軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:行きはよいよい、帰りは……

僕のおみくじは大凶だったけど、まぁそれもひとつの思い出だよ。厄落とししたから問題無し。

神社は普通に楽しかった。

「さて、どうしよっか。あんまり混んでなければ港とかもお散歩したかったけど」

「だな。様子見てみるか? 人混みがほどほどなら観光続行で」

「オッケー」

じゃあ神社から歩いて戻ろうか。

街中がイベント中みたいに混雑してたら、さっさと帰ろう。

いつも通り手をつないで、二の鳥居をくぐり再び竹林の道を歩く。

神社なんて分かりやすい観光スポット、ヒトが増えたら速やかに混みそうなもんだけど。灯籠が並ぶ道を歩いていても、特に誰かとすれ違ったりはしない。

静かで落ち着いた竹の間の道。

……なんて呑気に思っていたら、なんだか様子が変わってきた。

「……なんか、景色が夕方になってきてない? そんなに経ったっけ?」

「いや、そろそろゲーム内の昼食の時間」

あれー?

竹の隙間から射し込む夕日の方を見ても、特に太陽の他に光源がある感じはしない。

「なんかイベントかな?」

「かもしれない」

隣の相棒が、僕と繋いでいない方の右手で、外套の中で後ろ手に腰の短剣を掴む。

装備を変える程じゃないけど、一応警戒している感じ。カッコいい。

僕も袖の奥に蛇杖は着けてるからね。魔法で対応は出来るはず……たぶん。

……そんな希望的観測を浮かべていると、さらにおかしな早さで日が落ちて、灯籠が勝手に灯り始めた。

「……相棒、これってもしかしてホラーだったりするかなぁ?」

「……どうかな?」

他のヒトが誰もいないのも余計に雰囲気がある。

相棒がいるから大丈夫だけど、ひとりだったら間違いなく逃げ帰ってる展開だよ!

テラテラと揺れる蝋燭の炎に照らされた竹林の道。

ずっと遠くで、さっきまでは無かった鈴の音が聞こえる気がする。

そのまま進んで、真っ赤な一の鳥居をくぐった。

……すると。

「相棒! 相棒! これってホラーかなぁ!?」

「かもしれないなぁ」

そこには……とっぷりと日が落ちた真夜中の街並みが広がっていた。

「どうしてっ……!」

「悲しいね」

鳥居を抜けた先は真っ昼間のはずなのに日が暮れていましたとかホラーのド定番じゃないですかー! やだー!

おみくじはちゃんと厄落とししたし、他はそんな変なフラグ踏んだつもりは……あっ!?

「ねぇ……これって、僕がお参りした時にお願いした『面白いモノとの出会い』に入ると思う?」

「……あぁ、確かにタイミング的にはそれがトリガーの可能性は高いかもしれない」

ゲーマスAIさーん!? 僕はホラーが苦手なんですけどぉー!?

うろたえていると、ザリッと暗がりの中から足音がした。

喉から「ヒェッ」と声が出て、体が無意識に相棒の服の袖を握りしめてしまう。

足音は徐々に徐々に近付いてきて……その正体が、灯籠の灯りに照らし出された。

「あれあれあれまぁ、ヒトの子? うん、ヒトの子だぁ」

やってきて不思議そうに僕らを見上げているのは、フサフサの毛並みがかわいくてまんまるとしている、頭に葉っぱを乗せた二足歩行のタヌキだった。

「可愛い!!」

「えっ、ええーっ!? そ、そんなぁ可愛いだなんてぇ……ヒトの子は褒め上手なんだなぁ」

テレテレとくねくねしながら頭をかくタヌキちゃん。

ギャンかわ。

「……大丈夫そう?」

「可愛いからオッケー!」

「それはよかった」

苦笑いする相棒に、僕は自信をもって頷いて見せた。

ホラー展開でタヌキだったら十中八九妖怪とかの流れなんだろうけど、可愛いなら大丈夫です!!

* * *

タヌキちゃんに案内されて、僕らはランタン片手に夜闇に沈んだ街を歩いた。

「ここは表の都に作った裏側、『月夜桜の都』なんだぁ」

「……作った、って事は作った存在がいるのか?」

「アヤカシの大親分が作ってくれたんだぁ」

城を含めて、建物の配置はさっきまでいた街とまったく同じ。

ただ真夜中で、そして住人がアヤカシしかいない。

そして最大の違いは、街のあちこちに植えてある桜の木が、表は冬だから花も葉もついていなかったけれど、こっちはうっすら青白く光る花が満開になっている事。

幻想的で綺麗だねぇ。

怖いものが脅かしてこないなら、こういう景色は大好物です。

「みんなぁ〜、ヒトの子が来たんだなぁ〜」

タヌキちゃんが連れてきてくれたのは、タヌキちゃんと仲の良いアヤカシの溜まり場。

青白い焚き火を囲んでいるのは、とぼけた顔のついた布とか、愛嬌のある顔の提灯とか、つぶらな瞳の家より大きな半透明の影とか、かわいい感じのアヤカシ達。

アヤカシ達は僕らが挨拶すると、「へぇ~」って感じに片手を上げて挨拶を返してくれた。

「これはこれは」

「珍しいね?」

「ヒトの子……ヒトの子だよね?」

「……うん、半分くらいはちゃんとヒトの子だ」

「もう半分くらいが……オバケだったり……精霊だったりしているね?」

「うんうん、それならここへ来やすくなるのも道理」

「オバケや精霊幻獣は我々にやや近いモノだからねぇ」

へぇ~、なるほど種族的にここに来やすい状態だった、と。

でも、どうやらそれだけでもなかったようで。

「我々アヤカシはねぇ、ヒトの噂話や物語から生まれる存在なのだねぇ」

「存在しない、カタチの無い架空や幻想に命が宿って生まれたモノ」

「こっちの世界は我々のような存在が生きやすそうだから、つい最近来ちゃったの」

「なるほど、確かにこっちは生誕の神様パワーでアヤカシちゃん達は生まれやすそう」

「そうでしょうそうでしょう?」

「こちらは今までヒトの子がいなかったからか、『語り継がれる』という部分がほぼほぼ空白だったのでねぇ」

「我らアヤカシは、これ幸いとそこに収まりました次第」

そう言うと、アヤカシちゃん達は僕らをじっくりジロジロと観察した。

「あなた方も、さぞ名のある存在とお見受けします」

「有名、噂の的、うらやましいねぇ」

「アヤカシは知名度の高さこそ強さであるからして、あなた方もアヤカシならば、さぞお強い力を持てるでしょうに」

「口の端に登る数がそれだけ多ければ、そりゃあここへの道も開きやすくなるというもの」

「むしろ大歓迎」

はーん、なるほど?

僕ら、森夫婦としてはそこそこ有名になっちゃってるからね。

アヤカシちゃん達いわく、噂をするのはプレイヤーでもNPCでも構わないみたいだから、その辺の知名度効果でさらにここへ来やすくなっていた、と。

「もっと言うなら、そちらの貴女」

「僕?」

「はい。貴女、ここに……というか、おかしなモノに会いたいと神社で願ったりしませんでした?」

「願いの名残がありますねぇ」

「あの神社が一応ここの正式な入り口なんだぁ」

「お二人のような名のある我々寄りの存在が、神社で願えば直行ですとも」

「……ああ、はい」

「直行だったかぁー」

すごい、複数条件揃えてる上で、綺麗に開門スイッチ踏み抜いてたんだね僕達。