軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

439話:エフィの決闘問題4

僕が不在の間に、クラスメイトも色々あったようだ。

「そもそも僕たちがやってた人数の制限。あれ、一人の時に襲われないためだったんだ」

「あぁ、そういうことか」

エフィ自身もやった、錬金術科と魔法学科の腕試し。

あれは僕とクラスメイト合わせた五人と同数を、相手に出すように強いる狙いだ。

「五人というのがなかなか上手いな。一人くらい保身に走って止める人数だ。俺もなかなか他の四人を集められなくてな」

「あの学科の状態だとまぁね。あと先生同士でまず取り決めしてもらうことになってたんだよ」

「そういえばそうだったな。やり合う両者から教師が入れば生徒側も無法はできない。あぁ、あれはそんなに考えられた場だったわけか」

エフィが思い返す様子で言う。

「それで言えば、俺は個人で突っ走って、教師も介入しないからこっちで対処するしかない。俺はまだ考えが足りないな」

エフィは反省するけど、元はと言えばただ友人同士の腕試し。

それを今みたいに悪化させたほうが悪いとは思う。

「じゃあ、次に申し込んできた相手には、また五対五でやり合えばいいんじゃない?」

「受けると思うか?」

「ほら、競技大会にも団体戦あったし」

なんかエフィが妙な顔をした。

「何?」

「改めて、アズは神がかった先見だと思ってな」

「あぁ、あの足場の崩壊? たまたまだよ。みんな無事で良かったよね」

「あの腕試しも結局は先を見据えてのものだ。どうしたらそうなれる?」

「えー、経験? 誰かに話を聞いたとかその程度のね」

実際はセフィラだけど、それじゃエフィが決して届かない。

だから可能性がある範囲で言ってみる。

実際僕はやってみたことのほうが少ない。

周りが経験豊富だったからこそ、いろんな場面でそういえばあの時ってことがあった。

あと前世で動画見たり、研修会行ったりしたことも話聞いた範囲ってことで。

「そうか、結局は俺の未熟か」

「そういうわけじゃないんだけど…………」

「いや、自分でも力任せに今までやってきた自覚はある。それでどうにでもなってたんだ。だが、それだけじゃ駄目だってことはもうわかってる。経験、したからな」

反省込みで、自分が未熟だと理解してるらしい。

「だったらやっぱり、経験増やすためにも五対五で、今度は下級生と就活生も混合でさ」

「アズもやるんじゃないのか?」

「僕は道具作りに専念しようかな。やってみたいこと増えてるだろうし、他にも裏方がいいっていうクラスメイトいそうだし」

言われてエフィは青トカゲを見る。

「やってみたいことか」

「どんな火を起こせば相手がどういう反応をするなんて、実際にやってみないとわからないこともあるしね。当たれば大ダメージだけど当たらなくても熱で反応あるはずでしょ?」

「…………なんか、人体実験みたいだな」

言われて僕は顔を逸らすと、途端にエフィに肩を掴まれた。

「おい、まさか。俺たちを相手にする時にそんなこと言ってたのか?」

「えっと、ほら、荒事に慣れてなかったりしたから、物のたとえでね?」

ラクス城校の魔法学科とやった時は、荒れてて僕たちも軽口なんて言えない感じだった。

けどアクラー校ではがっつりネヴロフが実験台扱いしたよね。

なんて思いだしたら、青トカゲが動いた。

文字の書かれた紙の上を歩いては、一文字一文字前足で一度ペタッと踏んでアピール。

結果できた文章は、実験台。

「おい。これ考えたのアズだろ」

「いや、その、錬金術にも慣れてなかったから、ちょっとした言葉の綾で」

「それでなんで腕試し二度目にしてあんな噴射機作ってるんだ」

「あんなって、けっこう簡単な構造だよ。知ってるでしょ」

「つまりはアズが主導なんだろう。だったら実験台なんて言いだしたのも…………」

あ、ばれた。

僕がまた顔を逸らすと、突然青トカゲがその場で消える。

次にセフィラの警告が聞こえた。

(廊下に錬金術科以外の学生がいます)

僕が実験室の扉を見ると同時に、開いた。

そこには見たことない学生、しかも複数いる。

「いたな! おい…………」

「ここは錬金術科の学生以外立ち入り禁止です。お引き取りください」

来るのわかってた僕が言うと、無遠慮に入ろうとしてた学生の足が止まる。

「そんな決まりあるわけ」

「あるから言ってるんです。それとも錬金術科のことをそれほど詳しく知ってるんですか? であれば、この教室でそれほど乱暴に扉を開けることの危険性がわかってないわけがないですよね」

言いながら、僕は棚の中を見る。

二か月前とだいぶ並びが変わってるな。

それでも目録を確認すれば内容自体はあまり変わってない。

(だったらあるはずだけど)

(右手一番下の棚、奥に)

セフィラが教えてくれた。

目的の物を取り出して、僕はそれを学生たちの前に撒く。

「お…………前。よくやるな」

「危ないと言って聞く人なら、ノックもせずに大声を出す不躾はしないからね」

闖入者に警戒して黙ってたエフィが、僕の行動に驚く。

「わけのわからないこと! 俺はお前に用があるんだ! ハマート子爵家の…………!」

そう言ってエフィのほうに行こうとした一人は、足を踏み出した瞬間、僕がまいた砂利のような粒を踏む。

途端に足元で爆竹でも弾けたような音がした。

「どぉおわぁ!?」

突然の爆発音に、驚いて学生は後ろへ。

さらに後ろにいた学生の脚を踏み、ぶつかり、広くない廊下で大騒ぎが起きた。

その間に僕は、踏んでまいた粉がなくなったカ所にもう一度撒く。

その様子に、エフィは笑いを噛み殺して言った。

「アズ、本当に容赦ないな」

「こんな子供騙しに怯えるくらいなら、最初から喧嘩なんか売らないほうが身のためだよ」

「この! 言ったな!?」

聞こえてた相手がまた実験室に入ろうとするけど、撒き直された粒を見て止まる。

飛び越えようとするのを見て僕は声をかけた。

「錬金術科と腕試しをしたいなら、学科の教員に申し入れをしてください。そうしないと何処かの魔法学科のように教員含めて絞られることになりますよ」

僕の忠告にまた止まる。

教員という点数をつける側ともめるとなれば、やって来た学生も本意じゃない。

しかもエフィ狙いは箔付けで、狙いを完遂しても教員に後から睨まれては意味がない。

魔法学科って具体的に出したのも効いたらしく、ありえないなんて決めつけてくることもなかった。

「五対五の団体戦なので、人を集められるだけの人望が必要になりますが」

「何処まで舐めてるんだ!?」

「貴族の家で真っ当な教育を受けたならば、今の状況で礼を失した振る舞いを検めない相手を対等に扱うことがないと、わからないはずもないのでは?」

言外に、お前格下の家の出じゃないのかと、イルメをイメージして言ってみる。

「教員に問い合わせれば、錬金術科のほうから過去の取り決めが知らされるはずです。その上でルールの改変が話し合われますので、次にお会いする時までには礼儀作法をもう一度おさらいする時間もあるでしょう」

「お前の顔は覚えたからな」

憎々しげに言うけど、押しかけて来た学生は退くらしい。

さすがに騒ぎすぎたこともあって、さっさと撤退を選ぶ程度には頭があるようだ。

ただ他科の学生がいなくなると、耐えきれずにエフィが腹を抱えて前のめりになる。

「あそこまで煽っておいて、アズは裏方なんだろ? どうするんだ、次に会った時肩透かしを食らったあいつらの顔を見るのは俺なんだぞ」

「笑えばいいと思うよ」

確かそんな決め台詞みたいなのが前世であった気がする。

「さて、僕はこの撒いちゃった危険物を回収しないと。さっきの人、筋肉重いのかけっこういい音が鳴ったよね」

粒は青トカゲが食べた素材で作った、火薬不使用の爆竹。

圧力をかけると弾ける性質を、優しく丸めて作ったから、拾うのがけっこう手間だ。

と思ったら、粒が浮いてそのまま文字がかかれた紙の横に飛んで移動する。

いつの間にか青トカゲがいて、手伝ってくれたのかと思ったけど、机の端にひらっと何かが揺れた。

それは半透明で、水に揺れる魚のひれのような、実験室で見るわけもないもの。

「なんかいる!?」

「なんかいるんだ」

新手の精霊が何故か増えていることを、僕はエフィの雑な肯定で知らされたのだった。