軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:妖精女王からのクエスト

「チェンジリングってご存知?」

妖精女王は蝶みたいなほんのりピンク色の花を取り出し、それを2つに分けて、何か手元で作業をしながら話し始めた。

「えっと……赤ちゃんが別の赤ちゃんと入れ替わってるやつでしたっけ?」

「俺は成り代わりのイメージが強いかな……」

「まぁだいたいそんな認識でよろしいわ」

色んなパターンがあるから。と言いながら、女王様の手元では、花がいつの間にかピンク色の光沢がある白っぽい金属へと姿を変えていた。

「昔々、今よりずーっとヒトが少なかった頃に流行ったのよ。『あっちとこっちの種族を仲良くさせよう』とか『感動の物語がみたい』とか『なんか面白そう』とかの理由で」

「……今はもうやってないんですか?」

「昔々にエルフの長老に怒られてからは禁止になったわ。『ただの誘拐だからやめなさい』『良い話より悲劇になる方が多い』って」

「それはそう」

ピンク色の光沢のある金属は、くるりと輪の形になった。

繊細な細い輪……たぶん指輪かな? それがふたつ。

「ところが最近ね……『異世界だったらやってもいいのでは?』って考えた愚か者が出てしまったの」

「え」

「あ、愚か者はきちんと捕まえてお仕置きしてるところだから、安心してちょうだいね」

……なんか遠くからうっすらと『イャアアアー!』って悲鳴が聞こえた気がする。

女王様のニッコリした笑顔の圧が強い……犯人捕まってるなら、僕は何も言わないよ……

「頼みたいおつかいと言うのはね、そのチェンジリングの被害者の親を探して、返して上げてほしいのよ」

すると、フェアリーが2人がかりで、大きなゼリーの球体みたいな物を運んできた。

今の僕らの身長の半分くらいだから……鶏の卵くらいの大きさかな?

「これはスライムの卵よ」

「スライム」

「スライムって卵生なのか……」

妖精女王様が言うには……犯人を締め上げて、チェンジした片方は保護できた。それがこのスライムの卵。

このスライム卵は、ピリオで飼われている豆ニワトリの巣箱で見つかったんだって。……そんなヒトの多い所でやったの? だから発覚したわけだけど。本当に異世界ならセーフだと思ってたんだねぇ……

「って事は……どこかのスライムの住処に豆ニワトリちゃんの卵があるはずだから、それを探してスライム卵と取り替えてくればいいんですか?」

「……ところが違うのよ」

「え?」

妖精女王様は、指輪に植物のっぽい装飾を施しながら深く深く溜め息を吐いた。

「今はね、チェンジリングされても、両方に愛の絆があれば、専用の魔法で元に戻してあげられるのよ。でも……スライム卵には愛の絆を感じるけれど……豆ニワトリに愛の絆は無かったわ」

「えっ……」

「…………」

「なぜなら……その卵は托卵だったから」

「……ええーっ!?」

「……カッコウかな?」

つまり流れとしては……

まず豆ニワトリの卵の中に、何かの卵が托卵されました。

そこへ脱法チェンジリングで遊びたいフェアリーがやってきて、その托卵エッグとスライムエッグをチェンジしてしまいました。

豆ニワトリとしては他人の子供なので、別に愛はありませんでした……

愛が無いので、チェンジリングを戻す魔法が使えませんでした、と。

「え、何の卵だったんです?」

「わからないわ……豆ニワトリは自分が産んだ数とワタクシ達に言われて数え直した卵の数が同じだったから、何も気にしていないの。托卵されていた事にも気付いていなかったのよ」

「……まぁ托卵ってそういうモノですからね」

なんて話をしていたら、妖精女王様が作っていた指輪が出来上がった。

「はい、これがおつかいを引き受けた場合の、前払い報酬よ」

僕にひとつ、相棒にひとつの、お揃いの指輪。

「それはね、チェンジリングを元に戻す魔法に近いものよ。夫婦がそれぞれ指輪を着けて願えば、瞬時に相手の所へ飛んでいけるわ」

「え!? すごい!」

「……おぉ」

「2人が同時に願った場合はすれ違って、お互い入れ替わるような状態になるけれど」

「あ、なるほどチェンジ……」

そういう事よ、と妖精女王様は微笑む。

「指輪に花が咲いているでしょう? その花は、一度使うとつぼみに戻るわ。そうなると、また咲くまでは使えないの」

ふむふむ、クールタイムがいるんだね。

「……どのくらいでまた咲きます?」

「七日を三回繰り返したくらいかしら」

つまり……リアル1週間かぁ。

でも相棒の所へ飛んでいけるなら普通に欲しい。

「ただフェスティバルのプレゼントとして渡すには釣り合わないけれど……こめられた魔法にまつわる問題解決に尽力してもらえるなら、報酬も兼ねて前払いで差し上げてもよろしくてよ。おつかいも楽しめるからお得だと思うのだけれど、どうかしら?」

──クエスト『迷惑チェンジの迷子托卵』を受諾しますか?

(受けていい?)

(もちろん)

じゃあ受諾っと。

「よろしくね。そんなに遠い所では無いはずだから」

「……ちなみに、親元が見つからなかった場合は?」

「そうね……1年くらいかけても見つからなかったら、卵はこちらに返してもらうわ。指輪は持っていても構わないけれど……ワタクシ達はとてもガッカリするでしょうね」

ふむふむ、クエスト期間は長いけど、失敗したら指輪は貰えるかわりにNPCフェアリー達の好感度がガッツリ下がる感じかな。

忘れたら嫌だし、早めに終わらせた方が良さそうだね。