軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:混線した誰かの夢

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夢魔のクラウンが作る夢領域に四葉亭を作って数日、今の所は問題は特に起きて無い……と、思う。

なんてったって僕らがいない間のお客さんだからねぇ、わからんのよ。でもまぁ、相棒曰く掲示板にネガティブな書き込みは無さそうらしいし、多分大丈夫かな?

と、いうわけでここ数日は、ちょくちょくクラウンの所へ行って商品の補充をしつつ報告を聞いたりしていた。

……いたんだけど。

「……あれ?」

その商品補充から覚醒状態へ戻るはずが……なぜだか僕は見慣れた拠点の寝室ではなく、いつぞやの闘技場の巨大アリーナの客席に立っていた。

僕ひとりで。

何故か同時に移動していたはずの相棒はいない。

うん? なんだろう……何かイベントかな?

夢でイベントが起きるのは僕らにとってはあるあるだから、そこについてはそれほど驚かない。

でも、相棒がいなくて僕だけなのは何でだろう?

一応システムを確認するけど、家族設定している相棒のVR機器の通知とかは特に無し。焦らなくて大丈夫。

【夢魔法】で相棒呼べるかな?と一瞬考えたけど……僕個人がフラグを踏んだイベントだったら、もう1人呼んだらおかしな事になっちゃうかな? とりあえずそれは保留にしておこう。

チャットと掲示板は……使用不可。

インベントリは……使用不可。うーん、お客さんがいないのを確認してたから、森夫婦の変装じゃなく普段の魔女服状態なんだよねぇ……まぁ、何か起きたら動画化はしないで〜って叫んでおくしかないかな。

席を見渡す。

夢らしく、なんだか現実感の無い観客のシルエットっぽいモノがアリーナ席を埋め尽くしているけれど……

1人だけ……暗緑色の髪をした人物の背中が見えた。

僕がいる位置より前の方の席に座って、ジッとフィールドに顔を向けている。

フィールドでは2人分のシルエットがドッタンバッタンと戦闘中。

それを観戦しているのかな?

とりあえず、何かイベントだとしたらあの人がキーパーソンなんだろうし……話しかけてみようか。

階段を降りながら近付く。

多分……男性かな? ローブを着た体の前の方で杖に体重を預けてるっぽい……あれ? 思ったより若いなぁ。背中丸めた感じが、なんとなくそこそこの年齢に行ってそうな雰囲気だったんだけど。よく見たら青年だ。

「こんにちはー」

真横に到着して声をかけると、男性は僕を見上げかけて……目を見開いた。

「レイラ……っ!?」

「え?」

その驚きは、一瞬だけですぐに霧散した。

本当につい口から出た感じだったみたいで、男性はすぐに我に返って自嘲まじりに苦笑する。

「……失礼、知人と間違えました」

「えっと……そんな似てます?」

「いいえ、まったく。ただ……長い銀髪の女性の知り合いが、1人しか思い当たらなかったので」

ああ、僕のアバターって銀髪ロングだもんね。

そこへ、周囲のシルエットから歓声が上がる。

フィールドに目をやると……あの赤毛は、騎士団長さん? いつもと違う装備の騎士団長さんがデカい剣を手に、布を砂漠地方っぽくグルグル巻きにした誰かと戦っているようだった。

男性はそれを見て……スッと表情が消える。

「……どうして」

声に滲むのは、寂しさのような、悲しさのような、後悔のような、複雑そうな気持ち。

「どうして……私には、声をかけていただけなかったのか……」

沈黙。

そして、何のことだか分からない僕へ、嘲るような笑みを向ける。

「……分かっている。私には、既にそのような資格は無い。……どうせ夢ならば、誰とも分からぬ者でなく、レイラが叱責しに来れば良いものを……」

うーん、ごめんよ人違いで。

この言い方、レイラさんに、会いたいんだろうね。

でも会えない。

どうしてかな……遠すぎるのか、亡くなっているのか、他に理由があるのか……まずこのヒトが誰だか分かんないから予測のしようもないんだけど。

再びフィールドへ顔を向けてしまった男性に、僕は問いかける。

「……会いには行けないんですか?」

「まだ行けない……行くわけにはいかない」

大きくないのに、強い声。

う〜ん……こういう、決定的な所を濁そうとされちゃうとなぁ〜、詳しくは喋りたくないんだろうなぁ〜って思っちゃうんだよなぁ〜

だから

「……紙に書いて枕の下に入れて寝たら、姿だけでも見られるかもしれないですよ」

インベントリも封じられている僕には、この程度が精一杯で。

それを聞いた男性は、軽く鼻で笑って

「気休めにもならん 呪(まじな) いだ」

と、やっぱり寂しいような、悲しいような、後悔のような、複雑そうな声で、そう言った。

その後は……何を問いかけても沈黙したまま、ただ静かに試合を眺め続けて。

騎士団長さんが相手を吹っ飛ばし、勝負がつくかどうかって所で……夢は、溶けるように終わった。

まるで、それ以上見たくないみたいだった。