軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:国王陛下の来訪腕試し

ログインしました。

クエストに向けて、念のため乱戦になった場合を想定して準備をした。

そして今日は『国王陛下の来訪腕試し』当日。

俺達は、森夫婦の変装姿で、イベント開始よりもそこそこ早めに闘技場前へとやってきた。

((うわぁ……))

思わず念話がシンクロする人口密度。

続々と闘技場の中へと向かうヒトの群れに閉口する俺。そんな俺を見て仮面の中で苦笑いしたような雰囲気のキーナ。

(ヒト多いねぇ)

(多いなぁ……)

(やめとく?)

(いや、行くよ)

もう同盟チャットにも『行く』って言ってあるしな。

はぐれないように、キーナと腕を組んでゾロゾロと進むヒトの流れに合流した。そのまま闘技場の入り口へと少しずつ進んでいく。

(……街の住人っぽい服装もそれなりにいるな)

(ねー。一応戦えそうな格好のヒトの方が多いけど、何かあった時に守らないと死んじゃうNPCもそこそこ多そう)

流石にドンパチするイベントだからか小さな子供連れはいないが、休日で暇してましたって感じの大人達が見るからに普段着な装いで混じっている。

若干不安を覚えながら周囲の観察をしていると……キーナが掴んでいる俺の腕をトントンとつついた。

(あ、お嬢様のクランだ)

(どこ?)

(僕らの左前、ずっと先の方)

(……ああ、見つけた)

見覚えのある制服の一団が、列のかなり前の方に固まっているのが見えた。……結構な人数で来てるっぽいな。

(お嬢様クランがいるなら一般NPCの避難も少し安心な気がする)

(だな)

絶対にカトリーヌお嬢様はNPCを見捨てないだろうからな。

そのまま列はジワジワ進み、俺達も闘技場の建物に入った。

受付の様子を見ていたが、どうやらイベント参戦希望者が専用のオーブを示されている他に、NPCとプレイヤーとで受付後のオーブが分けられているらしい。

受付NPCが笑顔でヒトの群れを振り分けて、振り分けられたヒトはそれぞれ別のオーブへ向かっている。住人NPCっぽい格好の人々と、お嬢様のクラン等のプレイヤーっぽい人々が、明らかに別の方向を指示されていた。

さて、俺達の受付の番だ。

『国王陛下の来訪腕試し』を観戦したい旨を告げると、「あちらのオーブからどうぞ」とイベント専用キーを渡された。

キーを受け取って、邪魔にならないようにすぐに避ける。

そして受付で指示されたオーブの方へ目をやると……壁際に見覚えのある黒い鎧姿が目に入った。

「よう」

「……どうも」

「あ、どうもー」

軽く片手を上げて声をかけてきたのはガルガンチュアさん。

その周りにいたグリードジャンキーの面々も笑顔で俺達に挨拶をしてくれた。その中の1人、魔法使いのボルシチさんが杖で自分の肩をトントンと叩きながら言う。

「お二人も国王チャレンジですか?」

「僕らは観戦です」

「……見るだけですね」

俺達の返答を聞くと、ガルガンチュアさんは軽く肩をすくめた。

「なんだ、やらねーのか。経験値貰えるらしいぞ?」

「らしいですねー。でも僕ら、目立つの苦手なんで」

「……衆人環視の中で戦うのはちょっと」

そう言うと、グリードジャンキーの一部は『そうだろうな』という顔になり、他の一部は『いまさら?』とでも言いたげな顔になった。

なんだよ、俺達が自分から注目を浴びに行く事は滅多にないぞ。

グリードジャンキーは人数の多い高レベルクランだが、国王チャレンジはガルガンチュアさんを含む数人だけが参戦するらしい。

一応パーティでの挑戦も可能だが、従魔含めて最大四名までという上限はあるらしかった。

「まぁ俺はソロでやるけどな」

「ボスはそうしてください」

「最近のうちのボスはいよいよ台風みたいになってきたから」

ガルガンチュアさんって物理攻撃系だったよな……? どんなだよ。

そんな風に立ち話をしていると、受付の方から聞き覚えのある喋り方の大声が聞こえてきた。

「『国王陛下の来訪腕試し』に挑戦希望である! ゴーレムの使用は問題ないか!?」

……振り向くと、予想通り。身長が飛び抜けてデカいから周りの人々に見上げられている、変装姿のド根性さんが見えた。

「……あいつゴーレムで国王殴る気でいるのかよ」

「怒られたりしないんですかね……」

「でもあっさり許可でてません?」

「マジ?」

受付の返事までは聞こえなかったが、どうやら問題なく許可は下りたらしい。

ド根性さんは満足そうな雰囲気でのしのしと受付を離れ、俺達の姿を見るとヒラヒラと手だけ振って、さっさと会場行きのオーブへと消えて行った。

「あ、森一味別行動なんですか」

「……はい」

「ですね」

参加もそれぞれだから待ち合わせとかもしてないしな。

今のド根性さんで少し注目が集まってきたから、俺達もさっさと会場に入る事にする。

グリードジャンキーの人達と別れてオーブに手を当てると……そこは二つ目の受付のような個室だった。

「冒険者の方ですね。注意事項が数点ありますので御説明します」

注意事項?

近付いて受付NPCに話を聞くと……どうやら騎士団長から来たクエストについての注意喚起のようなものらしかった。

……多分、国王チャレンジの挑戦にレベル制限があるように。このイベントの警備クエストもレベルが高くないと話が来ないんだろう。

だからそれを知らない観戦希望プレイヤーに、『危険な事が起きるかもしれない』という警告だけ出している感じだ。『闘技場だから安心』と思っているプレイヤーが望まない戦闘に巻き込まれないようにっていう措置なのかもしれない。

「……以上になります。事が起きるとすれば国王陛下が消耗した頃になるかと予想されますので、巻き込まれたくない場合は、最後のスペシャルゲストの戦いが始まる前に会場を出れば問題ないかと」

「……はい」

「わかりました」

スペシャルゲスト?

何が来るのかはイベント案内にも書いていないから、その時まで分からない感じか。

注意事項を聞き終えると、再度オーブを使って観客席へと転移した。

開けた視界に広がる、リアルの大きなドームのように広いアリーナ席。このイベント専用の部屋なのか、見たことのない規模の闘技場ルームだ。

その観客席を……まだまばらだが、大勢のヒトが埋めている。

((うわぁ……))

再び念話がシンクロする人口密度。

(これ、敵対組織が大量に乗り込んできたら、マジで乱闘じゃない?)

(だなぁ……)

天井が無い、青空が広がる爽やかな会場で。

俺はまず何よりも……ヒトの密度が薄そうな死角を探して視線を巡らせた。