軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:生き物入りの瓶詰と

ピクルスや乾物の瓶詰コーナーを通り過ぎると、何やら賑やかな一角があった。

「ヘイヘイお客さーん! よってらっしゃい見てらっしゃい! ここの瓶詰めの中身は妖精だよー!」

「「え」」

人混みを避けようとしていた僕らは、思わずぐりんと振り返った。

そこにはなんと……フェアリーが中に入っている瓶が大量にズラリ!

……えっ、いいの!? それは大丈夫なの!?

ちょっと不安になったのも束の間、相棒がちょいちょいと手で示してくれたのは、並んだ瓶詰の前にある案内板。

『こちらのフェアリー達は、自分で受付をした後で自ら瓶に入ったウケ狙いの方々です。本日限定の展示となります』

(……何してんの!?)

(それでいいのかフェアリー……)

アッハッハと笑い声が上がる人混みの隙間から棚を覗き見ると、瓶の中で楽しそうにお客さんと会話したり、不貞寝していたり、開き直って歌ったりしているフェアリー達がいた。

「なんで同じ事考えるヤツがこんなにいるかなー!?」

「うるせー! こっちのセリフだぁー!」

「ちょっとパロネタ嗜もうとしたらこれだよ」

「オンリーワン狙ったのに10番煎じくらいだった悲しみ」

「「「そーれーなー!」」」

もうノリが掲示板のそれ。

やいやいと盛り上がるフェアリー達に笑いが込み上げる。

(楽しそうで何よりです)

(うん)

生温い気持ちになりながら、僕らは妖精コーナーを後にしたのだった。

* * *

ワイワイしている妖精コーナーの次は、小さな生き物が入った生体コーナー。

暴れる生き物は入れられないから、大人しい子が大きめの瓶にちょっとした環境を整えて入れられている。水槽のペットショップみたい。

「やっぱりお魚が多いかな? たまに虫もいるけど」

「毛玉もいるよ、ほら」

「あ、ほんとだー……なんだろ、ハムスター?」

「さぁ? 寝てるから毛玉にしか見えない」

「丸いねー」

リアルでも馴染みのあるような生き物の合間に、ファンタジーな生き物がたまにいてテンションが上がるね。

「あー待って待ってかわいい! 何この歩く双葉みたいな子!」

「……うん、目の感じが相棒好きなやつだな」

「さすが僕の事わかってるじゃんすか。見てよ、このつぶらな目!」

「黒い点だけで表現される感じのやつな。シマエナガとかマンドラゴラとかスライムと同系統の顔」

「これがいいんですよ」

かわいいじゃん、こういう顔文字みたいな顔。

「ヤバい、双葉ちゃん衝動買いしそう……」

「うん、落ち着いて」

そうだね……それにイベント終わるまで購入出来たか分からないから、テンションのまま購入希望出しても即日連れて帰ったり出来ないもんね。

「オッケー、とりあえず一通り見て……あ、ピュアスライムちゃんだ! ちっちゃーい、かーわいいねぇー」

「……ダメそうだな」

相棒が苦笑いしている気配がする。

だってこんなかわいいコーナーがあるとは思わなかったんだよ!

こっちのイソギンチャクもかわいいし、そっちのペチョンとしたカエルもかわいいし、あっちの何だか分からないプニプニしてる生き物もかわいい。

「……だいたい寝てるかポケーッとしてるかだな」

「ねー、のんびり気質の子ばっかり見られるのは嬉しいかも」

露店広場だと、どうしても強い子とか便利な子が人気だからね。こういうのんびりしたよく分からない子はあんまり見ない気がする。

「……うん、ちょっと購入チャレンジしてみようかな」

「好きにしなー」

気になるのは、歩く双葉こと『ふらふら双葉』と、『ピュアスライム』。

うーん……テイムして育てるならピュアスライムかなぁ〜。

最近関わったから興味があるのと……うちの拠点で好きにさせたらどういう進化するのか気になるんだよね。

オヤスモースライムちゃんは元々牛だったから、ピュアな子がどうなるのかちょっと気になる。

ふらふら双葉ちゃんも気になるけど……あんまり育てるビジョンが僕の中に浮かばないかな? 見た目の好みは双葉ちゃんの方なんだけど。

「……まぁ、必ずしも購入出来るわけじゃないしね」

「それな」

金額の見えない購入希望が通らないと話にならないのだ。

とりあえず、1番近くの用紙置き場へ行って、ペンを借りて名前を書いた。

そして、記入する金額で手が止まった。

「……いくらくらいだと思う?」

「……ここは露店とかとは相場違うだろうからなぁ……」

いくらにすればいいか全然わかんないや。

「……いくらまでなら出せるかで考えたら?」

「えー……共有のお財布から僕いくらまで使っていい?」

「……自由になるリリーを全額は流石に多くないか?」

ゲーム内通貨だと僕の財布の紐は旅に出ますよ。リアルのお財布に影響出ないならって前提はつくけど。

「んんんー……じゃあ5万リリーとかにしてみよう」

「まぁいいんじゃない」

「ちなみに露店だとどのくらい?」

「さぁ? ピュアスライムは相場サイトとかでも見たことない」

「そっかー」

ま、なるようになーあれ。

僕は書き込んだ用紙を、ピュアスライムちゃんの横の箱にポトンと入れた。