用意するとか」

「あー、ぺたぺたするぅ、滑るぅ」

転がした先には地面に落ちたスライム状の投網があり、ポーが嘆いた。

動けないほどの粘着力じゃないようだけど、微妙に足の裏で滑って立てないようだ。

見れば他でもスライム状の投網が宙を舞ってる。

粘着力があるのに綺麗に広がるって、相当考えて工夫したはずだ。

けど戦闘系なクラスメイトたちは、高低差がある中で上を取られるような動きはしない。

つまり、当たらなければ問題ない。

「でもこれ、錬金術使う暇ないと俺たちの勝ちじゃ駄目? ですか?」

「おや、錬金術を使ってないだなんて、心外だな」

ポーにそう言って、僕はしっかり集まった後輩たちを確認すると、イルメに合図を送った。

瞬間、砂の台を破壊する竜巻が走り回る。

僕やエフィ、隙を見たラトラス、ウー・ヤーが砂の台に結合を弱める薬を仕込んだんだ。

それらがイルメの風で舞い上がり、崩壊し、後輩たちの視界を奪う。

みんな咄嗟に目を閉じて身を守る中、僕もそうしつつ、ポーの側から退避。

けど確かにアシュルの声は聞こえた。

「避けろ!」

残念ながら、外野からの声は風でほぼ聞こえない。

「こんな風、すぐに収まりましてよ!」

ウィーリャが通りのいい声を使って、仲間を鼓舞するほうがよく聞こえる。

もちろんイルメもすでに魔力足りないからこの一回きりだ。

そして長続きしないのも当たり。

けどこれは目くらましも兼ねてるから、すぐ収まると思って動かないでいてくれることが大事なんだよね。

そして風が収まった時、それはすぐに後輩たちも視認して、トリキスが声を漏らす。

「か、べ…………? どうやって?」

「あ、に、逃げ…………!」

イデスが回らない舌を必死に動かすけど、すでに壁は後輩たち目がけて倒れていた。

バラバラと砂を落としながら、激突前に倒れる風圧で壁は自壊。

ゲリラ豪雨のような音を立てて、砂粒になって後輩たちに降り注いだ。

そして何が起きたかわからず動けない後輩は立ってもいられず、全員が座り込んでいる。

足元は完全に砂に埋まって、すぐさま動くことはできない状況。

その一人一人に、僕たちは相対していた。

「あ、あー! やーらーれーたー」

僕を追いかけてすでに体力が尽きてるらしいポーは、早々に負けを認めて砂の中に倒れ込んで脱力する。

僕はまだ打開策を考えようとする後輩たちに声をかけた。

「さて、君たちには今以上のことができそうかな?」

僕の問いに、後輩たちは逡巡すると揃って首を横に振り、降参を申し出た。

あとはそれぞれの手を引いて、砂の中から救出する。

砂ってけっこう重量あるんだよね。

僕たちのほうも後輩に怪我がないか確認して、見えない位置の砂埃を叩き落とす。

砂って言っても当たったら痛いし、僕たちも避けたとはいえ跳ね返った砂がビチビチ当たって痛かったんだ。

けど後輩たちはそんなことより、突然現れて襲い掛かった壁の正体が気になってる様子。

聞きたそうにこっちを見る顔に、錬金術科の後輩として正しい姿だなんて、僕は思ってしまったのだった。