軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:結晶幻獣の住処

大地のダンゴムシ精霊によるショートカットを経て、俺達はダンジョンの奥深い階層へと降り立った。

……どの辺まで来た?

相当な高さを落下したはずだ、有志wikiで確認したダンジョンの最奥に近い所まで来ているんじゃないだろうか。

この『輝石坑道ダンジョン』は一番深い階層で推奨レベル65。

最奥のボスはラージコランダムセンチピード。ボスレベルはパーティにもよるが、大体70台。

防御の高いモンスターが揃い踏みで、金銭効率が良い代わりに経験値効率はどん底に近い。そういう仕様のダンジョンだ。

今の俺達だと……通常モンスターがギリギリくらいか? ボスは多分キツい。

……結晶幻獣の住処にすぐ入れるといいんだけどな。

分かりやすい石の円があったから、俺達はそこに乗って精霊郷を出た。

とはいえ、精霊郷も元のダンジョンも洞窟だから景色はほとんど変わらなくて出た実感はあんまり無い。

ただ、明らかに微光結晶の隙間の宝石は大粒の物が増えていた。

「わー、なんかパフェみたい。掘り出すの楽しそう」

「結晶幻獣に会った後で掘ってみよう」

「だね!」

今の内にトマト結晶のアクセサリーを着けておくか……

結晶幻獣と言えば、うちにも結晶の猫幻獣の分け身であるクロがいる。

【石魔法】と同じように、幻獣に宝石を作ってもらう事も出来なくは無いらしいが……【草魔法】で野菜の成長促進をすると品質が劣化するのと同じように、幻獣の分け身が魔法だけで宝石を作ると劣化した安い物しか出来ないらしい。

幻獣に結晶を作ってもらう時は、素材を元にしないと高価な物は作れない。じゃないと結晶幻獣がいるだけで無限に金策が出来てしまうからな。

……つまり結晶幻獣の本体なら、好きに高価な宝石を作り出せるってことでもあるが……記憶の中の結晶の猫幻獣の住処は、ここほど結晶や宝石は多くなかった。

猫幻獣のやる気のなさがわかるな……

そうして結晶幻獣の情報を思い出しながら歩いていると……通路の先が結晶のトンネルになっている所へ出た。

「塞がってる? ……あー、ギリギリ通れるかな? 相棒いける?」

「……まぁ、いける」

巨大な結晶で詰まりかけている通路をなんとか通り抜ける……

すると……目の前に、壮大な結晶の空間が広がった。

「わぁー……」

「……すげーな」

巨大な晶洞の中に立ったような、壁の全面が透明度の高い結晶に囲まれた広い空間。

微光結晶の光を受けて仄かに光る宝石の壁が、自然のままの幻想的な景色を作り出している。

宝石や結晶の種類は雑多で色とりどり。貴金属の欠片もゴロゴロしているから、絵本に分かりやすくかかれた財宝の山のようだ。

そして、空間の中央に…… そ(・) れ(・) はあった。

「え……何アレ? ……黒い骨?」

「……おお。ドラゴンの骨、か?」

それは大きな亡骸だった。

俺達よりもずっと大きな体、その、骨。

太い脚の骨、広い肋骨、背骨から続く長い尾の骨と首の骨、鋭い牙を持つ頭蓋骨、そして……大きく広げる途中のような、翼の骨。

かつて生きていた、大きく立派なドラゴンの名残が……煌めく結晶のドームの中、宝の山の上に鎮座している。

そしてドラゴンの白骨死体は、7割が黒い結晶と化していた。

ただの黒い石じゃない。キラキラと、煌めきを宿した黒い宝石だ。

「……綺麗」

思わず、といった様子でキーナが呟く。

すると、その骨の上から、ぴょこりと半透明の姿が現れた。

「あええー!? な、なんでヒトの子がここに来てるトゲ!? ここの入り口は洞窟と繋いでいないはずトゲェエエ!!」

それは小さなハリネズミの幻獣だった。

それにしても、語尾。

なんで エフォ(EFO) は鳴き声だの語尾だのが安直なんだ……

慌てて転がり落ちて来たハリネズミ幻獣は、俺達の前までスササーッと駆け寄ると、小さな腕を目一杯広げて『立入禁止』の意を示した。

「ここはダメトゲー! 製作中なの! ダメダメー!」

「製作中?」

「そぅ! ハリネズミ幻獣はお仕事きちんとしたから! 今はめくるめくご褒美タイムなのトゲ!」

「褒美とはなんぞ?」

「むぁー! 死の狼精霊トゲ!? ぐ、ぬぬ……ハ、ハリネズミ幻獣は迫力には屈しないトゲ! ご褒美はもちろんドラゴン様の亡骸を結晶にする事トゲー!」

……ああ、つまりあれは、元は普通の白骨死体だったのか。それをせっせと結晶に作り変えている、と。

「へぇー、アレ綺麗だもんね」

「お、話の分かるヒトの子トゲねぇ! ハリネズミ幻獣は静かに作業がしたい派だから、作業場のここは立入禁止なの! トゲ!」

「そっかー」

……まぁ、お楽しみを邪魔して不興を買うこともないな。

俺達の目的とは関係ないし、大きな結晶を何かと交換とかしてもらえないか交渉できれば……

と、思ったその時。

……ガコッ

と、大きな石が動いたような音がした。