軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

127話:入学体験2

ルキウサリア王国的に贔屓はなしということで、僕はディオラとは別行動となった。

けどすでに貴族同士グループはできているため、僕はしょっぱなからボッチとなる。

しかも引率がハドス先生こと元テリーの家庭教師だ。

宮殿辞めてこっちに就職していたらしい。

模擬授業を受けることになれば僕を指名して、難問を出す。

しかもこっちがどう答えても違うと言えるように、広範な問いかけをするという念の入れよう。

「それは…………含意が…………広すぎると…………」

「わからないならわからないと言えばよろしい。見栄を張って恥をかくのはあなたなのです。錬金術などという卑俗な趣味を行うばかりで見識が狭いことはわかっていますが」

こうしてわからない認定で貶してくる。

その決めつけで辞めさせられた自覚ないんだろうか。

しかも僕を貶すついでに帝室は教育レベルが低いとまで言い始めた。

するとそれで怒ったのは同じ帝室の血を引くソティリオスだ。

「教師としてあまりにも偏った言い方こそが見識の狭さを露呈させているのでは?」

「これは、言葉が過ぎたようです。もちろん、生まれ持った高貴な血筋に相応しい資質は重要ですとも」

そしてわかりやすくソティリオスには阿る。

このあからさまな扱いの差に、周囲は認識を固めて行く。

さらにソティリオスは僕を捕まえて叱りつけた。

「あなたのせいで帝室全体が貶められている。余計なことは言わないでいただきたい。相手に付け入られるだけということを理解して慎んだほうがいい」

くどくどと文句を言うんだ。

ただどうも、僕がわかってなかったというハドスの決めつけは信じてないらしい。

けど言葉が遅いことはわかってるから余計なこと言うなと。

一時期毎日顔合わせたから、頭の中まで鈍いわけじゃないとは気づいていたようだ。

けどそうじゃない者たちは、ソティリオスの言葉を受けてどう思うか。

引率教師に睨まれ、帝国有力貴族子弟に怒られ、元から悪評しかない皇子。

「へへ、ちょっと遊んでやろう。どうせ誰も騒がない」

はい、遠巻きにしてたいたずらっ子たちが動くわけです。

君たち、それやって怒られるの親御さんだよ。

なんて、調子に乗った中学生に言っても意味はないのは前世と同じなんだろうね。

僕に水をかけようとしたり、土を盛り上げて転ばせようとしたり、風で頭をぐちゃぐちゃにしようとしたりね。

火を使わないのは危ないって意識だろうけど、魔法向けた時点で関係ないんだよなぁ。

「くそ! なんで当たらないんだ!?」

「まるでわかってるみたいだけど、そんなことあるわけないし」

いたずらっ子は基本一人で、周りに五人の共犯者がいる。

うーん、近ごろ珍しいガキ大将と子分な関係。

それを十三歳にもなって続けてるのはどうかと思うけどね。

(実際、セフィラがわかってるから避けてはいるんだけど)

(行動パターンを把握。次は今一度水の魔法を予測。事故に見せかけて始末が可能です)

(何物騒なこと言ってるの。子供相手にそんなことしないよ)

(現状維持が有害であることを指摘。周囲の人間たちの反応に変化を確認。誰一人として助けるつもりがない上で、主人を軽んじていると推測)

セフィラが成長してるぅ。

反応から人間の感情を推察できるようになったんだね。

セフィラが言うとおり、ソティリオスはさっさとどうにかしろと睨んでくるし、ディオラは動こうとするのを僕が止めてた。

ここまで一緒に来たウェルンタース子爵令嬢は興味がないんだけど、大半がこれだ。

けどその大半以外がいじめっ子に同調し始めている。

それもこれも止めるべき立場のハドスが見て見ぬふりな上に、いじめっ子を贔屓してみせるからだ。

うーん、集団行動って怖いな。

(こうなったらもうどうあってもこのことは知られるかぁ)

(自衛において攻めの姿勢も有用であるという実践検証を求める)

(うーん…………しょうがない。いじめっ子は帝国貴族だし、ちょうどいいか)

僕の事情に巻き込んでしまうことは自業自得と諦めてもらって。

(もう帝国の第一皇子が問題ありってハドリアーヌにまで届いてるみたいだし、いいか。いずれ辞めないといけない地位だ)

(…………非推奨。落差あればこそ正当な評価を得た際の上昇値が大きくなります)

(言いたいことはわかるけど、それで皇子として貴族の学校に入って勉強するの? きっと今以上に錬金術できる時間ないよ。今の状況じゃ素直に錬金術科に入れるとも思えない)

(引率教師に謝罪させた上で、主人の意見を上層部に通すことを推奨)

(そんなことしたら、力尽くが罷り通るって前例になる。敵対しないでいてくれるルキウサリア王家が敵に回るよ)

僕は思考だけでセフィラと討論し、結果。

(…………了解しました)

不服そうながらセフィラを説き伏せることに成功した。

僕はセフィラの計算に合わせて、背後から水魔法を使おうとしていたいじめっ子を振り返る。

瞬間、集中の途切れた魔法は暴走し、いじめっ子本人を盛大に濡らした。

「うわぁ!?」

いじめっ子とその周囲が驚いて騒ぐ。

魔法はしっかりしたイメージが必要だ。

それは少しの疑いも迷いもあってはいけない技で、失敗の二文字が浮かんだ時点で失敗する。

子供なら無邪気に信じられるから失敗は失敗でもやりすぎる失敗が多い。

だからこそ魔法は、子供の内にそういうものだと覚えていなければ、疑念が混ざり込んでしまって上手く使えないとも言われる。

僕は全て前世で見て覚えた道具にイメージを託すことで安定したけどね。

とはいえ驚いたくらいで自分がずぶぬれになるなんてことはない。

セフィラがこっそり水を僕にかからないよう、全部はね返したからだ。

「何をしている! 皇子だからと言って他の見学生に危害を加えて許されると思わないことです!」

今まで見ないふりだったハドスが、待ってましたとばかりにやって来た。

そしてすぐさま僕が悪いと決めつけて怒鳴る。

「ハドルドス・ヨルゴス・イエニス・アンドレウ」

僕が名前を呼んだことでハドスは驚く。

まぁ、派兵で名前も忘れぎみだった人から怨み買ったしね。

なんかしてきそうな人として、帰ってちょっと調べたんだよ。

すでにテリーの家庭教師辞めて、帝都からも去ってたけど、まさかルキウサリアにいるとはねぇ。

「どうして…………家庭教師を、辞めさせられたか…………わかって、いないのかな?」

驚く間に発した僕の言葉で、ハドスを見る周囲の目が変わった。

正しくはテリーの家庭教師だけど、状況を知れば逆恨みなのは子供ばかりでもわからないわけがない。

ハドスはここで退く性格なら、宮殿でも馬鹿なマウントはしないはずだ。

思ったとおり、僕に皇子の家庭教師を解雇された過去を暴露され、ハドスは傷ついたプライドを守る行動に出た。

「まともに魔法も使えない癖に何を!? 錬金術などという詐術で偉ぶる無能が!」

「では、どうぞ…………」

僕は護身のために持って来てたエッセンスの混合液を小瓶から出して地面に撒く。

瞬間、濡れていた場所が一気に凍りついた。

踏み込んでいたハドスの靴先にも一瞬で氷が張る。

「魔法で…………再現…………して、ください」

水属性を極められる素養を持つ海人のイクトも、これには驚いた。

濡れた場所限定だし、表面凍るだけで実用性はないけど、魔法を教える側のハドスの度肝を抜くくらいには使える。

実際魔法で氷を作ろうとすると上級者の技量が必要だ。

しかも今の短時間での凍結はそれこそ極めたと言える才能がなければ無理な話になる。

「そんなのできるわけないだろ! 何したんだ!? インチキだ!」

そこにいじめっ子が混じって来た。

ここで窮していたハドスがまた大人げない真似に出る。

「そうだとも! 錬金術など詐欺師の業! ここは君の魔法でその詐術を覆して、魔法の素晴らしさを知らしめるのだ」

「わかりました!」

いじめっ子くん、君、責任押しつけられてるよ?

いや、本当に大人げないな。

辞めてたと知った時は、失職なんて可哀想かと思ったけど、テリーの側にいなくて良かったよ、こんな人。

僕が派兵されてる間にこの人いたら、もっとテリーはこじらせてたかもしれない。

「魔法で勝負だ!」

「この場合はあちらはお得意の錬金術で、やらせるべきだとも」

勝手にいじめっ子とハドスが話を進める。

何も言わないでいると、さすがにソティリオスが出ようとしていた。

なので笑って手を振り止める。

途端に睨まれたけど、なんで?

怒ったようにそっぽ向いちゃったけど、止めることはやめたようなのでいいか。

(さて、今の内に陛下への言い訳を考えておかないと)

僕は盛り上がるハドスといじめっ子を眺めながら、全く別のことを考えていた。