軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

128話:入学体験3

学園への入学、それは僕の後にテリー、双子、ライアも辿る道だ。

血筋で舐められるのは同じ。

だったらここで一番血筋の低い僕がやり返したらどうなるか?

僕を下に見た者たちは手控えるし、その話は貴族だからこそ広がるだろう。

(そう思ってあえて喧嘩売るよう煽って受けたんだけど)

ハドスが言い出していじめっ子くんと対決することとなり、引率教師が主導しているので他の子供たちは止められず周りで見てるだけ。

さらにハドスは、いじめっ子くんは魔法、僕は錬金術だけという縛りを一方的に押しつけた。

これってどう言い訳する気なんだろう?

子供が勝手に喧嘩?

そんな理由が通ったとしても唯一の大人として責は免れない。

もちろんテリーが入学する時にいるなんて害でしかないから、ハドスに学園を去ってもらう理由としてこの喧嘩に乗る意義はあるんだけど。

(不可解です。何故あえて自らの失点となる行動を取るのでしょう?)

(向こうとしては縛りをつけてまで乗るとは思わなかったんじゃない。で、負けたとしても負けた腹癒せとかで悪く言ってるだけって、こっちに責任転嫁するとか)

(であれば、相手の思惑に乗らず魔法でねじ伏せるべきであったと考察)

(まぁ、それでも良かったとは思うよ。けど、錬金術悪く言われたからには錬金術で一泡吹かせたいでしょ)

(肯定します)

セフィラが懸念するように、錬金術は魔法に劣らないけど状況的には不利だ。

肉体があればいい魔法と違って、錬金術は事前準備が必要だから。

その点、僕は暗殺未遂の経験から自衛できるだろうくらいの薬品は持参してた。

やれないことはないけど手数が少ないのが問題だ。

(それに、魔法に劣るって考えがいけない。そのせいで小雷ランプが低評価になるし)

(魔法のみでは再現不可であることを理解していないことに疑問があります)

(魔法が優れてるって思い込みだね。だからちょっと思い込みを払拭したかったんだ)

そのため僕はあえて不利な勝負を受けたけど、もちろん勝ち目はあった。

まず勝負のため用意されたのは、芝生が剥げて地面が露出した場所がある所。

そこには水たまりの跡ができていて周囲よりへこんでいた。

いじめっ子は魔法による速攻を目指して、消費を考えずに連撃を繰り出す。

けどドッジボールしてるような要領で避けられたから、僕は無傷。

そして避けるしかない僕に、いい気になったいじめっ子くんを水たまり跡まで誘導するのは容易だった。

避けながら下準備をしたそこは、ちょっとしたふるいをかけた状態の地面にしてある。

さらに錬金術の混合液を仕込むことで、周囲からそこだけに水を集めた状態にしてあった。

「うわぁ!? え、なんだこれ! 沈む!?」

いじめっ子くんが踏み込むと、瞬間足首まで地面に沈む。

そのまま抜け出そうともがくせいで、より中の細かい粒子と水が混ぜられ柔らかくなり、気づけば膝まで埋まっていた。

「なんだよ!? なんで!」

「降参…………するなら、手を…………貸すよ?」

元から水たまりの跡ができるくらいへこんでいた場所だ。

つまりは周りの地面と質に違いがある地面なのは想像がついた。

泥というのは水分を含みやすく膨張し、その分乾くと縮んで、細かい土が凝集するから何度でも水分を含むと水たまりとなって膨れる性質がある。

だから水たまり跡をさらに細かな粒子にして、水分を含ませたというだけ。

「僕も、底が…………どれくらいか…………知らないから、早いほうが…………いいと、思うよ?」

「え、え!? そ、底なし!?」

勝手に最悪の想像をして慌てたいじめっ子は、すでに泣きそうな顔になっていた。

「嫌だ、助けて! ぼ、僕の負…………!」

「待ちなさい!」

ハドスが声を上げていじめっ子くんを引きずり出す。

「これは事故だ! 卑劣にも陥れられただけの! だいたい錬金術を使っているなどと誰が証明できる!?」

どうやらハドスの切るジョーカーはこれだったらしい。

僕が万が一勝っても錬金術じゃないといちゃもんをつけてうやむやにする気だったのか。

「では、この泥は…………元に、戻しましょう。危ないので…………」

水を含ませたのとは逆に、水分を吸って周囲から除く丸薬を泥に埋める。

小一時間もすれば戻るだろう。

続けるかどうか、そう聞こうと思ったら、すでにいじめっ子くんは戦意喪失。

それを見てハドスは、僕を責めるように指差した。

「由緒ある学園を騒がすことはたとえ帝国の方と言えど相応の対処をさせていただきます。あなたには学ぶ資格などない。そうそうに立ち去りなさい!」

つまり見学どころか入学も認めないと言い出した。

それほど教師に権限あるのかは疑問だけど、欲しいネタは貰ったので僕は歩きだす。

僕が反論しないことで勝ち誇るハドスだけど、向かう先に気づいて声を上げた。

「待て! その方に危害を加えようなどと!」

「お黙りなさい。…………申し訳ございません、アーシャさま」

僕が向かうことで、ディオラは即座に謝罪した。

けどここで許すとは言えない。

だから頭を低くしたディオラの耳元に、僕は口を寄せる。

「このことは、帝国内で処理したいと伝えてほしい」

「それは…………! お待ちください。言えたことではありませんが、どうか」

「一日…………」

ディオラの訴えに、僕は待つ期日を区切る。

ディオラは賢いからこのままじゃ済まないことはわかってる。

教師の独断というにも、その教師を据えたのは誰かという任命責任が生じるんだ。

そこに帝国が入るとなれば学園全体に問題が波及する。

そして学園はルキウサリア王家の持ち物に等しく、つまりは帝室対王家の話になる。

(ことを大きくして国に影響が出ることを懸念するのはわかるけどね)

(いっそこのことでルキウサリア王家に配慮を求められるのですか?)

(そんなディオラの実家だけが泥をかぶるようなことはさせられないよ)

(ですが甘い処分では結局軽んじられることに変わりはありません)

(セフィラ、周りをよく見て。今この場で一番発言に力あるの誰?)

さっきまでは唯一の大人のハドスだった。

けどそのハドスをディオラがルキウサリアの王女として黙らせている。

さらにそのディオラに上から物を言ってるのは、僕だ。

貴族子弟ばかりだからこそ、その空気は如実に伝播している。

血筋が低い、成り上がりの皇帝と舐めていても、結局は皇帝とその皇子だ。

国同士となれば個人の話ではなくなるのだから、帝国と王国では争うだけ損だった。

(その点、絶対帝国と交戦しないくせに、皇帝には喧嘩売ったハドリアーヌの暴君は上手くやったというか、小狡いというか)

ディオラは逡巡した末に、改めて僕に対して礼を取る。

「承知、いたしました。ご寛恕感謝いたします」

ただ、苦渋の感情が見え隠れしてた。

申し訳ないのはこっちなんだけど、本当に国同士の問題にはしないから許してほしい。

「待て、何をするつもりですか」

そして出て来るソティリオス。

その目はディオラを心配そうに見ているので、ここに及んで出て来た理由なんて丸わかりだ。

僕はどうでもいいけど、ディオラを困らせるのは許せないってところかな。

「皇子だからこそ守るべき節度が」

「遅い…………よね?」

言うには遅すぎる、と指摘すれば思わぬところから賛同の声が上がった。

ウェルンタース子爵令嬢だ。

「第一皇子殿下のおっしゃるとおり。ソーさま、節度を語るならばこのような事態を招いたルキウサリア王家の責を。そうでなければ我々帝国の権威が蔑ろにされましてよ」

「そ、そんな話じゃない。これは、その…………」

「ではどのような? まさかルキウサリアの王女個人が問題だとでも? 思い上がって帝国の尊貴な子弟の隣に並ぶような節度のない行いを…………」

「やめないか、ウェーレンディア。そんなことは言ってないだろう。私は皇子に対して」

「いいえ、すでに第一皇子殿下は沙汰を告げました。そこになんの疑義が? 差し挟むならば、即座にあの教師を処断しないルキウサリアの責でしょう」

「だから、どうしてそう意地の悪い言い方を」

「まぁ、わたくしが? いったい誰に対して意地が悪いと?」

なんか、ギスギスし始めた。

婚約者同士で、なんでそういがみ合う形になったの?

あ、馬車移動の時はディオラの間にさらに僕が挟まってたから、こんな直接口論することなかったのか。

けど今は、あからさまにソティリオスがディオラを庇いに出た。

だからウェルンタース子爵令嬢も、正面切って婚約者の非を突きつける。

「僕は…………戻るよ。見学…………する、雰囲気…………でもない、からね」

「では、私も城へ。せめて送らせてください」

予想外に、ディオラは学園の上層ではなく国王へ即座に報告へ向かうらしい。

どうやらディオラとしてもハドスをつけた学園に思うところがあるようだった。