軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:色とりどりの瓶詰と

好奇心のままグイグイ来ようとしていた野次馬は、気付いていないキーナの後ろで牽制するように顔を向けてやれば、それ以上は近付いて来なかった。

……まったく、どうせすぐに展示されるんだから待っててくれ。

無事に瓶詰を渡したら、拠点に戻って着替えて、もう一度サウストランクへ。

ウキウキのキーナと手を繋いで、今度は正面から会場に入る。

ユーザーイベントだからか、秋イベントの開始時のような混み合い方はしていない。

入ると小さなスペースがあって、そこで係員からパンフレットと投票券を1人3枚渡された。

パンフレットは展示会の趣旨と、会場内における瓶詰の配置の目安が書かれていた。

提出された瓶詰を、来た順に端から並べているわけではないらしい。

物によっては見る人を選ぶから、そういう物は少し奥まった所に置かれていたり、後は素材系・消耗品系・芸術インテリア系といった感じで、明確ではなくてもある程度区分けしていたりするようだ。

先へ進んで、賑やかな広い空間に入る。

吹き抜けになっていて天井が高いホールは、一歩入ると、まずは目の前に巨大な瓶が待ち構えていた。

「わぁー」

「でかっ」

水に満たされた大瓶の中で小さな魚が泳いでいる。

ホールは窓にカーテンがかけられているが、【光魔法】の魔道具か何かで照らされているから光源には不自由しない。

小魚はその光を反射してキラキラと煌めいていた。

「水族館みたい」

「確かに」

ゲームだから環境は割と雑でも魚は平気なんだろう。瓶の蓋が閉まっていても、何本かヒラヒラしている水草だけで窒息したりはしていなさそうだ。

生体入りは、出品主が世話をしにくる事で出品が許可されている。

「スライムの瓶詰がフリマで売られてたりもしてたし……意外と生き物の瓶も多いかもね」

「まぁ狭い所気にしない生き物ならあるかもな」

順路っぽい並びに沿って、ゆっくりと眺めながら歩く。

最初に並ぶのは消耗品のコーナーだ。

液体や粉末が詰まっている小瓶と大瓶が棚にズラリと並べられている。

「ジャムー、ジャム瓶いっぱいだよ幸せ」

「すごい種類あるな……」

定番のイチゴから、リンゴ、オレンジ、ブドウ……知らない名前の果物はゲームのオリジナルなんだろうか。

瓶は透明で中身が見えないといけないルールだからか、ほとんどが蓋にラベル的な物を貼ったり被せたりしている。

「見て見て! ヒトの頭くらいあるよ、このジャムの瓶!」

「そんなデカいのは買いませんよ」

業務用かってサイズの瓶にはしゃぐキーナに苦笑いが溢れる。

それ買ったら相当な日数ジャム漬けの食事になるぞ。

「こっちは……香水かな。他のよりも瓶がオシャレ」

「あー、蓋閉まっててもうっすら甘い匂いがするな」

「外側のラベルに香りが残ってるのかもねぇ。あ、ドライフラワーもある」

いつぞや無欲のドロップで見た高い花の香水もあった。

購入希望の箱に、知らない誰かが紙を入れていく。

購入可能な瓶詰には、小さな貯金箱のような箱が置かれていて、そこに名前と金額を書いた紙を入れるルールだ。用紙はそこら辺にペンとセットで置いてある。

俺もキーナも香水には興味が無いからそこは素通りした。

「……あぁ、そうかポーションとか薬も瓶詰だな」

「そういえばそうだね」

次は完全に薬屋の風景だった。

ファンタジーな雰囲気のアンプルのような小瓶が並ぶ棚、薬の材料っぽい植物や粉の類が詰められている瓶、完成品の薬から素材まで薬師の部屋から棚ごと持ち出して来たようなスペースになっている。

「ポーションも普通のポーションじゃないね……変わった効果の薬が並んでる感じ」

「……まぁこのイベントで普通のポーション売ってもなぁ」

そんな会話をしながら瓶を眺めていると……ひとつのポーションが目についた。

【HP・MP代替ポーション】…品質★★★★

飲むと一定時間、MPが無くなればHPを、

残存HPを超える攻撃を受けた場合はHPを1残して、MPを

代わりに消費するようになるポーション。

……へぇ。

ゲームで時々見る仕様だ。 エフォ(EFO) にもあったのか。

……この効果欲しいな。色々と夢が広がる。

ただ、薬で一定時間じゃなく……パッシブの、永続的なスキルとして欲しい。

魔法で効果は再現出来なさそうなんだよな…… エフォ(EFO) の魔法は属性が基本だ。この効果を再現する属性はピンとこない。

ただ……ポーションで品質が星4つか……仮にスキルがあるとして、簡単に習得はさせてもらえなさそうだ。

……まぁ、今は『こういう効果が実装されている』って事がわかっただけ良しとしよう。

「それジーッと見てるけど、入札するの?」

「……いや」

ポーションが欲しいわけじゃないからな。

とりあえず、効果の存在を教えてくれた感謝として、投票券を1枚入れておいた。