軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

250話:獣人豪族の禍根5

イマム大公を始め、ネコ科の獣人たちが毒を盛られ、そこで牛の豪族の関与が発覚し、どうも豪族同士が諍いを起こす流れすら、背後に馬の豪族がいたことがわかった。

さらに事件は過去、馬の豪族を毒でもって壊滅状態に陥らせた先代イマム大公への怨恨が発端だという。

僕は泥沼な事件の早期解決を持ちかけ、ソティリオスがまだ毒が後を引くイマム大公を動かした。

(イマム大公たちが弱ってるからこそ、止めを刺しに来ることもあるとは言ったけど)

(内部には子供を中心とした三十人弱の男女混合。武装は半数程度。反抗の気配なし)

一網打尽にされる前にと言って、諍い合う獣人たちを一つの敵に向かわせる。

そして弱ってる獅子の豪族と睨まれてる牛の豪族が牽制し合い、その間にプライドがあるらしい鹿と猪の豪族に馬の豪族を説得させようと思ってたんだ。

(最悪、セフィラに敵の頭目の居場所探ってもらって、首狩り戦法って考えたけど)

(指揮を執る者はなし。守りに徹しています)

馬の豪族が住む地に押し入ったけど、こっちは急ごしらえとは言え武装してる。

なのにそれを止める者はいないというか、逃げ散ってしまって真っ直ぐ馬獣人の首領の屋敷に辿り着いてた。

囲んでも出てこないし抵抗もない。

今はイマム大公が婚約者に支えられて説得してるけど、守りに当たる人たちは先代の悪行を非難するばかりだし、下手に脅すと決死の覚悟を語りだす。

「これ、戦う準備なんてしてないよね?」

「そうでしょうな」

思わず聞くとヘルコフが応じる。

近くにはヨトシペはいるけど、ソティリオスは侍従たちに守られてイマム大公の近くに待機してた。

ソティリオスとしては、言い出しっぺという意識からの責任感だろう。

僕が持ちかけたけど、採用したのはソティリオスで、イマム大公を動かしたのもそうだ。

その辺りは責任を取る側の教育がしっかりしてるらしい。

「おっと、お固い人らに囲まれてると、どうも肩がこるなぁ」

「わかるー」

「んだずー」

ヘルコフがいつもの調子で答えてしまったことを、雑に誤魔化すので僕も乗る。

するとヨトシペも乗って来た。

ここは話をずらすか。

「当事者だとさ、冷静になれないと思うんだ。けど、僕たちは部外者だ。豪族同士の軋轢も知らないし、先代が何やらかしたかも知らなかった」

「そうだな。屋敷でもちらとも聞かなかったからには、中身が中身なだけ誰も口閉じてたんだろうな」

「…………確かにただ子供だけが遺された家がなんで動いたどす? 毒をどうやって手に入れたのかも、変だす」

ヘルコフは先代のところを、ヨトシペは部外者というところを拾って応じる。

そしてお互いに顔を見合わせた。

「おいおい、まさか…………大公家に?」

「家内で二つに割れたって言ってたよね。それなら身内の全排除は無理だろうし、残ってた勢力が毒を保持してた可能性もあるでしょ」

「馬の豪族はお利用されたでごわす? 毒を盛った上に、遺された子まで利用するだす?」

「そうだね。こうしてなんの手も打ってないのを見ると、イマム大公家の裏切り者は、イマム大公の立場を悪くするか、治療にかこつけて殺すつもりだったか」

なんにしても二段構えの企みだ。

会場ではあからさまに山猫の獣人たちに毒を盛らなかったのは犯人に仕立てるため。

そしてばれても馬の獣人たちが主犯だと思い込ませるため。

「怒りに任せて襲っていたら、口封じはおのずと被害者がしてくれる」

「ち、根性の悪いこと考えるぜ」

「アズ郎、どうするだす? イマム大公止めるどす?」

僕に考えがあるとみてヨトシペが聞いてくる。

考えがあるっていうか、実は答え知ってるんだけどね。

(セフィラ、イマム大公の屋敷で盗み聞きしたり、勝手に読んだりした密書の内容ヘルコフに教えて)

(教えることはできますが、すでに密書は焼却されています)

(そこはイマム大公の屋敷だし、ご本人に検めてもらうよ)

まさかセフィラが勝手してたのがこんな風に転ぶとは思わなかった。

これは今後不躾なことをするなとか、注意しにくくなる。

けど今回はこれで馬の豪族相手には穏便に行けるかもしれない。

「まずはソーに声をかけないと。ヨトシペはこっちに残って、他の獣人たちが馬の豪族を攻撃しないよう止められる?」

「任せるでげす」

少なくともここで一番の身体能力はヨトシペだし大丈夫だろう。

そして渋い顔になったヘルコフと一緒に、僕は情報交換で見えたふりで真相を伝える。

ソティリオス経由でイマム大公にはひと芝居を打ってくれるよう頼んだ。

毒が残っていたように見せかけて体調不良で引いてもらう。

その上で急いで担ぎこんだように見せかけて、イマム大公の屋敷へ戻った。

(セフィラが企みを聞いたのは、首都の屋敷の使用人だよね。そこで話してた人いる?)

(…………います。すでに大公の不調を注進したようです)

やっぱり弱ったところを狙う算段か。

もちろんそれはひと芝居うって引いてもらった時に、漏れ聞いたヘルコフが気づいたという態で話してもらった。

だから結果はもう決まってる。

「よし、あの若造を排除して、今際にこの私を次代のイマム大公に指名したと口裏を…………」

「つまり、自ら私の息の根を止めると?」

「な、何故!?」

注進に向かった使用人を追って押し入ったら、医者らしい獣人と密談中の虎の獣人がいた。

「全く、本当に私も若造だ。貴様らのような腐った老いぼれを改心するならと見逃した甘さが間違いだった!」

毒の影響はあるものの、イマム大公は大きく吠えて裏切り者を部下に捕まえさせる。

どうやら前大公派から寝返った者だったようで、それが今度はイマム大公を裏切っての乗っ取りを計画を企んでいたようだ。

そうして真犯人が捕まることで、事件は治まった。

「イマム大公は先代を排除して、先代が残した問題の数々に対処していた。その中に、我がユーラシオン公爵家との貸し借りという話も含まれていたそうだ」

「あぁ、先代が言い出してたことなんだね。今のイマム大公に借りを返す形で良かったじゃないか、ソー」

僕は日を改めて説明を聞かされる。

ソティリオスも僕の言葉に頷いていた。

「全くだ。あくまでイマム大公は領地のための問題解決に秘宝を求めていた。だが、先代の所業を思えば、問題解決と謳って誰を殺していたことか」

身内の姦計を破ったイマム大公は、そのまま関係者を纏めて拘束。

人手が足りないとか、族を纏めるのも難しい状況から、山のガス溜りや魔物の糞害、オートマタ対応などの問題を解決し、争う豪族たちも纏めた。

その結果一気に発言力を増したのは、豪族相手のみならず家内に対しても。

「馬の豪族はどうなるか決まった?」

「兄弟をイマム大公預かりで処罰を下す予定だが、罰を受けるにふさわしい年齢になるまで保留。それと同時に子供ということで豪族としての権限を凍結しイマム大公が担う。そういう名目で他の豪族からも襲われないよう、馬の豪族たち全体を保護するそうだ」

つまりイマム大公が預かってる案件だから、手を出したらイマム大公を敵に回すぞと。

見届ける立場にした鹿と猪の豪族が応諾したことで、その処罰で決まったそうだ。

それによって馬の豪族を責められず、獅子の豪族は牛の豪族へとヘイトを向けた。

牛のほうは牛のほうで罪を償わせるという名目で、弱体化させるためにまだイマム大公は対応中だという。

「アズロス」

ソティリオスが改めて僕を呼ぶ。

「今回のことは、本当に助けられた」

「そういう約束だったからね」

「いや、そうであっても期待以上の働きだと言える」

「考えついたことを喋っただけだよ。僕だけだと思いはしても実行は無理だった」

実際問題、力のない皇帝がままならないように有名無実な僕が一人言っても動いてくれる人いないとどうしようもない。

だから今回上手くいったのは動かせるソティリオスと、動けるイマム大公がいたことが大きい。

それを近くで見て実感できたことで、今僕に足りないものもよく見えた。

そしてその調達もよくよく考えて備えないといけないことも、イマム大公の状況が反面教師として有用だったと言える。

「だから、報いるためにも願うことがあるなら言え。可能な限り応える」

「えぇ? うーん…………」

「なんだ、秘宝を見たいと即答するかと思ってたのに」

「いいの? 使わないで済むように僕を頼ったんじゃないか」

「逆にアズロスなら使えない理由も解明してくれそうだと思ってな」

それはそれでユーラシオン公爵家のためになるってことか。

そう言われると悩むなぁ。

そこは保留にしてもらうことにして、まずは当初の給水システム探求に手を貸してもらうことになった。