軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:辿り着いた天蓋にて。

【グラビティ・シャード】…品質★★★

天に浮かぶ星の力を秘めた結晶の欠片。

「これだろ」

「これっぽいね〜」

「うむ! ラージのドロップもコレの量が増えただけであった! 量を集めて結晶にしてみるのが良いのではないか!!」

「っしゃー! 脱ホームレスへの第一歩ッスー!」

倒して得られたドロップの結晶片は、下に落ちずに浮かんでいたから、おそらくは目当ての仕様の素材だと思う。

……と、いう事が分かった所で、俺達はひとまずダンジョンを突破してみる事になった。

一度休憩を挟もうにも、この場所だと休めない人が1名いるしな……この難易度なら行けそうだし、ダンジョンは奥の方が素材採取には良い。だから奥まで行って、そこから逆走しながらグラビティコアを張り倒す。そういう方針だ。

グラビティコアを無視するなら、定期的に突っ込んで来るコウモリと蛍を殲滅しながら駆け上がるだけだ。

上へ上へと進んで……俺達は、明らかに門のように配置されていた岩の輪を上へ潜り抜けた。

* * *

岩の輪を潜ると……そこは明らかにさっきまでとは違う空間だった。

晴れた星空へと登っていたはずだが、ここには立つことが出来る足場がある。

けれど足場は紺色1色で、登ってきたダンジョンや遥か下の地面は見えない。足で踏むと、ほんのりとその部分が淡く光る。……アルネブさんがホッと息を吐き、ダディに礼を言って降りたくらいには現実感の無い見た目だった。

空間もおかしい。

重力が弱い演出なのか、少し歩くだけで体がふわりと軽く浮かぶ。

だが見上げた空は……変わらない一面の星空だ。

景色にしばし圧倒されていると……道中アルネブさんにくっついていた星のクロツグミ幻獣が、「キュルルッ」と鳴いて羽ばたいた。

「着いた、天蓋。星の座。ヒトの子、辿り着いた。……これで、いい?」

──「ああ」

響くような声が、クロツグミ幻獣の視線の先、俺達の背後から聞こえた。

全員、振り返る。

そこには……複雑な模様が入った光の輪を頭の後ろに背負った半透明の若い男がいた。

動きやすそうな軽鎧に使い込まれたマントを羽織った旅装のような姿は、後光の荘厳さとは裏腹に庶民的だ。腰の長剣も、華美な装飾は無い実用一辺倒な物。

「え、まさか……開拓神!?」

驚いたカステラさんの声に、男は……開拓神は不敵に笑って応えた。

──「ヒトの子が辿り着けば、そこは未踏の地からヒトの領域へと移行する」

俺達を通り過ぎて、開拓神は前に出る。

──「そうして我は力を得る。そこを我らの物にする」

そう、誇らしげに宣言した開拓神は、腰の剣をスラリと抜いた。

……と、同時に、もう2人の神がさらに俺達の後ろから前へ出る。

──「よく見ておくがいい、星の幻獣よ」

──「ヒトの子は、星に絵姿を見出し、星に物語を見出すモノ」

──「さぁ、星の座の開拓だ」

開拓神が剣を天へと掲げる。

……すると、その姿が輪郭線のようになって、星空へと焼きついた。

開拓神の姿の骨組みを描くように、絵姿に重なる星が光の線で繋がれる……星座だ。

剣を掲げた姿の、その剣の切っ先部分で、ひときわ明るい星が強く輝いている。

後から現れた二神……豊穣神と技術神もそれに続く。

開拓神の剣の星を中心に、三柱が並んだ。

そして、それを皮切りに星空に大量の絵が描かれた。

様々な職業のような人物の姿。

道具や武器の姿。

生き物の姿。

異世界だという演出なのか、リアルの星座と同じ物は見当たらない。

「すごい! すごい! 星、変わった! 星に、灯りに、名前、ついた! 姿、得た! 地上と、星と、繋がった!」

歓喜の声を上げながら、クロツグミ幻獣が星空の下を飛び回る。

「星、それに応えよう! 命の、欠片の、光。命と、共に、輝こう。命へ、輝き、返そう。星は、そう成った!」

──《特殊区域『天蓋の星の座』への、プレイヤーの到達を確認しました》

──《これにより星座による強化要素が開放されます》

──《詳しくは、星の研究をしているピリオノートNPCより説明を聞く事が可能です》

クロツグミ幻獣の言葉を肯定するように流れたアナウンス。

それを聞いた俺達は……お互いを見て首を傾げ、頷きあって、それがワールドアナウンスだろうと確信した。

「変装しておいてよかったッスね」

「それな」

「これは間違いなくムービーになるであろう!」

「……でしょうね」

「掲示板騒いでるんだろーなー」

危ねーという雰囲気になる俺達。

対してキーナとアルネブさんとラウラさんは……メルヘン好きが多いからか、キャッキャと楽しそうにはしゃいでいた。

「せ、星座は エフォ(EFO) オリジナルなんですね」

「黄道十二宮とかあるのかな?」

「どうかしら……でもあれば【占術】で使えそうよね」

そして一番はしゃいでいたクロツグミ幻獣が、アルネブさんの前へやってくる。

「星の力、得て、育てた、ヒトの子。充分な、力。天蓋、なら、体、作り変え、出来る。作り変えれば、星の力、より強く、受けられる。どう、する?」

……【星魔法】のレベルをある程度上げて、ここに辿り着いたらなれる種族があるって事か。

アルネブさんは、特に悩みもしなかった。

「あら、楽しそうね。じゃあお願いするわ」

「キュルルッ」

星の幻獣が鳴くと、アルネブさんの周りに星のような光が集まりだす。

それは額の辺りに収束して……そしてアルネブさんの体を光の輪が包んだ。

そして光が消える……特にパッと見変わった所は見当たらないが。

「……なるほどね」

「し、新種族ッスか!?」

「ええ。『アストラル・アイ』ですって。【星魔法】関係で特典がつく、額に第三の目がつく種族よ」

なるほど……今は変装状態で仮面を被ってるからな。額の目なんて見えるわけがなかった。

「戻ったら見せてあげるわ」

「おー」

「じゃあもうUターンする? ……帰りは下りながらグラビティコア狩りの予定だけど」

キーナのひと言で現実に引き戻されたアルネブさんは……ピシリと固まって……ふらりとその場に座り込んだ。

「……もう少し休憩させて」

「うん」

「なんなら先に帰っててもいいぞ?」

「いえ、大丈夫……大丈夫よ……威力も見たいものね……フフフ……」

なお、下りは登りよりも地面が視界に入る分、精神への負荷が強かったようだとだけ言っておこう。