軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

526話:九尾の貴人1

ルキウサリアに現れた九尾の貴人、紺尾と紫尾。

片方がこの世界で初めて見るオネエな竜人って言うのでもインパクト大だ。

ただそんなことも吹き飛ぶほど派手な二人組だった。

まず鰐のような魔物ドラグーンに乗っているし、さらに周囲には手持ちの鐘や太鼓、鈴を振って踊るおつきもいる。

それらを引き連れた九尾の貴人二人も、金銀財宝って言われるような装飾でキラキラ。

色鮮やかな布を巻いたような衣服は雪で白くなり始めた街並みに浮き上がるようだった。

(…………なんか、石油王っぽい? いや、あれはほぼ白だっけ)

(石油王とはなんでしょう?)

思わず考えると、そこにセフィラが好奇心のまま聞いて来る。

前世のお金持ちっていう雑な説明に不服を言われるけど、今は目の前の状況だ。

僕はそっと竜人二人の間から逃げ出し、そのままヨトシペのほうに行った。

するとヨトシペも捕まえていた尻尾を放す。

「アズ郎困らせるのは駄目だす。連れてくのはもっと駄目でごわす」

「や、やだぁ、ヨッティ。その子、ヴィーのところの子でしょ?」

「そうだぞ、一緒に学園に向かおうとしていただけで、な?」

ヨトシペにそう声をかけつつ、紫尾と紺尾は尻尾を撫でる。

ちぎれるかと思ったって呟いてるのが聞こえた。

「トレビとムッフィは返さないから駄目でげす」

「ヨトシペ、紹介してくれると助かるんだけど」

なんか名乗った名前と呼ばれる名前が違う。

いや、呼び名を使いわける文化なのはわかるし、紫尾と紺尾っていう九尾のあだ名を故国の言語で名乗ってたのもわかるんだけどね。

お願いする僕にヨトシペは尻尾を振りながら教えてくれた。

「紺色がムッフィだす。紫色がトレビでげす。九尾の貴人の二人で、あーしよりもやる時はやるでごわす」

「それは怖いなぁ」

って言ったら、九尾の貴人二人が首を横に振ってた。

けど聞いたことのあるとんでもを考えると、否定できない気がするよ。

その上で、紺尾のムッフィが僕に聞く。

「そなた、ヨッティと何か、その、親しいのか?」

「以前困っているところを助けまして。その縁で親しくさせていただいています」

「それだけ? それにしてはヨッティがこんなに気を遣うなんて…………」

紫尾に言われてヨトシペ見るけど、円尾って言われる尻尾がご機嫌に振られてた。

「ともかく、こんな所にドラグーン放置は駄目だと思うので、何処か移動を」

って言って気づいたけど、見上げる魔物は厩になんて入りそうにない。

どうするつもり、これ?

「待ってほしいだす。今、学園のほうから迎え来るんでげす。ドラグーン柵に入れるんでごわす」

「あ、そうなんだ」

どうやらヨトシペは二人を迎えが来るまでの間持たせらしい。

そこで僕が捕まってるのを見つけて助けてくれたという。

なんかて慣れてるし、ドラグーンが入れたってことは以前からこういうことあったんだろうな。

そうなると、僕はお役御免だと思うけど。

「行く先があるのでしたら、これ以上足を止めていただくのもご無礼でしょう。どうぞ、懐かしき学舎へ向かってくださいませ」

テルーセラーナ先輩がさっさと離脱。

もちろんクーラは侍女を装ってそのままついていく。

僕もって言おうと思ったけど、その前に九尾の貴人が声を上げた。

「錬金術科のあなたはお話くらいいいわよね?」

「アズ郎、そなた青いアイアンゴーレムは見たのか?」

うわぁ、僕だけ捕まった!

テルーセラーナ先輩もクーラも錬金術科なのに。

あと、名前がアズ郎になってる。

いや、元から偽名だからなんて呼ばれてもいいんだけどさ。

「青いアイアンゴーレムでげす? 捕まえたのがアズ郎だすー」

「「ほほぉ?」」

ヨトシペのせいで九尾の貴人に目をつけられた。

話を変えたい。

迎えって言うのが来たら逃げられそうだし、たぶん、国王からの護衛が動いてる様子もないし、身の危険はないはず?

いや、よく見たら他の人が来ないように人員整理されてるな?

僕の護衛じゃなくて街の保安優先されてる?

「えっと、紫尾の貴人の…………殿下?」

「紫尾でも、トレビでいいわよぉ。同じ学舎に学んだ者だもの」

「ではトレビさん。その衣装はヘリオガバールのものでしょうか?」

「そうよぉ。女性の着る色柄よ」

おっと、僕が遠回しに聞いたことを察して、ズバリ答えた。

しかもバッチコンと竜人の目でウィンクまで。

なんかこれ、いっそバシバシにつけまつげとかつけてほしい気がするなぁ。

ワンダ先輩が竜人のクーラにも試させてたし、化粧品としてつけまつげできるかな?

それに紫尾って言われる紫色の表皮だし、アイメイクは何色が似合うんだ?

考え込んでしまったら、横から紺尾のムッフィが顔を覗き込んできた。

「ふむ、モルクイルックの性別がわからないわけじゃない割に、妙な目色をするな?」

「妙な? 人間の肌色と違うので、どんな化粧をしたら似合うのかを考えて…………うわぁ!?」

突然トレビに抱き上げられた。

しかも竜人の縦割れの瞳孔が、キラキラしながら間近に迫って来る。

「何なに? 私に似合うものを考えてくれるのかしら? この女装に興味が? いいわよぉ! さぁ、同好の士たちの元へ連れて行ってあげる! いくらでも語り明かせるわよ!」

「けっこうです! 遠慮します! そういう意味じゃないんです!」

僕は全力で拒否した。

僕に女装の趣味はありません!

「ふふ、最初は抵抗もあるのもわかるわ。けど癖になったら沼よぉ」

「うむ、銀髪か。これなら青も似合うな。おぉ、目の色はなんと金が混じっている」

なんか乗り気の貴人たちが僕を品定めしてくる。

助けを求めてヨトシペ見たけど、全く別のことを教えてくれた。

「ムッフィもトレビも金好きだす。青も好きだすなぁ」

「止めて、ヨトシペ!?」

「アズ郎、女装嫌どす? 一つの手だと思うでごわす」

手って、もしかして僕が何かの時にこっそり動くとかそういう?

そんな気遣いできるんだ…………って、今はいらないんだよ。

しかも相手はどうやらヘリオガバールの王族。

下手なこと言って傷つけて後から問題にされても困るし、なんとか僕にそんなつもりがないことを伝えないといけない。

「えっと、女装に反対はしない。個人の趣味だ。これだけお金もかけて本気でやって、一流の物を揃えてるなら趣味の範疇を越えたライフワークで、パフォーマンスとしての女装家なのはわかる。確か、誰でも変身願望は持っていて、自分じゃない自分になりたいっていう心の欲求があるとかで、より良い自分になりたい、責任ある状況から一時解放されたい、以前の自分から脱却したいっていう気持ちが表れた行動だから、否定するようなことではないけど、僕は、する必要を感じてないから、しない」

あれこれ前世の知識もフル活用して訴えた。

前世窮屈だったからストレス解消方法探す中で、変身願望とかがヒットしたんだよね。

もちろんその内容は別に女装推奨じゃない。

髪型や服装変えて気分転換くらいのものだった。

その時に読んだ付け焼刃の知識を引っ張り出して、なるべく傷つけないように拒否だ。

なんて思ったんだけど、なんか、竜人特有の縦割れ瞳孔の目が余計に輝く。

「女装家…………いいわね。採用よ。別に女になりたいわけじゃないってことが伝わるわ」

「ふむ、美しい者を愛でるのは男女の別を問わないことを説明するのが面倒だったからな」

なんか採用された。

えっと、すごく満足げだけど、まぁ、下ろしてもらえたからいいか。

僕が知らなくていい世界だと思う、うん。

って思ってたら、貴人が揃って僕を見下ろす。

その目は完全に捕食対象見つけたような雰囲気があった。

「いいわねぇ」

「うむ、良い」

僕は声に滲む不穏さを察して、ヨトシペの後ろに隠れた。

いや、隠れられないけど。

それでも途端に、貴人たちはしゅんとする。

なんか力関係見えるな。

九尾の貴人たちはけっこう力尽くなのに、それを上回る力を、この円尾の超人は見せつけたんだろうなぁ。

「「「あ」」」

貴人は進行方向、ヨトシペは後ろを振り返って声を上げた。

僕一人だけ、遅れて三人が見る方向を振り返る。

道の向こうから、魔法で加速した赤と緑の影が近づいて来ているのが見えていた。