軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:瓶詰展示会の概要とか準備とか

キーナが言う『瓶詰展示会』とは……どうやらプレイヤー主催のユーザーイベントの事らしい。

「開催地はサウストランクで、主催は行商人パピルスさん」

「あの人か」

イベント期間は年末年始をまたぐ10日間。

趣旨としては、何でもいいから瓶詰めを持ち寄り、たくさん並べて眺めて楽しみつつ、販売可能な瓶詰めはオークションのように競り落とす事も可能な内容になっているらしい。

「瓶の形や大きさは不問だけど、きちんと蓋が閉めてあって、瓶の色は透明で中身が見える物じゃないとダメ。で、中に詰める物は、展示期間中に瓶を破壊したり脱走しようとするようなモノじゃなければ何でも可」

「ほー」

「見学に来る人には投票券が渡されて、イイなーって思った瓶詰に投票ができて、投票が多かった上位3名には主催から賞品が出ます」

「へぇー」

「あとは……参加手数料として、瓶詰が競り落とされた場合は売り上げの1割が主催に入るんだって」

あー、商人だなぁー……

「……参加して大丈夫?」

「大丈夫。匿名参加オッケーだから」

「あ、匿名ありなんだ?」

「うん。匿名参加の場合は瓶詰を提出した時に割符を渡されて、イベント終了後に売り上げか……売れてなかったら瓶詰を引き取りに行く感じ」

「……引き取りに来なかったら?」

「リアル1ヶ月保管して、それでも引き取りに来なかった場合は主催の所有になるって」

「なるほど」

……まぁ、匿名オッケーなら大丈夫か。

「で、そこにマンドラゴラの種を出すの?」

「そう。花は取っておきたいから出さないけど、たくさんある種をセットで小瓶に入れたのを並べておけば、欲しい人は買うかなって。普通の土と闇属性の石を一緒にいれておけば育て方も伝わると思うし、瓶詰は複数在庫オッケーらしいし」

「ふむ……」

「オークションっていうのも投票と似たような感じで、『これにいくら出します』っていうのを名前付きで置いていって、最後に1番高い金額を提示した人に売るってタイプの物だから。それなら木材の時みたいに混み合ったりしないと思う」

「なるほど」

主催が行商人パピルスさんなら、その辺はうまく捌いてくれるか。

「……かなり詳しいけど、いつのまにそんなの調べてたの?」

「冬イベント始まった前後くらい? 面白そうなユーザーイベントとかもあるかなーって検索したら引っかかった。ハーバリウム並べるようなイベントかなーと思って、デートで行ったり参加したりしたいなーって」

「……ハーバリウムって何?」

「なんか瓶にドライフラワーと……あとなんだっけ、もうひとつ保存の効く花……あ、プリザーブドフラワーだ。その辺を保存用オイルと一緒に入れて鑑賞するインテリア。元は植物標本の意味」

「ほーん」

そういえばキーナはジャムの瓶が並んでるのとか好きだったか。

「まぁいいんじゃない。好きにしなー」

「わーい」

「……で、それいつから?」

「明日」

「明日!?」

「途中参加もオッケーなイベントだから大丈夫」

「……焦った」

* * *

そうしてマンドラゴラ達の種を瓶詰めで出してみる事にした俺達は……何故か森の木を数本伐採していた。

「だってほら、瓶とか買わないといけないし」

「うん」

「当日欲しいものがあったらお金いるし」

「うん」

「ってなったら今のうちに木材売ってお金作っておいたほうがいいじゃん?」

「うん……わかったから落ち着いて」

そわそわしすぎて何回か躓いてるし、木にぶつかりそうになってるんだよなぁ……そんな所も可愛いけどな。

ある程度伐採したらサウストランクへ。

もちろん変装してシロップを飲んで、行商人パピルスさんの店に行く。

「どうも、お久しぶりです」

「あ、こんにちは」

「……こんにちは」

タイミングが良いのか悪いのか、店にはちょうどパピルスさん本人がいた。

「本日はどのような御要件で?」

「えっと……いつも通り木材を売りたいのと、瓶詰展示会用に可愛い瓶とか売ってたらいいなーと」

「ご参加いただけるのですね、ありがとうございます! もちろん瓶も取り扱いがございます。木材の買い取りが済みましたら専用コーナーへご案内いたしましょう」

あぁ、瓶の専用コーナーがあるのか。それはそうか。

自分で主催するイベントで需要が発生するなら在庫を用意するよな。

接客の笑顔を浮かべるパピルスさんに、相変わらずの営業スマイルだなぁとしみじみ思いながらやり取りを眺めていると、キーナが「あ」と思い出したように口を開いた。

「そうだ。えっとですね……えっと……あのー……前に森とかサーカスとかでパピルスさんと一緒に会った……すいません、名前出てこない…………アメリカの大学の卒業生みたいな格好の人」

「ングッ」

名前を思い出すのを諦めたキーナの不意打ちで、営業スマイルが若干崩れたぞ。口元を押さえてプルプルと震えるスーツ姿のパピルスさん。

……腹抱えて笑ってもいいんですよ。ゲームなんだし。

「ンッ……フフッ……す、すいませ……まさかそんな覚えられ方していると思わず……彼は『論丼ブリッジ』です」

「あ、そうそうロンドン橋さん……あれっ? ロンドン橋落ちるのに卒業生スタイルなんだ? 受験は無事に通ったんですね」

「ブハッ!」

今そこかぁー……

パピルスさんは後ろを向いて壁に片手を付いてしまった。

「あの時交換で貰ったマンドラちゃん達が結婚しまして。もし近々ロンドン橋さんにお会いしたら、報告とお礼を伝えていただけますか?」

「け、けっこ……? フ……は、はい……お任せくださヒィ……論丼、どんな顔……ンハハハッ」

ビンを買いに来たのにツボに入ってしまった行商人は、木材の買取を終えて千鳥足で俺達を空き瓶コーナーに案内すると、よろよろとバックヤードへと下がっていった。

(結構笑い上戸なタイプだよね、パピルスさんって)

(……そう……かな?)

相棒が的確にツボに入ってるだけな気がするけどな。