軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

446話:錬金法1

「ソティリオス、女子会って何するんだと思う?」

「お前は何を聞いてるんだ?」

真剣に聞いたら、真剣に返された。

確かになに聞いてるんだろうね?

「なんか誘われちゃって。断ったけど、何するか教えてくれなくてさ」

「他の女子に意見を求めろ。私ではなく」

「錬金術科の女子全員参加らしいんだ。また誘われそうでさ」

ひとえに謎解きのせいだ。

解説役と、レシピの場合その場で作る指揮役が欲しいとか言われた。

もちろん、女子の中に入って何していいかわからないから断ったよ。

どうも先輩たちも参加で、交流深めるっぽいし。

詳しいことは教えてくれなかったけど、本当に錬金術科の女子だけの集まりみたい。

「む、それは難問だな。女子ばかりの中に招かれる。そういう場は避けて正解なんだろうが、相手によっては断れないこともあるだろう。そして会を称するなら女性への手土産も?」

「あ、そうか。手土産とか考えてなかったな。ちなみに女性が主催のお茶会はどんな?」

「呼ばれる時には、父か母の同伴だ。まだ成人していないからな。だが」

ソティリオスは言葉を切ると真剣に言う。

「会を称して、近づこうという女性たちの中に招き入れられる可能性もある」

「うわぁ、有力貴族はそういうこと気にしないといけないのか」

「おい、何故他人ごとなんだ?」

「僕一律お断りだからね。断れないような地位の人は近づいてこないし」

ソティリオスがちょっと羨ましそうな顔になった。

けどすぐに、皇子として駄目なことに気づいてお説教しようとする。

「今しばらくご用意に時間がかかりますので…………これは、お邪魔でしたか?」

ちょうど良くノイアンが外からの連絡を受けて声をかけて来た。

ここはルキウサリアの王城。

僕は呼ばれてゴーレム作成のためにやって来てる。

ソティリオスもユーラシオン公爵に報告するために同席する予定だ。

何か真剣な話と勘違いしたノイアンに、僕はソティリオスからお説教されないように、話を振る。

「ノイアン、女子会への手土産って何がいいか知ってる?」

「でしたら、参加者全員でわけ合えるものが前提ではないでしょうか。ですが場所を提供される方には別途ご用意すべきかと。後はそうですね、何か楽しめる催しを提供するでも提案することで貢献という形もあり得ます」

思いのほかしっかり答えてくれた。

「さすがテスタ老の助手として信任される方だな。だが、お前は聞くことがおかしい。ルキウサリアの知者に何を聞いてるんだ」

「断る時に提供だけで済ませられるって使えそうだし、すごくためになるアドバイスを貰ったと思うんだけど?」

「私が知者などとおこがましい。これは、親戚が多いゆえに漏れ聞いた日常の知恵です」

ソティリオスには怒られたけど、今僕はノイアンの知恵の深さに驚いてるくらいなんだけどな。

まぁ、ノイアンが声かけてきた理由を聞こうか。

「それで、ノイアンはどうしたの?」

「はい。今しばらくお時間がかかりますので、第一皇子殿下並びに、ユーラシオン公爵家のご令息に我が国の姫君がご挨拶をと」

「ディオラか。呼んで」

ソティリオスには聞かない。

だって返事わかってるし。

ディオラがわざわざ来たって聞いてすでにそわそわしてる。

うーん思春期。

色々あってそれどころじゃなかったけど、こういう隠せないところあったな。

「ディオラ…………」

「ウェーレンディア…………」

そして入って来た二人に、僕たちは目を瞠ることになった。

ルキウサリア王女のディオラと、ソティリオスの婚約者のウェーレンディアが揃ってる。

優雅に微笑むウェーレンディアを見て、落ち着きを失くしていたソティリオスの背筋が伸びる。

うん、さすがに婚約者の前であからさまなことはしないよね。

ただ、目がねぇ。

ソティリオス、目がディオラに引っ張られてるよ。

「アーシャさま、本日はご足労いただき感謝いたします」

「ルキウサリアには、錬金術の向上に関して前向きに取り組んでもらっているからね。これくらい労の内にも入らないさ」

表向きの挨拶をしつつ、僕もディオラも隣が気になる。

無言の圧をかけるウェーレンディアに、僕へ無言で訴えるソティリオス。

(これ、ウェーレンディアは婚約者としてディオラの前で遇しろって圧だよね。で、ソティリオスはウェーレンディアに僕のほうから水向けろって感じかな)

(ゴーレム作成においてウェルンタース子爵家の関与は想定していません。主人であれば退室を求めることが可能です)

なるほど、挨拶だけならここで終わりだ。

けどこの後機密の実験がある。

そこにウェーレンディアを噛ませるかどうかって話か。

ディオラも挨拶だけ、しかも婚約者がいる場所でなればウェーレンディアを拒絶はできない。

「ディオラ姫、わたくしもご挨拶をさせていただけますか?」

おっと、ここでウェーレンディアのほうが動いた。

さらには僕に挨拶しつつ、すごく含みのある笑顔を向けてくる。

これは手を貸せってことだろう。

貸したらその分自分も手を貸すっていう、そういう覚悟はできてる。

(ただそれはウェーレンディア個人の範囲。子爵家は関わらないだろうしなぁ)

(巻き込み、ユーラシオン公爵側を制御推奨)

(いや、友達の恋路引っ掻き回す気はないから)

政治的に言えば、ユーラシオン公爵家として切れないウェーレンディアとの婚姻。

それを利用してソティリオスを制御下に置くことはできる。

けどソティリオスは、身分を捨ててもディオラへの思いを達成しようとしてるんだ。

そしてディオラも、嫡男じゃない第一皇子なんていう火種に近づこうとしてる。

ここでウェーレンディアにつけば、ソティリオスは逃げられない。

ディオラは周囲の噂を気にせず僕にアプローチするだろうけど、それはそれで友人の未来を歪める可能性しかなくて困る。

「…………うん、保留」

「は?」

ソティリオスが間抜けな声を出した。

「いや、子供だけで決めることでもないなって。だから、今日のことを一切家にも親にも他言しないと誓約して、後日、ルキウサリア王国立ち合いの下、口束の呪文を秘密裏に受ける。それだけの覚悟があるなら、この後も同行を許可する」

ウェーレンディアが個人で僕に協力するというのだったら、こっちも個人の覚悟のほどを試す。

ここですぐに味方に付くことはしない。

ウェーレンディアもわかった様子で跪拝した。

「お受けいたします」

「待て、ウェルン!」

ソティリオスが止めるのは、口束の魔法が禁術だからってこともある。

そんなのに令嬢が家の後ろ盾も放棄して乗るなんて、異常事態だ。

止めるソティリオスの反応は常識的。

けどディオラは驚いただけで止めない。

どうやらウェーレンディアの意思を尊重するつもりらしい。

そしてウェーレンディアは家の事情以上に、ソティリオスを思ってるようだ。

「ソティリオス、止めるならここは理由がいると思うんだけど?」

「それなら、ユーラシオン公爵閣下と第一皇子殿下の約定の元に、私が同行を拒む」

うわー、そこは頭回るのか。

大人しく婚約者が心配だからって言わないせいで、ウェーレンディアの目が険しくなってるよ。

確かに公爵本人との約束だし、そこに勝手に個人を噛ませるのは僕の掟破りだ。

「まぁ、でしたら私はルキウサリア王女殿下の友人として、第三者の立場を取りましょう」

はい、ウェーレンディアのほうが一枚上手でした。

個人だからこそユーラシオン公爵派閥側じゃなくて、他国を盾にしてきた。

いきなり巻き込まれて、ちょっとディオラのほうが困ってる。

まぁ、僕も口束の魔法のことで一方的に巻き込んじゃってるから、このウェーレンディアの申し出を止められもしない。

「何を考えている?」

反論できなくなったソティリオスの矛先が、こっちに向いた。

「錬金術の理解者が増えてくれたほうが嬉しいなって? まぁ、ここで帰すほうが遺恨残りそうだし。たぶん何してたか必死に探り出す性格じゃない? それこそ子爵家の力も使ってさ。だから、保留のためにも別の問題ぶつけようかと」

小声で内心言ったらソティリオスはがっくりする。

あと、こういう奴だったとかなんとか聞こえる?

ただソティリオスも今以上に詰められると困るせいか、結局押し切られたのだった。