作品タイトル不明
大盗賊団の襲来①
第40話 大盗賊団の襲来①
大盗賊団の一部が、サンブレロの街に入り込んでいた。
目的は――偵察。
金になる獲物があるかどうか、その匂いを嗅ぎつけるための斥候である。
「最近ここに、“蒸気トラック”とかいう妙なもんを作ってる工場があるらしいな……。」
噂では、その工場はかなり儲かっているという。
となれば当然――金も集まっている。
斥候は何気ない足取りで街を歩きながら、周囲を観察していた。
事務所らしき建物。
警備の配置。
人の流れ。
「この辺りのどこかに……金庫の一つや二つ、あるだろうな。」
だが、長居は禁物だ。
警備に目を付けられれば、それだけで価値は下がる。
「……このくらいでいいか。」
斥候は自然に踵を返し、その場を離れた。
さらに街を一周する。
だが目立つのは――巨大な工場だけ。
それ以外は、どこにでもあるような田舎町だった。
「……まずは宿だな。」
斥候は宿を取り、夜を待つ。
そして向かう先は――決まっていた。
酒場だ。
酒が入れば、人は口が軽くなる。
情報を拾うには、これ以上ない場所だった。
◆
夜の酒場は、熱気に満ちていた。
仕事終わりの労働者たちが、エールを片手に笑い声を上げている。
斥候は店内をゆっくりと見渡した。
(身なりのいい奴……役職持ちがいれば当たりだが)
その時、奥の席に目が止まる。
四人組。
他の客よりわずかに整った服装。
そして――余裕のある座り方。
(あいつらだな。)
斥候は近くの席に腰を下ろし、さりげなく耳を傾けた。
「しかしヤマタニ社長はすげぇよな。寂れた村を一気に再生しちまうなんてよ。」
「ほんとだよ。おかげで俺なんか班長だぜ。」
「お前はまだいいだろ。主任様じゃねえか。」
「あはは、肩書きだけさ。雑用係みたいなもんだよ。」
その会話を聞き、斥候の口元が歪む。
(ほう……内部の人間か。)
わざと軽い調子で声をかけた。
「へぇ、あんたら。けっこう給料もらってんだろ?」
男たちは顔を見合わせ、苦笑した。
「そんなわけあるかよ。」
どうやら間違いない。
こいつらは工場の人間だ。
――その時。
「ちょいとお客さん。ご注文は?」
店員の声に、斥候は一瞬だけ現実に引き戻された。
「……エールと、適当なツマミを。」
「はいよ。」
店員が去る。
再び耳を澄ませるが、会話はただの世間話へと戻っていた。
(……使えねぇな。)
斥候は席を移り、別のテーブルへ。
さらに別のテーブルへ。
そうして断片的な情報を拾い集めていく。
――蒸気トラックは王命による国家事業。
――年間、およそ百台を生産。
――炭鉱から街へ石炭を運搬している。
「国家事業、ねぇ……」
斥候はエールを飲み干した。
国家が絡む事業。
それはつまり――
莫大な金が動いている、ということだ。
(……やっぱり当たりだな。)
斥候は静かに笑う。
だがその目は、すでに“次”を見据えていた。
どこを襲うか。
いつ襲うか。
何を奪うか。
情報収集は――まだ終わらない。
そしてそれは、やがて血の匂いを呼び込むことになる。