作品タイトル不明
キ:ゆっくり探索散歩の時間
今日の僕は、拠点のあるフィールドを、箒に乗って空の散歩。
うん、魔女のお出かけって感じ。
のほほんと飛んでいると、箒の中からフッシーが声をかけてきた。
「して主よ、今日は何処へ向かっておるのだ?」
「前にチラッと見たキノコ島」
「おお、『夢啜りの茸の林』か」
そうそう、それそれ。
MPもそれなりに成長したから箒でぷかぷか飛びたかったのもあるけど、どうせなら知らない場所の探索もしたいなーと思ってさ。
位置的にはツーパンベアとモモンガちゃんがいる揺り籠の木の島よりは手前だから、今の僕なら割と気楽に探索出来るかなーって。
相棒は買った瓶詰を被るのいまいち気が乗らないみたいだから、僕だけで様子見でもしてこようかなって思ったわけよ。
何にも無かったら別にわざわざ行く必要も無いしね。
そんなわけで、今日の僕のオバケ面子は、フッシーとネモ、そしてキノコにも詳しいかもと思ってコダマ爺ちゃんを連れてきました。
紫色の海の上を飛んで、モヤッと煙に包まれたような胞子まみれのキノコ島が見えてくる。
うぅ~ん、浜辺まで胞子がモクモクしてるねぇ〜。
確か、山のてっぺんに着地した時はなんともなかったけど……端っこから少しずつ見たいからなぁ……うん、さっさと霊体化して砂浜に降りよう。
霊体化して浮遊、からの、箒の飛行を解除。
砂浜に着地。
……うん、霊体化状態なら胞子は影響無し。
ただ、日光がチクチクとHPを削ってくるから、ネモに盾と日除けを兼ねた半透明のヴェールになってもらった。
スッポリ全身を覆う黒く透けるネモヴェールをシーツオバケみたいに被る。
日除け効果が常時発動してる状態だから、ジリジリとMPが減っていくね。時々ポーション飲んで補給しなきゃ。
さて、目の前には巨大なキノコがニョキニョキ生えているキノコの森。
「……足元もキノコまみれで歩きにくそうだから、飛んだ方が良さげかな」
この格好で浮かんで飛ぶのは紛れもなくオバケだね。
まぁキノコの森は胞子こそすごいけど、別に暗いわけじゃないからホラー感は無いよ。怖くはない。
では、レッツ探索。突撃〜!
* * *
うぅ~ん、キノコしか見えない。
色とりどりの花ならぬ、色とりどりのキノコ100%で構成されている森は、当たり前だけど何処へ行っても視界がキノコ100%。
生息しているのも四つ足キノコとか動くキノコっていう念の入れよう。
素材になりそうなキノコもあるけど……ちょっとここのキノコは、お持ち帰りするの少し怖いんだよね。繁殖力強そうで。
拠点が気付いたらキノコに制圧されてたーとかイヤだし。
んー、何か面白いもの無いかなぁー。
なんて思っていた時だった。
「……あ、カタツムリだ」
半透明の……スクーターくらいの大きさで、色はドギツいエメラルドグリーンをしたカタツムリが、大きなキノコの上に乗っていた。
透けてるって事は、夢の幻獣かな?
トマト結晶のアクセサリーを装備して、会話を試みてみよう。
「こんにちはー」
「……おや、死んでいなさる……海は、よろしいので?」
「半分生きてるから大丈夫」
「それはそれは……」
カタツムリは、低くてしゃがれた声がした。
「……何か……御用で?」
「んー、特に? 何か面白いものが無いかなーって探索してる所でキノコじゃない姿を見かけたから、声をかけてみました」
「それはそれは……」
カタツムリは、しばらく沈黙した。
目のある触覚がピロピロ動いて、何か考えてるみたいだから少し待ってみる。
キノコの森はすごく静かで、カタツムリもすごく静かだった。
「……この島は……キノコでして…………つまり、あるのは……キノコなのです」
「うん。キノコだねぇ」
「……どうぞ」
……???
「ごめん、何もわかんない」
「それはそれは……」
カタツムリは、また触覚をピロピロしながら少し沈黙した。
「……夢は、面白いですね?」
「うん。楽しい夢は好き」
「……ここの、キノコは……夢で伸びます……」
「うん、『夢啜りの茸の林』だもんね」
「……つまり……食すと、夢が伸びます」
「うん?」
「……どうぞ」
やべぇ、わからん。
AIどうなってるんだろう……こんなにわからんことある?
まぁでも……キノコを食べれば何かが起きるって事はわかった。
「どのキノコでもいいの?」
「……この、キノコですな」
カタツムリ幻獣が示したのは、カタツムリ幻獣が乗っているキノコ。
「オバケが食べても効果ある?」
「はい……夢は、魂の……根の先なので」
じゃあおひとつ……大きなキノコの端っこをむしり取って、ひとくち食べた。
あ、そういえば生食だけど大丈夫かな……まぁゲームだし、いいか……もう食べちゃったし……
──【夢魔法】スキル取得
「待って???」
「……なにか?」
「【夢魔法】覚えたよ!?」
「はい……食して、夢が伸びましたな」
「あ、そういう!?」
スキルが生えるって意味だったの!?
立地と会話の不便さで地味に取得難易度が高くなってるよこの魔法!
「え、【夢魔法】って何が出来るの?」
「……夢は……夢ですな」
「……うん」
「……夢を、使いますな……」
「うん……」
「…………」
「あ、それで終わり!?」
「……夢は……夢ですな……」
まさかの『詳しくは君の目で確かめろ』スタイル!?
僕が動揺していると、カタツムリ幻獣はゆっ……くりとした速度で移動を始めた。
「……夢は……夢ですな……御案内しましょう」
「あ、はい」
つまり『【夢魔法】の練習が出来る所があるから、ついてこい』って事だと思う……たぶん。
そういう事なら、ついていく事にする。
……あまりにもゆったりとした速度のカタツムリ幻獣に、僕はのんびりと休憩しながらついていったのだった。