軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:あなたのお家はどこですか?

ログインまだです。

真紀奈が仕事から帰る前に、俺はネットで調べ物をしている。

昨日はピリオの広場でカラスの見覚え証言を得た後、転移登録をしてあるモロキュウ村とエゴマ亭に飛んで、そこでも見覚えの確認をした。

結果、建物に関しては見覚えが無いが、地形や植生には見覚えがあった。

……その後は、戻ってお土産のパンをジャックに渡した後は早々にログアウト。

いくつか確認をしたかったのと、ちょっと頭の整理をつけたかったからだ。

俺達のいる 微睡(まどろみ) の森は、フッシーが言うには『次元がズレた場所』にある。相棒もはっきり説明していなくても、それは薄々察してる。

他プレイヤーが現状では就寝時にしか『夢の牢獄坑道』に来られないのもそのためだろう。

俺はイベントマップじゃないかって推測を立てていた。今のところは正解っぽいと思う。

じゃあ、そんな場所の見た覚えがあるって言うあのカラスの記憶は、どういうことだ?

ネットで開いているのは有志wiki。

そこの『発見モンスター一覧』

無限生成されるオープンワールドファンタジーだから後から増えてキリがないだろうし、コンプリートすることはない。現状だって穴だらけだ。

それでもある程度の生息地やドロップ品が記入された情報はそれなりに重宝する。

『ホライゾンクロウ』……検索結果は0

カラス系のモンスターを一覧から探すが……カラスってあんまりいないな? 表記揺れみたいな物も見つからないか……

念のため『テイマー向けモンスター紹介動画』なんてのも見てみたけど、そっちもそれっぽいのは無し。

……まあ、情報が無い物はしょうがない。

そろそろ夕飯の支度をするか。

* * *

二人で夕食をとって、色々済ませてからログイン。

パン屋のパンを齧りながら調べていた事を話すと、キーナも考え込むような顔をした。

「んん~……僕もちょっと考えてたんだけどさ。カラスちゃんって、種類が『ホライゾンクロウ』でしょ? 『地平線』なんて入ってるくらいだから、もしかしてどこにでも飛んでいける子なのかなって思ったんだよね」

なるほど?

それなら街の方もこの森も知ってる理由にはなる。

ただ、そう言う相棒当人は納得していないみたいだった。

「……でも、それだと近くに生息してないのが意味がわからないんだよね。『大切な名前』があって『帰りたい』んだからさ。それって、すごく大事な居場所があったってことじゃん?」

「うん、そうだね」

「ってことは仲間がいたと思うわけよ、カラスちゃんの」

なのにホライゾンクロウの群がどこにもいない。

「めっちゃ長距離飛行する鳥なのかなぁ? それで巣が滅茶苦茶遠くて……ここみたいに、ホライゾンクロウの巣専用の場所があるとか?」

無くはないな。

その場合は、いつか行けた時にチャンスを逃すなって感じになるか。

そんな感じのクエストはたまにあるらしいし。

ただどこにでも飛んでいけるって言うなら、うちには該当者がいるんだよな。

「……フッシーにでも聞いてみるか?」

「あ、確かに。何か知ってるかもしれない!」

* * *

「いや知らんな」

「そっかー」

知らないか。

まぁフッシーがなんでも知ってたらゲームにならないな。

「我、人の子の文化は興味深かったが、それ以外の生き物は特に……そっち方面は我に期待せん方がよいぞ」

「オッケー」

不死鳥とはいえ野生とは思えないような事を口走るフッシー。

ほら、ネビュラもなんか呆れてるぞ。

ひとまずフッシーにお礼を言ってその場を離れた。

「じゃあ手がかり待ち……っていうか、遠出して手がかりを探した方が良い感じかな? カラスちゃんが民家が建つ前のピリオしか知らないってことは、街の住人に聞き込みしても効果なさそうだし」

「そうだな」

拠点に引きこもり気味な俺達にはちょうどいいクエストなのかもしれない。

「ただ……もうすぐイベントなんだよね。いつからだっけ?」

「来週の月曜」

「あと一週間くらいかー……本格的な遠出はイベントの後にしたいなぁ」

ふむ。

うっかり転移オーブの無い所に遠征して、イベント始まって慌てて死に戻るみたいな事は避けたいか。

「それなら、イベントで大街道を伸ばす先の街に行ってみる?」

「おお! 近くて大きくて入れるってことだよね、ちょうどいいかも! ……どの街なのかってわかるの?」

「発表来てたよ」

相棒はアップデート情報とかも気が向いた時しか見ないもんな。

「北は行った事あるよ。『☆フェアリータウン☆』」

「あー、あそこかぁ……あそこに大街道繋がるんだ!?」

「そう」

あのアマゾネス軍団の殺意高い街は、俺が勝手に居心地悪くなってるだけで出入り自由だから。

「東は『ブリックブレッド』」

「……なんか聞き覚えある」

「ジャックの故郷……の、後身かな?」

スレで見かけただけだから、たぶんだけど。

「南は『サウストランク』」

「初めて聞いた」

「俺も知らなかった」

職人とか商人が多いって噂だけスレで見かけたな。

「西が『石の街ロックス』」

「わかりやすい。石が多そう」

「これで石が無かったらあまりにも名前詐欺」

ピリオの近場で石材を採るなら、ここの転移オーブに登録するのが一番手軽らしい。

「カラス探しながら行くんだったら徒歩の方が良いだろうから、ひとつひとつ周ってる間にイベント始まると思う」

「なるほど。つまり僕らは、今日から怒涛のハイキング週間」

そういう事。

四方の街までなら、今の俺達のレベルなら余裕だ。カラスを探しながら歩いても危ない事は無い。

「いいね、それでいこう!」

「じゃあピリオ行って……軽く買い出ししたらそのまま行くか」

「お金足りる? ボウガン買って結構減ったけど」

「……グレッグさんいたら熊の爪でも売ろう」

なお、グレッグさんはいた。

山狩りで入手したワンパンベアの爪をジャラジャラと出すと、嬉しそうなのにめんどくさそうっていう実に器用な表情を浮かべて買い取ってくれた。

なんだその反応。