作品タイトル不明
斯くして蛮族がやって来た
第34話 斯くして蛮族がやって来た
辺境伯の防衛の要だった砦が落とされ、さらに西のブエナ街まで蛮族の被害が出るようになってしまった。
蛮族は周辺の街や村を襲って金銭や食料などを略奪するようになる。
また商人の積荷なども、根こそぎ奪ってしまう。
しかし、新領主ヤマタニによりブエナは敵の手には落ちなかった。
しかも、敵進軍部隊をほぼ壊滅させてしまった。
これにより、蛮族の勢いが削がれ、蛮族の活動が鈍くなった。
「ミランド、蛮族の動きはあれからどうだ?」
ヤマタニは聞いた。
「ヤマタニ様のご活躍で、あれから蛮族はやって来ませんね。」
「しかし、ここにはやって来ないだけで、旅人や荷馬車などは襲われています。」
ミランドの報告を聞いて、ヤマタニは考える。
やはり、ブエナの防衛を最優先にしよう。
ミランドの下に10人の新しい騎士をつける。
一般兵は40名を揃える。
さらに焼け落ちた門全てを頑丈な鉄の門に替えた。
さらにショベルカーで外壁の外に空堀を作った。
これで簡単には外壁に取り付いて、梯子をかけにくくなった。
川から水を引こうとしたが、こちらはまだかなり時間がかかりそうだ。
外壁の上に12基のバリスタを取り付けた。
改良して6連射式にした。
長弓と弩も買って備えた。
これだけやれば、あの規模の蛮族の攻撃も、長時間凌げるだろう。
あとは狼煙台と、電線菅を道の脇に埋めた。
ヤマタニ屋敷や工場事務所からでも、連絡がすぐ
取れるようになる。
ブエナ街の防衛は進んだが、一方予算がかなりかさんでしまう。
頼りの綱は魔晶石の鉱脈だったが、今のところ順調に採掘されている。
運営と防衛に開発、再生資金が重くのしかかる。
ヤマタニの装甲車も地味に資金を蝕んでいる。
「アレを10台運用出来たら、かなり楽なんだがなぁ。」
一人でヤマタニは呟く。
◆
再びブエナ街に蛮族の集団がやって来た。
今度は万全とまではいかないが、かなりの防御力があるから安心できる。
しかし、ミランドは驚いた。
蛮族の数が、この前の倍はいる。
「何で、こんな数が、小さな街にやってくるんだ?」
ミランドは疑問に思った。蛮族の居る山脈からは、かなり離れた場所にあるし、辺境伯の支配領土には砦や兵士達がいるはずだ。
「辺境伯は一体全体何やっているか?」
そうは思ったが、ヤマタニに電信で連絡した。
「我が街、蛮族来襲!以前の2倍。至急救援求む。」
即座にヤマタニは動いた。
「ゴドール隊は至急ブエナへ救援に向かってくれ!」
「わかりました。」
とは言え、蒸気トラック始動には30分はかかる。
しかし動き出せば、1時間ちょっとでブエナまで行けてしまう。
馬よりは速いが、そこがネックだった。
しかし人員の招集やプレートメイルを着るのにも時間は多少かかるから、さきに釜に石炭を焚べる者さえいれば丁度良かった。
一方ヤマタニの装甲車は、電動だからすぐ動ける。
しかし予備バッテリーのため、運搬用蒸気トラックに予備バッテリーやロケット弾の積み込みや、機関砲の弾薬の積み込みがあった。
「一刻も早く救援に行きたいのに、歯がゆいのが蒸気式か。いっそガソリンエンジンか電動モーターにかえるか?」
一人呟くヤマタニ。
「セルに樹脂が使えたらなぁ。樹脂に変わるものはないか?」
「社長さん、さっきからぶつぶつと何ですか?」
助手のトミーが言う。
「すまない。急いでいるときに、蒸気エンジンは始動まで時間がかかるからな。」
「あー。そうですね。確かに。」
トミーはすぐ理解した。
常にお湯が使えたらいいのにと思った。
◆
一方ミランド隊は四方の外壁全てから、攻撃を受けていた。
蛮族の長弓は射程が長いから、外壁の上まで飛んできた。
火のついた荷車が四方からやってきたが、ミランドは無視した。
梯子を持った兵は空堀でなかなか梯子を固定出来ない。
「ヤマタニ様の指示は的確だった。前の二の舞は踏まない。」
しかしミランドは驚いた。
蛮族なのに、攻城塔と投石機を前線に押し出してきた。
「あれは、蛮族の兵器ではない!統制はとれているから、やはり何処の国の仕業か?」
ミランドは思ったが、西側の4門のバリスタを用意させ、攻城塔や投石機に向け発射させた。
一度の発射で投石機を一台の撃破し、攻城塔の車輪にもダメージを与えた。
「いいぞ!なかなかの命中力だ!」
「第二射用意。」
「発射!」
二撃目にして、投石機や攻城塔4基が完全破壊か、もしくは壊れた。
火のついた荷車が鉄門に来たが、火は燃え移りはしなかった。
虚しく荷車だけが燃え上がる。
決め手に欠けた蛮族は弓矢と投石と投げ槍で攻撃する。
だが、外壁に阻まれてミランド隊は無傷だった。
しかし時間が立つにつれて、負傷する兵が続出する。
「嫌がらせに、敵部隊指揮官に向けバリスタを撃て!」
終結している各指揮官にバリスタを放った。
命中しないが、敵はいきなり巨大な矢が飛んできて、混乱し蜘蛛の子を散らしたように乱れた。
こうしてミランドは数時間の時を稼ぐことに成功した。
そうこうしているうちに、東門の蛮族をゴドールが背後から急襲した。
敵の部隊司令官にトラックで突っ込み、司令官を即死させる。
続いて荷台から弓矢や槍で四方の東部隊を叩きのめした。
蛮族司令官を失った東門攻略部隊は、敗走して行った。
ゴドールは東門の敵を一掃したあと南門へ向かう。
続いてヤマタニはゴドールが南門へ向かったのを見て、北門に向かった。
司令官らしい人物に機関砲を乱射して、司令官周囲の蛮族をなぎ倒した。
圧倒的にヤマタニ軍が敵を駆逐していくのを見た、味方の士気が爆上がりする。
「おおーーーーーっ!!」
ブエナのミランド部隊から大きな歓声が上がる。
ゴドールの部隊は南門の敵指揮官めがけ突進した。
ゴドールの投げた槍が見事、敵指揮官に当たり絶命する。
トラック周囲の敵が闇雲に、ゴドール達を襲うが弓矢や槍の餌食になる。
ゴドール隊のトラックは疲れを知らず、走り回った。
「前回みたいに囲まれはしない!」
ゴドールは言い放った。
逃げる敵兵は放っておき、問題の西部隊へゴドール隊、ヤマタニ装甲車は突き進む。
「なんて奴らだ!」
西門の蛮族部隊は、騎馬隊をゴドール隊とヤマタニ装甲車にさし向けてきた。
「また騎馬隊が襲ってきたか、二度は同じ羽目にはならないぞ!」
ゴドールは一撃離脱を繰り返す。
「止まって囲まれるな!」
ゴドールは運転手に言って指示する。
一方ミランド隊は外壁の上から、ヤマタニ、ゴドール隊を弓矢で支援する。
「ヤマタニ様、ゴドール様に群がる敵を撃て!」
ヤマタニは機関砲を乱射しつつ、敵指揮官に肉薄して行く。
蛮族司令官を守るために犠牲になる敵兵は、肉壁となり、やがて機関砲の餌食になって倒れた。
やがて西門司令官に機関砲の弾丸が届き、司令官は馬場から姿を消した。
あっという間に攻撃部隊を失った総司令官は、重装甲騎士部隊をゴドールやヤマタニ装甲車に差し向けてきた。
明らかに蛮族とは違うプレートメイルに盾にランス。
「あの重装甲騎士部隊!蛮族ではない。」
ゴドールは蛮族とは違う鎧騎士に攻撃を命じた。
ゴドールが立ち向かうが、敵兵騎兵はトラックの体当たりをするりとかわす。
ゴドールは一撃離脱を繰り返すが、あまり効果はない。
矢が当たるがメイルや盾で防がれる。
しかし、そこにヤマタニ装甲車がやって来て、重装甲騎士を機関砲でなぎ倒していった。
流石のプレートメイルも機関砲の弾丸には効果はなく、ほとんどの重装甲騎士は倒れ去った。
総司令官はあらたな重装甲騎士や蛮族騎馬隊を用意しつつあった。
「まったくしつこい連中だ。」
「装甲車はロケット弾を使う!離れろ!」
と装甲車のまどから怒鳴った。
「ロケット弾全弾発射!」
装甲車は一時停車し蛮族本体に照準をセットする。
「3、2、1」
「全弾発射!!」
「シュッ、シュッ、シュッ、シュッ!」
「シャルルルルルル。」
ロケット弾は弧を描きながら敵へ向かって行く。
やがて命中し爆音と土や肉塊が飛び散っていった。
「ドカッドカッーン!ドカッーン!ドカッーン!」
遅れて衝撃波が装甲車を襲い、続いて爆発音がヤマタニに向かってきた。
敵蛮族は大混乱に陥り、やがて敗走して行った。
二度目の蛮族攻撃、ブエナ街の攻略は失敗に終わったのだった。
残されたのは数百の敵の死体と負傷した兵士達だった。
この他国の鎧の違和感が、頭の中から離れない。
「この蛮族に混じった別の国の鎧騎士、確実に糸をひいている別の国がいる。」
ヤマタニは蛮族の襲来の影に、他国の黒幕がいると思った。
「一体どの国が裏で糸をひいている?」
蛮族ともう一つの国が、この国を狙って来ている。
ヤマタニの不安感が一層強まっていくのを感じた。
辺りにはロケット弾の煙や火のついた荷車の煙が漂い、残された蛮族旗が無残に地面に倒れていたのだった……。