作品タイトル不明
キ:不穏&不穏
ログインしました。
同盟の皆で熊討伐とバーベキュー楽しかったね。
でも最近、フリマに封印作戦からのバーベキューと……たくさんのヒトとたくさん関わるイベントが目白押しだったから、僕らのメンタルはちょっと疲れ気味。
なので、今日は1日空けてのログインです。
本日の予定は、今のところ特に無し。
アルネブさんとセイレーンさんに1匹ずつ貰われて数が減ったうたた寝ウサギちゃん達の里親探しは、別に緊急の用事じゃないし明日にしても大丈夫。
「俺は今日は拠点でのんびりするかな……」
「どうぞどうぞ」
ご覧の通り相棒はメンタルブレイク気味。
今日は拠点のアニマル達の世話をして過ごす日に決定。
メララックスの過ごしやすい環境なんかも整える事にしたみたい。
さて僕は……のんびりする事に異論は無いんだけど、変装無しの状態でウィンドウショッピング的な事も楽しみたい気分かな。
ああ、あと例の植木鉢で育てる植物を猫の取り替えっこ屋さんに見に行こうと思ってたんだ。猫の店にも行ってみよう。
「僕はちょっとピリオをぶらっとしてこようかな。露店広場と取り替えっこ屋さん見てくる」
「OK」
ピリオノートをグルッとお散歩して帰ってこよう。
シマエナガのシロちゃんも一緒にね。
* * *
転移オーブでピリオノートに降り立つと……なんだか街の雰囲気がいつもと違った。
「……何か、あったのかな?」
「ジュリ?」
プレイヤーっぽいヒト達も、住民NPCっぽいヒト達も、立ち話をしているヒトが多い気がする。
どっちも何か話をしては、北の門の方に目線をやっている感じ。
何だろう? 新聞に何か書いてあったりするかな……あ、今日は新聞売ってないや。いつも新聞を売っている所に売り子さんっぽいNPCはいるんだけど、新聞の乗った荷車は無くて、近所の奥さんっぽい雰囲気のヒト達が話を聞いては不安そうな顔をしている。
「……なんでも夜中に……」
「……爆発?」
「怖いわぁ……」
漏れ聞こえてくる単語が不穏だなぁ……プレイヤーっぽい装備のヒトは話を聞いて北門に向かうヒトもチラホラいた。
何だろう……気になったから、奥さん方に囲まれてる感じの新聞の売り子っぽいヒトに訊ねてみる。
「……今日は新聞売ってないみたいですけど、何かあったんですか?」
「ああ、すみません。実はウサボール通信社の事務所が昨夜襲撃にあいまして……」
「え、襲撃!?」
「ジュリリッ」
モンスターのピリオノート襲撃……ではないはず。それで防壁を突破されたならもっと大事になってるだろうし。
前に新聞社が狙われるかもみたいな情報はあったから、それかな?
僕のそんな疑問を感じ取ったのか、売り子さんはヒラヒラと「あ、モンスターではないです」と手を振った。
なんでも、例の敵対錬金術士の組織が獣人の集団と手を組んで、夜中に新聞社を襲撃したらしい。案の定だね。
でもきちんと対策をして迎え討ったから、実行犯はほとんど捕まえたし、ちょっと爆発はあったけど大きな被害は無いんだって。
「まぁ流石に今日の新聞は間に合いませんでしたけど。今頃号外をまとめてると思いますので、期待して待っていてくださいね!」
「なるほど」
「ジュリッ」
ゲーム内は早朝。昨夜に襲撃があったなら、割と落ち着いた直後なのかな。そりゃ新聞はまだ無理だよ。
僕はお礼を言ってそこから離れた。
ふむ、現在進行系で襲撃を受けてるなら様子見に行ったけど、もう終わってるなら気にしなくてもいいのかな。
予定通り露店広場を見て、それから猫を追いかけるとしますかね。
* * *
さて、露店広場のウィンドウショッピングに満足して、猫を探すべくNPC住民の住宅地にふらりとやってきた僕とシロちゃん。
のんびり歩いている猫はいるかなー?
……なんて思いながらぶらぶらと路地裏を歩いていると
「あの、すみません」
見知らぬ男性に声をかけられた。
黒い髪の、住民NPCっぽい服装の若い男性。
どこか不安そうな表情で僕の方を見ているんだけど……なんか目に光が無い。
「……なんでしょう?」
「えっと……貴女の旦那さんが怪我をしているのを見つけまして……貴女を呼んでいるんです。すぐ一緒に来てください」
「……はぃい???」
そんなバカな。
メンタルブレイクしている相棒が、ヒトの多いピリオノートを単独でウロウロするわけ無いだろー!?
……念のため確認。
(相棒、今ってどこで何してる?)
(え? ……拠点でネビュラのブラッシングしながら、パピルスさんとメッセージのやりとりしてたが?)
うん、拠点にいるよね、知ってた。
ってことは……はい、目の前のこいつが言ってること嘘ー!
……でもなんでそんな事を言ってきたのコイツは?
見知らぬ相手が僕に旦那がいるのを知っているのはまぁいいよ。結婚指輪装備してるし。変装なしでもピリオに二人でデートには来るから、それを見て察している可能性はある。
でも、その相方が怪我をしているなんて嘘をついて『一緒に来い』はさ、誘拐の常套句すぎるでしょ。リアルでホイホイついて行っちゃいけないよ、絶対にだ。
よっぽど僕が嫌そうな顔をしていたのか、目の前の謎の男は露骨にイライラし始めた。
「ほら、早く!」
「わっ」
接触許可を出していないのに手首を掴まれた。
って事は、コイツはやっぱりプレイヤーじゃない。NPC確定。
慌てて振り払おうとしたけど、相手の方が筋力ステが高いのか振り払えなかった。
引っ張られて、たたらを踏みながら歩き始める。
「……どこ行くんですか?」
「いいから来て」
ううーん、強引。
そしてずっと目に光がない。
魔法で抵抗してもいいんだけどねぇ……『結婚システムを使用している事』が条件の誘拐イベントって聞いたことないから、どこで何が起きるのかはちょっと気になる。
……仮に敵対組織関係だとしても、僕は儀式に抵抗出来るし……うん、ちょっと様子見をしてみようかな?
でも、念のため相棒には伝えておこうね。
(相棒ー、なんか知らないNPCに『おたくの旦那さんが怪我してますよー』って嘘つかれて連れてかれそうになってるんだけどさー)
(……は?)
(まぁ誘拐なんだろうけど、何が起こるのか気になるからちょっと行ってくるねー)
(えぇ……??)
これでよし。
さてさて、どこで何が待ち構えているのかな?