軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:さっそく思い付きを試してみると

再ログインしました。

ログアウトしてリアルの夕食を取ってから、休日最後の夜のゲームイン。

僕は拠点の自宅の部屋で、色々と材料をインベントリから取り出して、とある準備の真っ最中。

「相棒。僕はラブコメが大好きです」

「はい」

「そして『この二人早くくっついて恋人になって結婚して子供世代の話まで見せてくれないかなー』まで考えちゃうカプ厨でもあります」

「そうでしたね」

「だから理の女神と技術神のラブエピソードを知りたいなぁーと思いました!」

「そっかー……で、何しようとしてるの?」

用意した材料は紙と革。

作業は簡単。内容の書かれていない、真っ白な本を作るだけ。

材料が揃ったら【製本】スキルでチョチョイのチョイ。

「クエストで色んなお話を聞いた時にさ……先生達がさ、なんかちょいちょい『魔法は死んだ』みたいな言い回しするから……死んだんなら、魔法のオバケがいるのかなーと思って」

「……なんて??」

比喩表現だっていうのは分かってるよ?

でも、もしかしたら幻獣みたいに生きてたのかもしれないなーって、 エフォ(EFO) ならワンチャンあるかなーって思いついちゃったから。

「だから、空っぽの本を用意してオバケが住みやすいように整えたら、魔法のオバケが住み着いてくれないかなーって」

「……なるほど? ……で、それとラブコメと何の関係が?」

「魔法のオバケちゃんが来たら当時の神様同士のやりとりとか教えてくれるかもしれないじゃんすか。『自分、こういうやりとりの末に出来たんすよー。その時神様はこんなことあったんすよー』みたいな」

「ああ、そういう……」

そう、そういう魂胆です。

なんなら、その魔法が失われた時の二柱のゴタゴタとかも話を聞ければ、何か出来るかもしれないしね。

あの一連のクエストは……『無詠唱』関係を開放するキークエストでもあったんだろうけど、それと同時に理の女神様と技術神関係のシナリオフック的なクエストでもあったんじゃないかなって思う。

「まぁ他のオバケが来たらそれはそれで、本に来るオバケは面白そうだし。何にもこなかったら普通にノートとして使うよ」

「うん……まぁ試すのはいいんじゃない。好きにしなー」

椅子に座った相棒に生温かい目で見守られながら、僕は作業を続行する。

本の背表紙に、いつものオバケの住処向けの【刻印】セットを書き込んで、表紙と背表紙に『失われた魔法』ってタイトルを入れてみた。

「よし……こんなもんかな?」

「……上手くいくかな?」

「それはやってみないとわからない」

何せ来る相手はランダムだからね!

「じゃあいきまーす! 【住居登録】!」

部屋の中に……ふわりと風が渦巻いた。

オバケが来るときの、いつもの現象。

ただ、今までと違うのは……なんだか少し時間がかかっていること。そして……

突如、色とりどりの布が本からあふれ出すようにして僕を包み込んだ!

「ぅわああっ!?」

「っ!?」

視界が薄布に覆われる。

驚く相棒の姿が、布の向こう側に消える。

何枚も何枚も重ねて、僕を世界から切り離す。

そして一瞬、体がフワリと浮いたような感覚がして……足が地面に戻るのと同時に、パラリと視界を覆う布が解けた。

呆然とする僕は……いつの間にか、知らない場所へと移動している。

さっきまでいた拠点の部屋よりもずっと広い……霧の中みたいに遠くが見えない、果てが分からない空間の中。

床は一面、色とりどりの薄布が海のように波打って……長い長い大きな布は、渦を巻くように僕の視線の先へと渦巻くように収束している。

まるで色相環のような布の根元。

全ての薄布を全身に巻き付けて……覆い隠されるように床へ座り込んでいるのは、1人の女性。

……いや、違う。1人じゃない、一柱だ。

頭の後ろに、魔法陣みたいな後光が浮かんでいる。

それは今日、姿絵で見たばかりの女神様。

大量の薄布をドレスのように体に巻き付けて、さらにストールやヴェールのようにその身を覆い。

長い長い布の裾は、歩くのも困難な程に溢れかえって。

あらゆる色が重なるその姿は、身じろぎする度、森羅万象のようにチラチラと景色を変える。

「……理の女神様?」

「……いかにも」

霧の向こう、遥か彼方から聞こえるような、もしくは分厚い何かで隔てたような、とても聞き取りにくい声で、女神様は僕の問いかけを肯定した。

……そして次の瞬間、真横に突然大きめの質量が現れて僕は飛び上がった!

「わぁああっ!? ……あ、なんだ相棒だ」

「無事? 大丈夫……だな? ……え、神様? ここ指輪で来れるのかよ……」

急に拉致られた僕を心配した相棒が追いかけてきてくれたよ。好き。

嬉しいからとりあえずピトッとくっついて手を繋いでおく。

そんな僕らを、理の女神様は薄布の隙間からポカンとした目でパチパチと瞬きをしながら見ていた。