軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:油断した!

さてさて、ちょっとお城で状況聞きたいなぁーとなったわけだけど……僕ら側に大した情報が無いのに魔術師団長さんに面会するのは気が引けた。

1人、敵っぽいやつの名前と容姿は分かったけどねぇ……それだけでわざわざトップに時間取らせるのもちょっと大げさかなって。

いつもはほら、急いだ方が良さげな情報かも? って思ったからトップに直通してただけだし。

今回は写真があるわけでもないから、確実な人相が伝わるわけでもなくて、指名手配なんかも出来ないだろうし。

なので僕らは、お城の門番さんに軽く訊いてみる事にした。

その上で誰かが対応してくれたら、その人は担当者だろうから、敵っぽいやつの名前を伝えればいいかなって。

「そのくらいなら……ログアウト前の残り時間でも大丈夫かな?」

「まぁいけるんじゃない?」

って事で、ゲーム内はもうすぐ夕方だけど、今日の内に二人で行く事に。

変装して、ネビュラは拠点に残して、転移オーブからピリオノートへ、そしてお城へ。

夕暮れが近いお城周りは、時間帯的なものか、ヒトの出入りがまったく無かった。

お城の門には門番さんが二人、門の左右に立っている。

門番さんはいつも二人一組だけど、たぶん交代で色んなヒトがやってると思う。小勲章の確認をしてくれるヒト、何回か違う顔だった気がするし。

今日の門番さん達は、珍しくフルフェイスの兜を被っていて顔は分からなかったけどね。

「すみませーん」

「はい、どうされましたか?」

「最近ちらほら発生している誘拐事件の事で、お城の方で把握していて公開出来る情報があれば聞きたいなーと思いまして」

「ふむ」

とりあえず夢で見た事は置いておいて、聞ける事があるかだけ確認してみる。

門番さんが反対側の門番さんと目配せして頷き合うと、反対側の門番さんは詰め所っぽい場所の扉を開いた。

中から、もう1人フルフェイス兜の兵士さんが出てきて何か一言二言話してから、僕らに声をかけてくる。

「簡単な内容になりますが、こちらでお話しますので、どうぞ」

「ありがとうございます」

うんうん、とりあえずザックリで良いからすぐに聞けそうで助かる。

相棒と二人、手招きする兵士さんの後について詰め所に入った。

中はそんなに広くない休憩所みたいな部屋。

壁際には色々な物が置かれた棚、部屋の真ん中にはテーブルと椅子が四脚。

でも兵士さんはそこをスルーして、もうひとつ奥の扉に僕らを誘導した。

「どうぞ」

聴取する部屋みたいなのが奥にあるのかな?

扉を開けてくれたから、そこに相棒と一緒に入った。

……あれ? 狭い?

てか、ここって物置では?

疑問に思った途端、視界が液体に包まれた。

「んぐっ!? ゴボッ!」

「っ!?」

え、何? 何!?

咄嗟に動かした手足も液体に沈んだような感触がして……僕の意識が保ったのはそこまでだった。

* * *

「……やられたぁー!」

はい、起きたけど、たぶん起きてません。

意識が戻ったら、なんか球状の緑色の液体の中の空間にいます。

夢だねぇ!

これアレだぁ! 悪役が後ろからこっそりなんかして意識を奪われて捕まった展開だぁ!!

「そうだよね……高位貴族の手引きがあった可能性が云々って話がちょいちょいあったもんね? つまり城の兵士に内通者がいてもおかしくないんだ、うわー」

これは僕らの凡ミスよぉ!

警戒するなら魔術師団長さんに直通しないといけなかったんだー!

しかもフルフェイス兜だったから、内通者の顔情報も出ないじゃん!!

もぉー! やっちゃったよもぉー!

……まぁ1人でうだうだ嘆いてても仕方ない。

たぶん相棒も同じ状態だと思うから、ちょっと試しに呼んでみましょうかね。

「【ドリームクリエイト】」

スキルレベルが低いからダメ元だったけど、それなりのMPを消費すればいける範囲だったらしい。

すぐ真横にグワッと空間が口を開けて……その向こうに、同じような緑色の液体に囲まれた空間と、こっちを振り向いた相棒が見えた。

「ハーイ」

「えぇ……? ああ、【夢魔法】か……さっそく出番だったわけだ」

「うむ」

相棒がよっこらせとこっちにやって来ようとしたけど……穴を潜ろうとすると周りの緑色の液体に引っ張られて無理だった。強制睡眠の原因をどうにかしてからじゃないとダメなのかな?

まぁ仕方ない、とりあえずこのまま話す事にする。

「やられたねぇ」

「やられたな……普通のNPCのフリをされると【感知】が反応しないらしい」

「ありゃ、そうだったんだ? 星座エリアに向かうダンジョンの、浮かんでる岩みたいな?」

「……うん、擬態してたって意味では同じ。で、たぶん睡眠薬系の液体で包み込む感じの魔道具を使われた。相棒はあっという間に落ちたけど、俺はそこそこ保ったし」

「あー、肉体デバフなら強靭の低い僕は確かに即落ちだわ~」

「……霊体化してたら回避出来てたかもしれないな」

「あっ」

ほんまや!

ビックリして何がなんだか分かんない内に意識が落ちたから、気付く暇も無かった!

……まぁ仕方ないね。

「……今、夢モードに切り替わったのは、【夢魔法】を覚えたからかな?」

「多分そうじゃないか? 前にキノコの胞子で意識が落ちた時はこんな夢見なかった……【夢魔法】持ちは、睡眠デバフ食らっても、夢を踏み台にして起床出来るって事かもしれない」

「おおー」

なるほど、強靭ステータスとは違った形の睡眠デバフ対策になるんだね。

1回眠りには落ちちゃうけど、自力で復帰出来るのは良いかも。

「今回は……この周りの水をどうにかしたら起きるかな?」

「だと思う。眠らされた水と同じ色してるし。……ただ」

「うん、ただ……ね」

「「もうログアウトしないと」」

すぐ済むだろうと思ったのが完全に裏目に出たよね!

明日もお仕事! 休日なら夜更かしも考えたけど、お仕事なんです!

「落ちても大丈夫だと思う?」

「……どうかな?」

「……ちょっと訊いてみよっか」

「誰に?」

「ヘルプに」

システムウィンドウからヘルプ機能を選択。

夢の中だからチャットがダメでもね、ヘルプ機能はどんな状況でも使えるんです、ヘルプだから。

『御利用ありがとうございます。ヘルプAIが対応いたします。御要件をどうぞ』

「えっと……今、敵に捕まってる真っ最中だと思うんですけど、リアル都合でそろそろログアウトしないといけないんですが、大丈夫ですか? イベント飛んじゃったりしますか?」

『他プレイヤーの行動により状況が動いた場合はその限りではありませんが、基本的にプレイヤーがログイン後にイベントが進みますのでご安心ください。全てのNPCはプレイヤーの事を、『復活が可能な代わりに定期的な長期安息が必要』と認識していますので、ログアウトにより言動に齟齬が発生する事もありません。システム的にプレイヤーはログアウトすると非表示になりますが、NPCは『そこに体があり安息中である』と認識します。』

「誘拐されて移動中とかでも大丈夫です?」

『問題ありません。他プレイヤーの影響が無ければ、イベントは次回ログイン時に、違和感の無いような状態から続きが再開されます』

ふむふむ、他のプレイヤーがなんやかんやした影響で変化する場合があるから、出来れば通しで遊んだ方が確実だけど、途中ログアウトも問題無いような扱いはしてくれるんだね。

「大丈夫そうだね」

「うん」

「ありがとうございます。安心してログアウトします」

『ご丁寧にありがとうございます。今後ともEndless Field Onlineをよろしくお願いいたします』

「……よし、じゃあ落ちよっか!」

「だな」

続きはまた明日ね!