軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

幕間:夜の密かな襲撃事件

石野ヌリカベ:新聞社、襲撃来た

石野ヌリカベ:数は25

ストゥリクス:対処出来ますか?

石野ヌリカベ:問題ない

ストゥリクス:了解。こちらは予定通り潜入調査を続行します

パーティチャットを閉じて周囲の気配を探る。

敵性存在の接近は無し。

プレイヤー『ストゥリクス』は引き続き、他の突入メンバーと共に夢の中、敵対錬金術士のアジトの探索を続けた。

ゲーム内時刻は23時。

リアル時刻は18時。

ストゥリクスは、リアル都合でゲーム内の夜時間にしかログイン出来ないプレイヤーである。

夜時間がメインのプレイヤー達は、夜間にしかスポーンしないモンスターの討伐や調査、或いは不穏なNPCの調査等がクエストとして出されるので、それらをメインに遊ぶ事が多い。

そして最近は、メインストーリーにも大きく関わるらしい敵対組織のアジト調査が出てきたので、夜時間プレイヤー達でパーティを組み突入している次第だ。

さらに今日はそれだけではない。

『ピリオニュース』なるゲーム内の新聞を出版しているクラン『ウサボール通信社』から、夜時間プレイヤーへ傭兵依頼が入ったのだ。

NPC住民に注意喚起を出す事で様々な被害を未然に防ごうとしているウサボール通信社は、どうやら敵対組織に狙われる可能性があるとの情報。

それを受けたウサボール通信社は、それを逆手に取り襲撃者を迎撃・捕縛する計画を立てた。

本来ウサボール通信社は昼時間がメインのプレイヤーだ。

これはゲームなので、さすがにクランメンバーが誰もログインしていない時間に本社襲撃なんてイベントは起こらない。

そしてゲームではあるが、敵対NPC達が襲撃や誘拐といった行動を起こすのは、やはり昼よりも夜の方が頻度が高い。

だから、ウサボール通信社はそれを逆手に取った。

リアルの都合を着けてクランメンバーが全員ゲーム内夜時間にログインすれば、そこを限りなく襲撃の可能性が高い時間とする事が出来る。

そうして本社にトラップを仕掛け、夜時間プレイヤー達を傭兵として配備し、万全の状態で敵対NPCを迎え撃つ。そういう作戦だ。

さらにウサボール通信社の者達は、それだけで済ませるつもりは無かった。

都合のつく夜時間プレイヤーを全て雇って、一部を襲撃されているタイミングで逆にアジトへの潜入調査へ派遣する事を決めたのだ。

現時点で出揃っている情報から、実行犯はおそらく敵対組織の中でも獣人がメインの所だと思われる。

だが、そこへ指示を出す別組織のNPCが必ずいる。

その別組織は、今回は錬金術士の集団だと分かっている。

錬金術士の集団は夢の中にアジトを持っていて、夜時間の方が会話等の情報を得やすいのだ。ただし、逆にNPCの数が多すぎて見つかる確率が高かった。

だから、このタイミングで潜入調査をすれば、多少なりと手薄になっているアジトでさらなる調査が出来ると新聞社は踏んだのだ。

荒ぶる削り節:おいおい、こいつら新聞社に白夢草置き土産にしようとしてんぞ

アサルトシングル:燃やせ燃やせ、残るとマズい

LEDアンコウ:場所どこだ

荒ぶる削り節:こっち

荒ぶる削り節:中庭

醤油色の猫:こちら夢のアジト、Eポイント付近で白夢草本体の気配を感知にゃん

BLACK無答:はいよEポイントね

石野ヌリカベ:アサルト、新聞社西側、非敵対NPC接近

アサルトシングル:了解、迂回させる

現在進行系で襲撃を受けている新聞社側は忙しそうだ。

しかし、パーティは別にした方が良かったかもしれないなとストゥリクスは考える。

新聞社の防衛が優先だから状況次第で戻るために一緒にしたが、流石に両方の報告が混ざるのは分かりにくい。やっぱりイベント景品の念話装備は取っておくべきだった。アレがあればもう少し違ったのに。

……まぁ今更だ。

ストゥリクスは梁の上へと跳び、足音を消すために使っていた【闇魔法】を解除して息を殺す。

足の下、部屋の中をパタパタと敵対NPCが二人、早足で通過していく。

「待ち構えられてたって事はバレてたって事だろ? 獣人共がヘマしたんじゃねーの?」

「知らないわよ! いいから【火魔法】の魔道具をさっさと追加で投入するの! 獣人も新聞も、全部吹っ飛ばせば関係ないわ!」

姿が見えなくなり、足音が聞こえなくなるのを待ってからストゥリクスはパーティチャットを開いた。

ストゥリクス:夢のアジトより新聞社へ

ストゥリクス:そっちに敵対NPCが火魔法の魔道具を投入する話を聞きました

ストゥリクス:獣人も新聞も吹っ飛ばすと言っていたので、爆発にご注意を

アサルトシングル:はぁ!?

荒ぶる削り節:ふざけんな

チク・タク:獣人ごととは、あまり仲間意識は強くなさげ

石野ヌリカベ:了解、情報感謝

報告を済ませて、ストゥリクスは再び足音を消しながら別の部屋へと移動した。

これまでの調査で、夢のアジトの構造はおおよそ解明されつつある。

ここは敵対錬金術士達が行動するエリアがアリの巣のように存在していて、それ以外の場所は2つ3つ程の部屋を繰り返して無限ループするようになっているのだ。

夜時間プレイヤー達の中でもマッピングが得意な者は、初めての大規模なアジト潜入に大喜びで調査を進めた。それにより、かなりの範囲のマッピングが完了している。

今ストゥリクスが来ているのは、現時点での未踏エリア。

ここは昼でも夜でも敵対錬金術士が複数人常駐していて、書類や物品の調査が難しい部屋だ。

狙い通り、襲撃にヒトを割いて手薄になっているのだろう。珍しく常駐しているNPCがいない。

棚に目線を走らせ、めぼしい書籍や書類束を手早く写してインベントリに入れていく。

そうしたら次は机の上。

エフォ(EFO) の錬金術士は片付けが下手くそなのがデフォルトなのか、基本的にどこの机も器具だの薬品だの紙とペンだのがゴッチャリと積み重なって調べにくい。

音を立てないように物品をリストアップしていると……本を持ち上げた時にひらりと1枚、羊皮紙が落ちた。

拾おうと手を伸ばして……その内容が目に入る。

──確保・処理済、未発覚

──ピリオノート南『アジルト』『チェナ』

──砂の都・サラサオアシス西『カイラ』『トト』

──砂の都・サラサオアシス西『ルイン』『アーリエ』

──ピリオノート東『ホルンス』『マナ』

最後の名前が記憶に引っかかる。

マナ?

ピリオノート東、マナ……最近どこかで聞いた気がする……

確か、結婚式がどうとか……誰かが言っていなかっただろうか。

……ダメだ。すぐに出てこない。

そもそも夜時間プレイヤーは住民NPCとの関わりが少ないのだ、すぐにピンとこなくても許してほしい。

どのみち、今は襲撃対処に忙しくて、ピリオノートにいる誰かに伝えるわけにもいかないのだ。

リストを複製しインベントリに入れて、忘れないよう心に留めておく。

今出来るのは、それくらいだ。