軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

523話:新顔3

午後から登校した学園は、マーケットも終わって通常に戻ってる。

と言ってもすぐに冬休みだ。

早い人は雪が降る前にって学校休んで帰省してる。

微妙に静かに感じるのは、祭りの後か、そもそも学生が少なくなってるからか。

錬金術科があるラクス城校の外壁へ向かい、中へ入ると静かにたたずむ竜人がいた。

「あれ、クーラ。どうしたの?」

「お待ちしておりました」

おっと、待たれたようだ。

そして主人の竜人アシュルがいない状態でこれって、あの人だろうな。

「えーと、テルーセラーナ先輩関係?」

「ご名答です」

テルーセラーナ先輩は卒業生の竜人で、お姫さま。

秘密だけど、アシュルの腹違いの姉だそうだ。

そしてクーラの雇い主でもある。

僕はアシュルの学園生活を支えるよう声をかけられ、基本的に連絡役はこのクーラだ。

「冬休みに関してかな? 僕は寮にそのままいるし、僕の学年は全員そうだと思うから、アシュルが残るなら冬の間相手することもできるけど」

「私の学年でもそのように。就活生についてはご存じでしょうか?」

「うーん、去年はマーケットを最後にほぼ会わなかったな」

「就職祝いや送り出しなどは?」

「そう言えばないね」

僕とクーラは目を見交わす。

たぶん理由は錬金術科だからだ。

就活生になっても錬金術師として卒業できるわけじゃない。

話を聞く限り、だいたいが実家に帰るから、どう考えてもお祝いの雰囲気にはならない。

「昨年は、女子生徒で卒業される先輩方と食事を囲んだと聞いております」

そんな女子会やってたんだ。

けど僕は男子だから知らない。

「去年の先輩は、ルキウサリアに就職か、出身地で仕事始めるって人だったから、ルキウサリアを発つのもバラバラだったんだよね」

特に帝都へ向かったヒノヒメ先輩とチトセ先輩は急だった。

なんかもう、イクトが屋敷使っていいって言ったら、すぐに行っちゃって、ちょっと帝都に戻ったら、当たり前の顔して住んでたよね、イクトの家に。

「お呼び出しと共に、就活生の卒業後の進路を知るならば教えてほしいとのことです」

「それは、ウルフ先輩に聞いたら?」

「就職活動で忙しいため、呼び出しには応じられないと」

冬の今に忙しいって、駄目じゃない?

前世の経験からそう思っちゃうけど、ヒノヒメ先輩のような就職する人いるからなぁ。

「僕のほうが学内にいる時間短いけど?」

「私よりも親しく、また、就職を見据えるには新入生よりも適任かと」

うーん、それもそうか。

「わかった。僕も気になるし聞いてみるよ」

それからクーラに今日の放課後、個室のあるお高い喫茶店を指定されて別れる。

教室に行くとやっぱり僕以外は揃ってた。

すぐにラトラスが錆び柄の耳を立てて声をかけてくれる。

「アズ、冬の休暇の予定ってある?」

「冬の? 時間取れるから錬金術の実験やるつもりだよ」

そういう言い訳でまた各所を回ることになるんだけど。

今回一番呼ばれてるのは、天の道の試運転に関しての会議。

運用について色々データ揃ってきたそうだ。

ネヴロフももさもさの冬毛の尻尾を引き摺ってやって来た。

「なぁなぁ、だったらまた工房来てくれよ。錬金炉使った動力難しくてさ」

すると同じく技師の工房に出入りするウー・ヤーも誘うように言う。

「工房は今、色んな合金を作っている。火を使わない合金の作り方をやっているんだ」

それ化学反応っていうんだよ。

うん、封印図書館から持ち出した技術だね。

興味ないとは言わないけどそこは知った内容だ。

エルフのイルメもやりたいことがあるらしく僕に言った。

「アズ、年明けに女子会をするのだけれど、あなた来ない? ワンダ先輩が改良の助言がほしいそうなの」

「僕男だってば」

拒否して笑われる間に、そっと寄って来たエフィが囁いた。

「実験室、休みの間も使えるよう、ヴィー先生から許可を取った」

これは精霊に関しての実験のお誘いだ。

そうだよ、そっちも新顔いるからどうにかしないと。

エフィとヴラディル先生が地道に、また意思疎通図って質疑応答してるらしいとは聞いてた。

気になるけど、就活生の名前が出たしそっちを膨らませよう。

「ワンダ先輩の就職先ってどうなってるのかな? 国に帰ると聞いたけど」

「あら、それは去年までね。錬金術での化粧品作りが形になったから、お家には許可を得てもう一年ルキウサリアに滞在されるの。テルーセラーナ先輩の所でお世話になるそうよ」

イルメが教えてくれると、さらにラトラスも他の先輩のことを話す。

「トリエラ先輩は頷いてくれないからさ、うちの支店に雇う形で、レシピ本作ってもらうことになって。ついでにうちの親戚派遣して、トリエラ先輩の実家と戻らないでいいように交渉するんだ」

どうやら女性の先輩二人は、ルキウサリアでの残留が決定してるらしい。

エフィはそれを聞いて指折り数える。

「スティフ先輩はアイアンゴーレムを調べることに意欲を燃やしているから残留だろう。そしてキリル先輩も予定どおり国へ帰る」

そこはたぶん、その後さらに教会関係の何処かの研究へ行くんだろう。

秘薬とやらを復活させるために。

ネヴロフは小耳に挟んだ程度の話を教えてくれる。

「俺、故郷のことウルフ先輩に色々聞かれたぜ? なんか馬と馬車を仕入れて人足を現地調達したら、商売成り立ちそうだなとかなんとか」

エルフの先輩もどうやら国に帰る気はないらしいけど、ルキウサリアに留まるつもりもないようだ。

ウー・ヤーは話題に上がってない先輩を上げた。

「ロクン先輩はどうするんだろうな? 実家に戻ってもという話だった」

「ラトラス、モ…………ほら、なんだか売込みしてたし、聞いてない?」

僕はつい、モリーの名前を言いかけたけど、ラトラスは気づいて頷く。

「あぁ、帝都の店主に売り込んでたよな。けどそっちでは話進んでないよ」

そこは要確認か。

今日登校してるかな?

そうして先輩たちのことや休みの話をして授業になる。

一応ヴラディル先生に確認したら、もちろん就職先に関しては知ってた。

「あぁ、ロクンな。ウルフと一緒にイアに、ルキウサリアとリビウス間の運送やらないかって言われてるぞ」

ネヴロフ情報からはずれた話が飛び出る。

そして卒業生のイア先輩か。

青いアイアンゴーレムのためにステファノ先輩が残るから、リビウスに帰る計画がとん挫し、そのせいで輸送を担う人員が必要になったんだろう。

「あとオレスはイアの仕事を引き継ぐ形でルキウサリアに残る予定だ」

ヴラディル先生から就活生の進路を聞いて、僕は放課後に寮以外の方向へ向かう。

たぶん登下校を見守る人たちは今頃配置換えしてるから、見失われないように僕も急がず進んだ。

辿り着いた喫茶店では、すでに後輩のクーラが、竜人の国風の衣装で待っていた。

「こういうのって、店側が案内するものじゃないの?」

「お呼び立ていたしましたので、お出迎えさせていただきました」

僕はあえて店の前で会話をする。

それで見守りの人たちには伝わるだろう。

店の中を案内されて個室に入ると、ゆったり座ってお茶を楽しむ竜人の先輩がいた。

テルーセラーナ先輩には、就活生の進路について話す。

すると今後の錬金術科の活動についても聞かれた。

「クーラから聞いたのだけれど、青いアイアンゴーレムの研究を錬金術科が任されるのですってね?」

「えぇ、ゴーレムが錬金術で作れるということがわかったそうで」

「先日のマーケットでは、王城に勤めるジョーが攫われかけたと聞いたわ」

おっと、その話の流れはどういうことかな?

これはお姫さまなテルーセラーナ先輩が、何か重要情報でも握っちゃった?

僕はルキウサリア国王に報告すべきかもしれない内容に、そっと緊張を高めた。