軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:夜のハトの森で

日が傾いてきたので、俺達は予定通り森の中で野営をする。

……だが、こんなアクティブかつリンクするモンスターがウロウロしている森でキャンプは自殺行為だ。落ち着いて食事もとれない。

とはいえ、俺達にはとりあえずテントを張って食事をとる程度の時間稼ぎに最適な手段はあった。

「【トリック・オア・トリート】!!」

「うわぁ……豆まみれ」

キャンプ地に決めた場所で、キーナが全力で魔法を叫ぶと、周りのハトは皆しょぼくれた。

うん……このビンズポッポは元々こういう仕様なんだろうな。

延々と弾を撃ち続けてくるわけじゃない、弾切れになったらこうやってしばらく襲ってこなくなるタイプの敵なんだろう。

魔法系の敵にMPドレインをしたようなものだ。レベル差があるから余計によく利いた。

周りが静かになった所で、軽く植物を伐採してテントを張り、焚き火を起こす。

……ハト豆が美味いならスープに入れても良かったんだけどな。いまいちらしいから、素直に持ち込みの食材を使おう。

ソーセージと野菜で、コンソメは無いからポトフモドキだ。

「あとは煮込むだけ」

「わーい」

伏せて休むネビュラを背に並んで座り、揺れる焚き火の炎を眺めながらゆっくりとした時間を過ごす。

ベロニカが転がっているハト豆を試しに食べて、「……割と悪くないわね」と言ってツンツンと豆をつついてまわっていた。……そうか、ベロニカは好きなのか。それなら帰ったらおやつ用に炒り豆でも作ろう。

さらに日は落ちて、夕暮れを通り過ぎて夜がやってくる。

赤く照らされていた森は速やかに闇に沈んで、虫の声と風の音、そして木々が風に揺れる葉擦れの演奏が始まった。

「……ポトフそろそろかな」

「いい匂ーい」

煮上がったポトフを器に注いで食べ始める。

時折遠くから『豆がー!』とか『連射しすぎぃー!』とか緊張感のない悲鳴が聞こえてくる。多分、俺達と同じように大神殿を目指しているプレイヤーだろう。

早食い気味の俺は早々に食べ終わってキーナを眺める……と、なんだかキーナがチラチラと後ろを気にしていた。

「どうしたの?」

「ん? んー……ハトがね、弾切れしてるのにずっと近くにいるなーって」

「……ああ」

近くの木を見上げると、戦闘続行不可能にされたビンズポッポがしょぼくれたまま枝に並んで寄り添い、俺達の方を見ていた。

「……戦えないし、俺達を他の敵避けにしてるのかもしれない」

「図太い」

襲ってこないなら、これだけレベル差のあるビンズポッポを狩る理由は俺達には無いからな。

「ハトちゃん、こっち来るかい?」

何を思ったかキーナが声をかけるが、ハトの群れはジトッとした目のままそっと顔を逸らした。

「……さすがに野鳥は火で暖はとらないか」

「……野鳥がどうのの前に、相棒カツアゲした張本人だから」

「なんだよー、先に撃ってきたのはあっちだぞー」

「つまり、相容れない」

「ちぇー」

ダラダラとそんな風に話をしていると……【感知】にいくつかの気配が引っかかる。

キーナに声を出さないようにジェスチャーで伝え、弓を構えて立ち上がる。

近付いて来るのは、草を掻き分け駆けてくる音とヒトの声。

「豆怖い! 豆怖い! 豆怖い!」

「ハト振り切れないよぉー!」

「やっべぇ! ヒトがいる!? すいませんトレインしちゃってますぅー!!」

「キャイン! キャイン!」

ポポポポポポポポポポポポと豆の弾に追い立てられて逃げてきたのは、小人族のパーティだった。

三人揃ってダックスフント似の細長い短足な犬に跨り、犬は死に物狂いの顔で必死に飛んでくるハトから逃げている。

「えっと、助けますかー?」

「わー!? 森夫婦さんだー!?」

「ナンダッテー!?」

「お、お願いしますぅー!!」

「助けてくださいワン!」

「はーい、【トリック・オア・トリート】!!」

散らばる豆。

飛んでいたハトは即座に萎んでやる気を無くし、『やってらんねぇー』と聞こえて来そうな顔でぺしょんと地面に落ちた。

犬と小人達はポカンとした顔で立ち止まり、そんなやる気ゼロになったハトを見つめる。

「えっ……何? 何で?」

「睡眠系……じゃないよな?」

「こんなグレたようなハト初めて見た……」

「ワフン……」

恐る恐る近付いて、ハトをツンツンつつく小人達。

つつかれたハトはウザそうな顔をしてのっそりと立ち上がると……飛びもせず歩いて俺達の焚き火の傍までやって来てふて寝を始めた。

「わー……あ、ありがとうございました」

「助かりました」

「ありがとうですワン」

「あ、そのハト、テイムしていいっすか?」

「先に礼言えよバカ!」

「図々しいよ、おバカ!」

「自重するワン」

コントかな?

別にテイムは好きにしていいと言うと、小人はいそいそとハトに近付いてあっさりとテイムを成功させた。

「やったやった! 地味にテイム大変なビンズポッポゲットだ!」

「ありがてぇ〜、小人には超助かる従魔じゃんすか」

「重ね重ね、ありがとうございました」

「ありがとうですワン!」

何かお礼をと言われたので、犬を撫でさせてもらった。思わぬ収穫だ。

犬と小人達は、少し図々しい1人が「ついでにここでキャンプさせて……」と言いかけたのを「デートの邪魔すんなバカ!」とボコボコにして口を塞ぎ、引き摺るようにして去って行った。

(……ギャグ担当のNPCみたいだったねぇ)

(野生のプレイヤーなんだよなぁ)

じゃないと俺達を森夫婦とは呼ばないからな。