作品タイトル不明
街を明るく照らす
第6話 街を明るく照らす
この王都では、街灯にガス灯が使われていた。
夕方になると係の者が一本一本、火を入れて回る。
ガス灯は主要通りを安定した光で照らし、夜の街を支えていた。
だが――問題もあった。
石炭ガスを用いるこの仕組みは、常に危険と隣り合わせだったのだ。
ガス漏れや圧力の不安定さにより、炎が突然大きくなったり、最悪の場合は爆発を引き起こす。
家庭用でも同様の事故が発生し、一酸化炭素中毒の危険もあった。
安全に使うには細心の注意が必要だった。
一方――
ヤマタニが発明した電球は違う。
安定した光を長時間灯し、事故の危険も極めて少ない。
ただし欠点があった。
バッテリーである。
定期的な充電、もしくは充電済みのバッテリーをソンブレロモネダ商会から購入しなければならなかった。
◆
だが、サンブレロの街はさらにその先へ進んでいた。
「なんだ……この明るさは!?」
「夜中なのに、昼間のようじゃないか……!」
訪れた旅人たちは、思わず足を止める。
そこにあるのはガス灯ではない。
電灯だった。
街全体が、白く安定した光に包まれている。
暗くなると同時に、一斉に灯る街灯。
火を入れる者は、どこにもいない。
その結果――
夜間の犯罪率は大幅に低下していた。
遠くから見れば、サンブレロの夜景は幻想的ですらある。
外周を巡る蒸気外輪船の灯り。
時折走る蒸気機関車の光。
街路を照らす無数の電灯。
そしてヤマタニ屋敷とヤマタニランドの輝き。
それらが重なり合い、ひとつの光の都市を形作っていた。
だが、この光には裏側がある。
既存の工場の発電だけでは、街全体を賄えなかったのだ。
ゆえに――
新たに大規模発電所が建設され、電力は街中へと供給された。
この街の強みは、それだけではない。
ヤマタニの先見性により、街の建設段階からすでに電力網の整備が進められていた。
下水工事と同時に、耐水電線を地下へ埋設。
後から掘り返す必要すらなかった。
各施設・店舗には契約により電力が供給され、夜の営業を可能にしている。
さらに――
電気は生活そのものを変え始めていた。
夏にはファンが回り、涼風を生む。
そして今、最も注目されているのが――冷蔵庫である。
これまで保存といえば、氷室の氷を用いた保冷庫が主流だった。
上段に氷を置き、その冷気で下段を冷やす単純な構造。
肉や野菜は塩漬けや乾燥保存が一般的だった。
だが、新たに開発された電気冷蔵庫は違う。
コンプレッサー式により、冷凍庫で氷を作り、冷蔵室で食材を長期保存できる。
まさに――異世界における革命的家電であった。
この功績により、ヤマタニ男爵は国から感謝状を授与される。
さらに礼金として――金貨三百枚。
その名は今や、王都にも広く知れ渡り始めていた。
ヤマタニは次にコンプレッサーを利用した製品を手がけ始めた。