軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:通りすがりのコマドリさん。

バレンタインダンジョンのハードモードも堪能して、チョコレート素材もたっぷりで僕らは大満足。

「ハードモードも面白かったね」

「うん」

スパイシーモードは、狩り慣れたモンスターじゃなくて、まだ会った事のない初見モンスターがチョコレートの姿で出てくるコースだった。

何してくるか分からない相手だから難易度高めって事だね。

周回するならスイートモードの方が慣れてて楽。飽きたらスパイシーモードで初見モンスターと戦える。そんなダンジョン。

「木のドラゴンみたいなのカッコ良カッタ!」

「シュラブドラゴンか……出るって事はどこかにいるんだろうな」

「やたら蹴りの強い輩が強敵でしたナ」

「いたなカンガルーみたいなやつ」

「大きな花もいましたね」

「フルカラーフレシアだっけ、ホワイトチョコだったから真っ白なのが残念だったね」

「……印象がチョコレート工場じゃなく動物園だな」

「確かに!」

休憩ついでに素材の粒チョコを板チョコに圧縮して、皆で味見もしてみた。

素材のままでも美味しいチョコレートだった。

ジャック達も美味しいって喜んで食べてたから、今後もチョコレートを見かけたらお土産にしてもいいかも。

そしてどうせならバフは欲しいから、これも休憩時間でためしにイベントレシピのプレゼントチョコを作ってみた。

【チョコット印のプレゼントチョコ】…コラボイベントアイテム

チョコットファクトリーが自信を持って提供する、バレンタインプレゼント用の美味しいチョコレート。

甘くとろける香ばしいチョコレートが、ハート型の箱に詰められている。

これが普通のチョコレート。

……そして、甘い物が苦手な人向けのイベントレシピ品がこちら。

【チョコット印のプレゼントカレー】…コラボイベントアイテム

チョコットファクトリーがかつて提供していた美味しいカレーを固めた物。

見た目はどう見てもカレールゥだが、このまま食べられる。

「なんでカレー??」

「……掲示板によれば、チョコレートが隠し味のカレーを売ってた事がある、らしい」

「へぇ〜……」

だからって材料がチョコレート100%なのにカレーが出来るのはどういう事なの。

「……ま、いいか。ゲームだし」

「うん……普通にイケる」

「もう食べてる!」

クエストに提出するアイテムはチョコレートの方じゃないとダメだけど、投票はチョコレートでもカレーでもどっちでもいいんだって。

* * *

ダンジョンを満喫して、ちょうどゲーム内では昼食時。

せっかくだからダンジョン周りの露店でお昼にしようかということで、声変わりシロップを飲んで外に出る。

すると……

「あらぁ? 森夫婦さん、お久しぶりですぅ、絶対聖母コマドリですぅ」

聞き覚えのある間延びした語尾の声。

振り返るとそこには……ヒランヒランのワンピースを着ている鳥獣人の、絶対聖母コマドリさんがいた。

「あ、どうもー」

「……お久しぶりです」

「ウフフ、お二人はダンジョンでチョコレート狩りですかぁ?」

コクリと頷くと、コマドリさんは微笑んでウンウンと頷いた。

「仲が良くて素晴らしいですぅ。もしチョコレートが大漁でしたらぁ、良ければおひとつ、コマドリに友チョコとして投票して頂けると嬉しいですぅ」

投票?

コマドリさんが指す先を見ると……そこには、例のチョコレート人気投票のプレイヤー立候補枠の投票箱コーナーに、絶対聖母コマドリさんの投票箱があった。

「……立候補したんですか?」

「したんですぅ」

このチョコレート人気投票、他薦だとエントリーはされない。

つまりここに並んでいるのは、自ら進んでV配信者に勝負を仕掛けたメンタル猛者って事になる。

「ウフフ、バレンタインイベントにゲスト出演している配信者お二人の戦いが、普段どんな様子かご存知ですかぁ?」

「……いえ」

「知らないですー」

「あのお二人はですねぇ、色んな場面やゲームで勝負を始めるんですけどぉ、いつも別の誰かに2人揃って追い抜かれて慌てて三つ巴になるのが様式美らしいんですよぉ」

「「えぇ~」」

そういう流れでファンが喜んじゃったから、ファンの喜ぶ声にお応えし続けてこんな様式美になってしまったのだそうで。

「今回その役はメン子さんだと思うんですけどぉ、メン子さんって エフォ(EFO) 内では長距離航海の真っ最中でピリオに戻れないみたいなんですねぇ」

「だ・か・ら」とコマドリさんは語尾にハートマークがついてそうな声色でニッコリと笑った。

「もしもコマドリがトップ争いに入れたらぁ、あのお二人に遊んでいただけるのかなぁと思いましてぇ」

わぁ……強い、メンタルが強すぎる。

「……過激ファンに粘着されません?」

「 エフォ(EFO) はAI検閲が優秀ですからぁ、あるとすればコマドリがよく遊びに行く闘技場凸だと思うんですよねぇ。それこそコマドリを倒せるくらいの強者が来るのならぁ、望む所なのでぇ」

あ、ある意味凸待ちだコマドリさん。

コマドリさんの近くにいたプレイヤーっぽい人達はクランメンバーなのかな? 一緒にウンウンと頷いている。

「「……強い」」

「はい、コマドリはとっても強いんですよぉ?」

……まぁ、そういう事なら。

ニコニコと笑うコマドリさんに友チョコということで、さっき試作したプレゼントチョコを投票箱に少し入れた。

……そうしたら、周りで話が聞こえていた他のプレイヤー達も『そういう事なら』みたいなノリでチョコレートを入れ始めた。

「ありがとうございますぅ。お礼になでなでして差し上げましょうかぁ?」

「「いえ、間に合ってます」」

「ウフフフ、知ってますぅ」

そう言いながらコマドリさんは、クランメンバーっぽい人の頭をなでなでしていた。

クランメンバーっぽい人は恍惚とした顔で撫でられていた。

……強い。