軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35話

入学して三日目。

いよいよ学校での授業が本格的に開始になった。

満景が属するA組では、午前中が普通の学校と同じ学科の授業を、午後に霊能者育成用の授業が行われる。

午前中の授業を一通り終えて、満景は普通の授業だったという感想を抱いていた。

(変わっていた授業もあるにはあったけど、それは学び方の違いみたいなものだったし)

満景がそう感じた授業とは、熊野高等専修学校が力を入れている、歴史の授業。

この授業に関しては、確かに中学校までに学んできたものとは違ったやり方だった。

普通の歴史の授業は、古代から現代へと向かって学ぶ。中には古代を飛ばして、中世あたりから始める学校もあるだろう。

けれど熊野高等専修学校の場合は、逆だった。

現代から昔へと遡る形で、歴史を学んでいく。

どうしてそんな学び方をするのかというと。

『現代の霊能者が関わる悪霊は、基本的に現代に生まれたものだ。なら、敵の背景を知るためには、現代から学ぶのが効率的だ』

というのが、歴史を担当する教師の言葉。

事実、歴史に名を残しているような悪霊を相手に、学生が戦う機会は滅多にない。

それこそ常識的な予防法――怪しい場所に近づかないや曰くのあるものを触らないなど――を守っている限り、有名な悪霊と関わり合いになることは避けられる。

そんな避けられる脅威よりも、身近な脅威に対抗できるように近代の歴史――どこで大地震が出たか、どこで公害が発生したか、どんな闘争が起こったかを学ぶべきだろう。

そういった、死者が大量に出たり、病に苦しむ者がいたり、激しい情念が起こった場所には、それ相応の悪霊が産まれ出るものなのだから。

満景は、この学校で歴史を学ぶ意味への理解を深めつつ、昼休みなので自分で作った弁当を昼食として口にする。

米は炊飯器で炊いたものだが、詰められている総菜は冷凍食品の弁当箱にそのまま入れられるものを使っている。どうせ自分で食べるものなので、手抜きできるところは手抜きを惜しまない。

(そもそも、企業が作った冷凍食品は、それはそれで美味しいし)

満景がぱくぱくと弁当を食べていると、右隣の席に人が座る音が聞こえた。

目を向ければ、手にラップに包まれたコッペパンと小さな紙パック飲料を一つずつ持つ、小里の姿があった。

小里は、満景が目を向けてきていることが分かったようで、目に笑みを浮かべながら問いかけてきた。

「どしたん? 私の食べるものが気になっちゃったのかなー?」

「気になったというか、それだけで足りるの?」

満景が小里が持っているものと同じ量を口にしたら、腹半分も満ちないだろう。

しかし小里にとっては、これだけの食料で十分のようだった。

「うちの家では、朝食と夕食にしっかり食事をとるからね。その分、昼食はコントロールして減らしているってわけよ」

「ダイエットってこと?」

「これでも乙女だからねー。体重の増加は死活問題なのよ」

「体重の多い少ないじゃなくて、体型の良し悪しで身体作りは判断するべきって、師匠の一人が言っていたけど?」

「それは真理だけどさー、実際にやるときっついのよ。減らしたい場所にある肉は減りにくいものだし、やっぱ数字で結果が見えた方がやる気も保てるからねえ」

小里は、ままならないという感情が浮かぶ表情で、包装を解いたパンをパクリ。そして紙パック飲料にストローを挿して一啜り。

食事をしているのに、その表情は冴えたものにならない。

やっぱり小里本人も、この量では足りないと思ってはいるようだと、満景は感じた。

しかし女性のダイエットの話題は触れ難いものなので、満景は視線を彼女とは反対側――教室の窓側へと向けた。

すると力雄が自前の弁当を食べている姿が目に入った。

力雄の弁当は重箱かというほどの大きさがあり、その中にギッシリと米とおかずが詰め込まれていた。ちなみに飲み物は、大きなペットボトルに入った甘い炭酸飲料のようだ。

総重量は一キログラム――飲み物を入れたら二キログラムを超える弁当を口にすれば、筋骨隆々の力雄でも太りそうなもの。

しかし太ることなんて頭にないといいたげに、力雄は巨大弁当をかっ食らって、炭酸飲料をごくごく飲んでいる。

小里も、満景の方に顔を向けていれば自然と力雄の食べ姿も目に入るようで、力雄の食べっぷりに呆れ声だ。

「食事制限よりも運動の方が大事っていうけどさ、あれだけ食べても太らないほどの運動はしたくないかなあ」

「筋トレぐらいは取り入れてもいいかもね」

満景も男子なだけあり、力雄のように大量に食べることができたり、筋骨隆々になってみたいという、マッチョイムズな願いは漠然とある。

一朝一夕でそうなれるとは思わないものの、少し努力してみるぐらいやはってみようかという気に、満景はなった。