軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

445話:イルメの精霊談議5

イルメに精霊のことを聞くと、ウー・ヤーとは違いがあった。

「エルフには精霊と交信する巫女がいるよね。海人にはいないの?」

「宗教者がいるからそれが近いか? だが、精霊は別に宗教関係なく人に関わる。時には利益もあるが、損も被るんだ」

僕が聞くと、なんだか妖怪のような話をウー・ヤーはし始めた。

「とある川に子供ほどの大きさの虎に似た、鱗に覆われた精霊がいた」

「その時点で何がなんだかな生き物だね」

ラトラスが笑う。

確かに子供なのか虎なのか魚のか。

ただ僕はエフィと目を見交わした。

実験室の新顔の人魚が、まさにそんな感じなんだよね。

小さすぎるけど形は人のような魚のような、生物のキメラっぽい見た目。

「虎って確か、ウィーリャの種族よね。つまりは猫?」

「俺知ってるぜ。大きな猫で熊と戦うくらい強いんだ」

虎を知らないイルメに、ネヴロフが偏った知識を教える。

多分獣人に虎いるからだろうけど、あの山って野生の虎いたの?

ウー・ヤーは、クラスメイトたちが落ち着くのを待って口を開く。

「続けるぞ? この精霊は川から常に顔を出して人を眺める。だがそれで面白がった子供が石を投げた。すると水面下に隠していた鋭い爪でもって子供を襲った」

「禁を破って害をなすのは精霊ね」

「でも、石を投げたくらいでって、それは魔物とは違うの?」

頷くイルメと、わからないからこそ疑問を投げるラトラス。

エフィも自分の手を見下ろして、反応を窺うように聞く。

「というか、精霊は霊的な何かなのに触れるのか?」

真っ当な疑問だけど、僕はエフィが青トカゲ撫でてるの見たからね。

疑問というより、共通項の確認だろう。

「精霊は触れたり触れなかったり、見えたり見えなかったりだ。向こうの気分次第だな」

「その虎か何かの精霊にも利益はあるのか?」

「人間に害をなす水棲の魔物がいないことだ」

謎生物な精霊にも、ちゃんと利益あるようだ。

青トカゲとの共通点を聞いたエフィは考えて、今度は自分の興味を優先する。

「精霊が、魔法か錬金術を助けるような逸話は?」

「さぁ? 聞いたことがないな」

「そこは水関係だと海人は、特に困ることないからじゃないかな」

水の魔法が上手くなるなんて、元から上手い海人に言ってもね。

そんな僕の推測にエフィもウー・ヤーも頷く。

次は、イルメに疑問を向けてみた。

「前にエルフの精霊はいっぱいいても元は一つだって話してたよね。この場合海人の知る精霊はどうなの?」

「別物よ。私たちエルフの信仰に応える精霊が一つなの。世界の最初に生まれた大いなる精霊よ。その後にまた世界の交わりがあれば精霊が新たに生まれるわ」

新たなほうに、大いなるってつかないってことは、宗教的には格下かな。

だからこそ、錬金術で生まれたっていうセフィラも受け入れはした。

でも、人間が精霊を作れるってことには困惑してたから、やっぱり自然発生が原則。

エルフのほうでは精霊の声聞こえない、いなくなってるらしいとも聞いてる。

だから自分から接触持つセフィラのような精霊が作れれば、精霊が減った解明にも役立つって考えか。

イルメは精霊を信仰してても、けっこう錬金術で作る精霊は手段とみなしてるのかな?

「名前は、あるのか?」

エフィがそんなことを聞いてる。

「大いなる精霊はそれ一つで完全なる存在。精霊と言えば、大いなる精霊そのものを指すわ。他に識別のための呼称は必要ではあるけれど、大いなる精霊にはいらないものよ」

「こっちはだいたい地名で名前がつくな。どこそこの精霊と呼ばれる。あぁ、だが何処かの人間と深く交わるとその家の者としての名前がつくな」

イルメとウー・ヤーは、どっちにしても名前を呼ぶ主体は人らしい。

精霊の側から名乗ることはないとか。

そう言えばセフィラも、僕が名前つけてた。

なんて話してたら、ネヴロフが思い出すように言う。

「精霊に、山で声かけられても答えるなって言われたな。一番悪いのは名前をつけることなんだって。そうすると取りつかれて普通の生活できなくなるんだ」

「それ幽霊じゃない? 幽霊に名乗るな、呪われるって聞くよね」

ラトラスが言うのは迷信で、精霊の話とは違う気もしたけど、確か獣人は精霊を悪霊と呼んで忌避してたね。

もしかしておんなじ話なのかな?

「名前…………」

エフィ、こっち見ないで。

青トカゲって別に名前らしい名前じゃないでしょ。

いや、すでにセフィラって前例いるから、僕はもうその程度なんてことない話なんだけど。

そう考えると普通の暮らしって、できてないなぁ。

けどそこは僕の生まれと地位と身分と色々があってのことだし。

(うん、異議を言いたいのはわかったから、掌熱いって)

考えてたらセフィラが主張してくる。

ここは余計なことは考えずにいよう。

「つまり二人の精霊信仰はちょっと違う。けど、錬金術でも精霊が助けるって話には、違和感はないんだよね?」

イルメとウー・ヤーはすぐには答えない。

僕をじっと見るのは、話していい範囲かどうかを測ってるっぽい?

うん、僕制約ないから窺われても困る。

けど、セフィラの話じゃなくて、一般的な話のはずだから、ちょっと言葉選び慎重になるくらいで答えられるはずだ。

「私は、精霊が錬金術を助けるという、ヴィー先生の話を聞いたのが初めてね」

「あぁ、自分もそうだ。だが、確かに違和感は覚えなかったな」

イルメに追従してウー・ヤーも応じる。

ラトラスも口束の魔法関係だと気づいて耳下がったな。

ネヴロフは喋っていいか窺ってるし、一人知らないエフィは首を傾げてる。

「精霊には色々いるってことだね。その生まれも一定ではないし、人の近くにいることもあるにはあるわけだ」

「あぁ、そうだな。そういう、ざっくりしたことしか言えない、か」

「二人ともどうしたの? なんだか企んでるみたいな」

ラトラスが尻尾を立てて言うのに、僕はエフィと揃って口を閉じてしまう。

それの様子にネヴロフがちょっとわくわくし始めた。

「また何かするのか? 今度は精霊で何か面白いことか?」

濁すこともできず、エフィが苦し紛れに別の話を入れた。

「いや、また決闘の話で、な」

「あら、隠れていたのに?」

「実験室に乗り込まれてさ」

イルメに聞かれて僕もそっちの話にシフトした。

そのまままた集団戦のことを話して、精霊のことは有耶無耶に。

まだ聞きたいところもあったし、奉げものとかのことを聞けてない。

けどそういう詳しいところって、たぶんエフィいないほうがいい。

イルメもセフィラの口束の魔法を気にして口が堅くなってしまってる。

教えてと言えば、家宝級の本を持ってくるくらいに熱心なら、今度は魔物との違いで食べたり好きなものがあったりするか聞いてみよう。

「また五人なら、誰か抜けなければいけないな」

「僕は裏方に回って道具作りをしようと思ってる。ウー・ヤーとネヴロフもそっちが良くない?」

ネクロン先生からの課題もあり、二人は頷くんだけど残念そうだ。

イルメとラトラスは、参加については考える様子。

「そうなると、足りない分は先輩か後輩を? だったら次の女子会で聞いておくわ」

「ポーは面白がりそうだね。先輩は勝てば少しは箔付けになるかな?」

女子の連絡をイルメが請け負い、ラトラスはやる気がある人に譲る気があるようだ。

そしてイルメの発言に、ネヴロフが純粋な疑問を口にする。

「たまに聞くけど、女子会って何するんだ?」

「女子だけで集まるのだから、一日喋るんだろ」

「そこはほら、文化交流だとかそれっぽいこと言うべきじゃない?」

ウー・ヤーの雑な回答に、ラトラスがフォローを入れる。

「お土産でお菓子持ち寄ってるのは知ってるし、ワンダ先輩が見栄張っていいもの用意しようと俺に情報聞きに来るんだよね」

「貴族も平民も入り混じってる時点で想像がつかないな」

女子会の手土産情報を持ってるらしいラトラスに、エフィは貴族らしい答え。

これは、僕もこういう答え言っておいたほうがそれっぽいのかな?

「で、実際のところは? 女子会って何するの?」

「ふふ、アズなら面白い余興を提供してくれるのだし、直接来てもいいのよ」

イルメは笑って語らないせいで、なんだか精霊の食べ物よりも気になってしまう。

ただ女子全員で集まってる中に僕が入るのは遠慮したい。

どう聞いても余興要因でしかないようだしね。