軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヤマタニ、蛮族を討つ

第36話 ヤマタニ、蛮族を討つ

アルバートは、何とか監禁部屋から脱出しようともがいていた。

だが、扉の外には見張り。

力ずくでは突破できない。

焦燥が胸を焼く。

――このままでは終われない。

その時だった。

天井板がわずかに軋み、屋根裏から人影が現れる。

「アルバート様、ここから脱出できます。」

部下だった。

差し出された手を、アルバートは迷わず掴む。

机と椅子を積み上げ、必死によじ登る。

指先に力を込め、天井裏へと身を滑り込ませた。

そして――脱出。

外気を吸い込んだ瞬間、胸の奥に溜まっていたものが一気に解放される。

「……行くぞ。」

短く、それだけ言った。

アルバートは兵を集めると、すぐさま動いた。

狙うは――敵後方補給部隊。

戦の流れを断つ、最も重要な一手だ。

「ヤマタニだと?」

リチャードは報告に眉をひそめた。

「トラックやバスを作った、あの成り上がり貴族か。」

だが、続く報告に目の色が変わる。

「鉄の馬車で、難攻不落の砦を落としたとの噂も。」

沈黙。

そして、口元がわずかに歪む。

「……面白い。」

リチャードは馬首を巡らせた。

「その男と組む。砦を奪還するぞ。」

辺境伯軍は進軍を開始した。

数時間後。

ヤマタニ率いる部隊は、南西の砦手前に到着していた。

装甲車のバッテリーを交換し、増援を待つ。

だが――

「待っている間に、砦を見に行くか。」

ヤマタニが言った。

「危険です。増援を待つべきです。」

カミルが即座に制止する。

「様子を見るだけだ。危なくなれば逃げる。」

軽い調子だった。

だがその目は、すでに戦場を測っている。

結局、一行は同行することになる。

数キロ先。

砦は静かに佇んでいた。

「……あれか。」

ヤマタニは目を細める。

「規模は小さいな。」

「ですが、ここが落ちたことでブエナまで被害が……。」

カミルの言葉を、ヤマタニは途中で切った。

「なら、終わらせる。」

一言だった。

余計な感情はない。

ただ――効率。

彼の頭の中には、戦後の仕事が山積みになっていた。

ブエナ、サンブレロ、鉱山、工場――

「時間がもったいない。」

その一言で、すべてが決まった。

「片付けるぞ。」

ヤマタニは装甲車へ乗り込む。

カミルは一瞬ためらい――すぐに続いた。

「司令官!敵の馬車が三台!」

「三台?」

蛮族司令官は鼻で笑った。

「放っておけ。」

――その判断が、すべてを終わらせた。

次の瞬間。

「シュルルルルルル――!」

異音が空を裂いた。

「何だ!?」

空から降ってきたのは――火。

ロケット弾だった。

「ドカァァァン!!」

砦が揺れる。

建屋が吹き飛び、兵が宙を舞う。

続けざまに、第二射、第三射。

「櫓が――!」

「詰所がやられた!」

爆炎と衝撃が、砦を蹂躙する。

逃げ惑う兵たちに、容赦はなかった。

「逃げろォォォ!!」

だが――遅い。

「ドッカァァァン!!」

炎が広がり、油に引火する。

黒煙が空を覆った。

砦は、もはや戦場ではない。

ただの――燃える瓦礫だった。

「終わったな。」

ヤマタニは淡々と言った。

まるで作業を終えたかのように。

「……砦を破壊してしまいましたが。」

カミルが言う。

「問題ない。」

即答だった。

「味方の損害はゼロだ。それが最善だ。」

合理。

それがヤマタニの戦だった。

その頃。

リチャードは、遠くに立ち上る黒煙を見ていた。

「……もう始まっているのか!」

馬を蹴り、全速で駆ける。

だが――

視界に入った光景は、予想と違っていた。

砦から逃げ出す敵兵。

そして――

静かに佇む三台の“鉄の馬車”。

「……まさか。」

リチャードは呟いた。

合流。

ヤマタニは警戒の目を向ける。

「辺境伯軍か?」

「そうだ。リチャードだ。」

馬を降り、名乗る。

「援軍は?」

リチャードは問う。

その数の少なさが信じられなかった。

「遅いから、先に終わらせた。」

あまりにも、あっさりと。

「……この数で?」

「まあな。」

言葉が出ない。

リチャードは装甲車を見つめた。

これが――噂の。

「鉄の馬車……。」

その時。

ようやく、二千の援軍が到着する。

だが――

戦いは、すでに終わっていた。

一方。

アルバートは荒野を駆けていた。

補給部隊を探して。

だが、見つからない。

苛立ちを押し殺し、偵察を放つ。

そして――

「発見しました!護衛は約二百!」

その報告に、アルバートの目が鋭く光る。

「好機だ。」

迷いはなかった。

「突撃!」

「おおおおっ!!」

アルバート隊が突っ込む。

敵は応戦する。

だが――数が違う。

押し潰すように、敵は倒れていく。

護衛が崩れた瞬間、勝負は決した。

補給部隊は潰走。

アルバートは、初勝利を掴んだ。

だが――

「……軽いな。」

実感がなかった。

相手は補給部隊。

戦場の中心ではない。

その時。

一つの木箱が目に入る。

刻まれていたのは――帝国の紋章。

「……帝国?」

空気が変わる。

ただの蛮族討伐ではない。

戦の裏に、別の意志がある。

アルバートの頬を汗が伝った。

「全て運べ。本城へ。」

声が低くなる。

そして――

「まだいるはずだ。探せ。」

彼は止まらない。

勝利の先を、見据え始めていた。

だがその頃。

蛮族本隊は――

山脈登山口にて、静かに布陣していた。

嵐の前の静寂のままに……。