軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

169話

3ヶ月間、俺はひたすらスライムを駆除していた。もしかしたらコウモリがいた洞窟の他にも邪神やスライムの被害を受けていない場所があるかもしれないので、俺とアイルは大陸中を探索し続けた。セスは畑や石灰窯をスライムから守るために置いてきた。

アイルとともに地形を見つつ、スライムの群れを追い罠にはめて一気に駆除する。アイルが描いた地図は、初めのうちはまったく何がなんだかわからなかったが、徐々に表現方法も確立していって、スライム駆除にも役に立っている。

ボウは火砕流に埋まった町から、レンガを発掘し砕いてから再びレンガを作っていた。ボウの建築スキルも上がり、大きめの石灰窯を作っていた。乾燥剤に使う石灰岩は鍾乳洞の近くにある地層を調べていた時に見つかった。基本的には俺とアイルはボウのいる港町の跡地に度々帰り、乾燥剤を補給してから、そのままスライム駆除に向かったため、畑の方はあまり見ていない。

畑はベルサとリタがかなり大変だったようだが豆科の植物も育ち、タンパク質も確保できた。あまり俺は手伝ってなかったから、収穫の時に畑を見た時、その広さに度肝を抜かれた。

「ガルシアさんの綿畑ほどはあるんじゃないか」

「そんなに広くはないよ。ナオキが『動物』は数が少ないから保護しようなんていうから、急いで豆を作らないといけなくて、けっこう大変だったんだぞ」

俺が褒めてもベルサは不満そうに、枝豆に似た植物を収穫してアイテム袋にまとめていた。アイテム袋はアイルのを使っている。

洞窟で見つけたコウモリは大事なタンパク質として家畜にしようとメルモが提案したが、メルモの使役スキルがコウモリには効果がなかった。『動物』の存在は神々にとってもイレギュラーなのかもしれない。

俺は「個体数も少なかったため生態系を崩さないよう保護した方がいいんじゃないか」と提案してスライム駆除に行ってしまったが、ベルサたちはちゃんと守ってくれていたようだ。

「それで? 生態系が残っている場所は見つかったの?」

「ああ。3箇所見つかった。いずれもあの魔物除けの白い花が群生しているね。ただ、やっぱりあのコウモリがいる洞窟は特別らしい。虫はいたけど『動物』はいなかった」

虫を見つけた時、タンパク源になるので捕獲しようとしたが、アイルに止められた。宗教上の理由で殆どの人間は虫なんか食べないと教えられたが、俺はいざとなったら食うしかないだろうな、と思っている。まだ魔物の肉も残っていたので、虫は取らずに地図に位置だけ記入しておいた。ちなみに虫系の魔物ではなく、虫だ。探知スキルには引っかからず、魔力を使わない生き物で、前の世界で見たことないが足は6本あるので昆虫だろう。

ベルサは地図を見ながら、「あとでメルモを連れて行ってみるよ」と言っていた。

「さて、このまま食料の自給を続けるのか。それとも、新たな島に向かうのか」

俺は、本拠地に全員を集めて今後について話し合う。

「食料の備蓄は半年先まで問題はありません」

「野菜の育成期間を考えると3ヶ月先までに次の本拠地を見つければいいです」

セスとリタが答えた。

「乾燥剤も魔石が取れたから十分あるはずだ。フハ」

ボウの言うとおり、一気にスライムを駆除できるようになったので魔石もまとまった数が取れるようになった。結果、石灰窯で乾燥剤を大量に作ることが出来た。

「スライムの駆除はどうなの? この大陸のスライムは全て駆除できた?」

ベルサが聞いてきた。

「目についたものやナオキが探知スキルで見つけたスライムは駆除したけど、絶滅させられたかはわからない。とりあえず、谷を作って底にナオキが加熱の魔法陣を描いた罠は仕掛けてあるよ」

アイルが答えた。邪神でも見逃しているのだから、この大陸にはスライムが何処かにいるはずだ。

「ベルサの研究で、この大陸でやり残したことはある?」

「そりゃ『動物』の研究がしたいけどね。ただ、それよりも今はあの水草が気になってるんだ。肥料として優秀すぎるよ。できれば気候の違う場所でも試したい」

収穫した野菜は、質も北半球で食べていた野菜よりも良いような気がする。量も申し分ない。

「ということは、新天地に向かう準備は全員できているわけだ!」

「あの~……」

今まで黙っていたメルモが手を上げた。

「あ、なんか問題ある?」

「いえ、新天地に向かうことには反対ではないのですが、このまま社長とアイルさんがスライムを駆除してしまったら、私はどこでレベルを上げたらいいのでしょうか?」

「あぁ、そうか。すまん。まったく考えてなかった」

俺の言葉にメルモはかなり落ち込んでしまった。

「申し訳ない。何か欲しいスキルでもあったのか?」

「別に!」

メルモがふてくされてしまった。

「単純に僕がメルモよりレベルが上になってしまったので気に入らないだけですよ、きっと」

セスが説明して、メルモに背中を引っ叩かれていた。

「そうか。じゃあ、次の場所ではメルモもスライムを駆除しよう。いや、交代制で皆スライム駆除するか。余分にスキルポイントを取っておいても邪魔にはならないだろう」

「でも、それじゃあ、いつまで経っても私とセスの差が開いたままじゃないですか!」

「そんなことはない。お前らはどちらかが上に行くと、下にいる方ががんばって追い抜かすように出来ているからな。競争してお互いを高めあってくれい!」

「社長にいいように使われてる気がするなぁ」

「まぁ、心配するな。レベルが100を超えるとどうでも良くなる瞬間が来るから」

セスがぼやき、アイルがアドバイスしていた。

「で、次の島はもう見つけているのか?」

ベルサが質問してきた。

「うん、大陸の東海岸から南東の海を見ると陸地があった」

アイルが地図を見せながら説明した。地図上には南東の海に島影が描かれ、こちらの大陸にはクレーターや湖、湾が描かれている。

「ここ?」

「そう。港町の跡よりも、南へ行った場所。たぶん、このクレーターや湖は邪神とスライムのヌルヌル相撲のあとだと思うんだ」

俺が説明すると、「ヌルヌル相撲ってなんだ?」という目で2人が睨んできた。

「ヌルヌル相撲って名前ほど怪しいもんじゃなくて、大きいスライムをちぎってこっちの島に投げてたんじゃないかと思うんだ。もしくは向こうからこちら側にスライムを投げてきて、スライムが落下した跡かもしれないけど。だから、次はこっちかなぁ、と思ってね」

「なるほど、邪神の行動の跡なら、こっちに大陸があるかもしれないね」

ベルサが納得していた。

「海を渡る方法はやっぱり箒ですか?」

セスが聞いてきた。

「そうだね。魔素も空気中に拡散しているだろうし、大丈夫なんじゃないか? それとも魔物の骨でイカダ作るか?」

コウモリの洞窟は生態系が崩れそうなので手はつけないつもりだ。今、アイテム袋に入っている木材もほとんど小さな板の破片のようなものばかりで、材料といえば魔物の骨くらいだ。

「魔素がそんなに拡散していないことも考えて、骨のイカダも作っておいたほうがいいかもよ」

ベルサも心配しているので、骨でイカダを作ることに。肉はないが骨だけはたくさんある。

イカダを作りつつ、この大陸で思い残すことがないように2日間の休暇にした。

メルモとベルサは地図を持って虫を見に行った。

アイルはリタを連れて、コウモリの洞窟の湖へ。

男3人でイカダ作り。骨を並べて、紐で縛っていくだけの簡単なイカダにした。後ろには水流が出る水魔法の魔法陣が描かれた板をくくりつけて完成。3人乗っても海には沈まなかった。

2日後。予定通り、南東の湾から出航した。

波も風も穏やかで、気温もちょうどいい。絶好の船日和。

水魔法の魔法陣が描かれた板に魔力を込めていく。海の中を覗くと薄っすら魚影が見えた気がしたが、探知スキルでは確認できなかった。

「海の中にはこんなに微魔物がたくさんいるのになぁ」

ベルサがコップに掬った海水を見ながら言った。微魔物を捕食しているモノがいるなら、その捕食者にも魔力があるはずだ。なのに探知スキルには反応しない。

「微魔物を含む食物連鎖の中にいないか、もしくは魔力を排出する進化を遂げているか、だな」

「ん~糞を調べたいけど、糞を取りに海の底まで行けないしなぁ」

俺とベルサが、海の中の魚について話していたら、「ほら、結局、糞の話になったな」とアイルたちは頷いていた。駆除業者にとって糞は大事だっていうのに。

「いいか、糞っていうのは大事な手がかりなん……あ、やべ魔力切れそう……」

怒ろうとしたら、ふらっとした。

大陸から離れ、いつの間にか魔力の減りが早くなってしまっているようだ。すでに行き先の陸地は見えているので、全員で交代しながら進むことに。ただ陸地に近づいているつもりでもどんどん潮に流されてしまった。

結局、陸地に着いたのはその日の夕方。

「こんなに場所によって魔素の量が変わるなんて……」

魔素は他の気体のように風に流されたりせずに、その場に留まる性質があるのかもしれない。これでは南半球に来た当初にリセットしたようだ。

一先ず、寝床を作って眠りたい。

骨のイカダを置いて、全員で砂浜を上る。

目の前に広がったのは砂砂漠に沈む夕日だった。

スライムは見当たらなかったが、砂の中に魔物が隠れていることは探知スキルでわかった。

テントを張り、砂の中の魔物に警戒しつつ一夜を明かすことに。

「スライムです! スライムが出ました!」

夜中に見張りをしていたセスが叫んだ。

眠い目をこすりながら探知スキルを使うと、周囲を取り囲まれていたことがわかった。

セスはその中の1匹のスライムと対峙していたが、テントの周りの砂の中にはまだたくさんいる。砂と同じ色をしたスライムだ。

「全員、周囲に警戒して戦闘準備! ボウは耳塞いでろ!」

周囲に音爆弾をばら撒く。

キー……ン!

音に驚いたスライムが砂の中から飛び出してきた。

飛び出してきたスライムを剣や斧で表面を切り、乾燥剤を傷口に振りかける。

ブクブクと泡を出しながら、砂のスライムは溶けていった。

「今度のスライムは夜行性か」

「昼は日光と気温で身体が蒸発するのを防ぐため砂の中にいて、夜に動き出すってところかな」

アイルとベルサが腕を組みながら、溶けたスライムを見ていた。

「夜はつらいです」

リタがあくびをしながら、文句を言った。

「耳が……!」

ボウはいつもの笑顔を忘れ、片耳を押さえて悶えている。しまった片腕だったか!

「すまん!」

「え!? なんて!?」

ボウには謝った声が聞こえないらしい。

「いつ襲われるかわからないな」

「砂の中を移動する魔物はたいてい振動を頼りに動くから、対策しないとね」

「砂漠を渡るということですか」

「流石にここで畑は作れませんよ」

うちの会社の女性陣は現実的だ。

「先が思いやられる」

俺は頭を掻いて、空を見上げた。束の間だけでも、現実を忘れたいのかもしれない。

砂漠の夜空は、南半球でも星がキレイだった。