軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:一方その頃、拠点の旦那

キーナを送り出してから、俺は準備を整えて狩りに出た。

狙いはツーパンベア。

ある程度の数の爪が欲しい。

──ベアアアー!

ツーパンベアは攻撃の威力こそ高いが、行動パターンはほぼワンパンベア。慣れればソロでもいける。

そして俺はソロなら狙撃と奇襲が出来る。遮蔽物があるなら、光学迷彩だって充分有効だし、【隠密】を併用すれば見つかるまでの時間はさらに長くなる。

遠距離から撃ち抜いて、熊がこっちを見つけて接近してくるまでの間に【急所攻撃】狙いでバンバン矢を叩き込めば安定して狩りが出来た。

ゲーム内で半日と少しくらい熊狩りを続けて帰還。

拠点に戻ってからは、その爪を使って矢を作る。

以前、ネビュラの大元である死の狼精霊から貰った牙で短剣を作ろうとした時にジャックが渋った事で、俺は改めて装備製作についての詳細な仕様を調べていた。

有志のまとめによって分かったのは、特殊な効果のつく素材は、それをどう活かすのかは製作するプレイヤーの想像力次第だという事だ。

魔法と同じ。例えば火属性の素材があったとして、それを使った武器を作った時に、常に火を纏う武器になるか、それとも火属性魔法の効果を上昇させる武器になるかは、製作者が手掛ける時のイメージで決まる。

そして素材がイメージと噛み合わなければ『ポヒッ』と失敗扱いになって素材が消える。その辺の塩梅を見極めるのが腕の良い職人、らしい。

誰もがなんとなくと無意識でやっていた事を再確認かつ言語化してくれた検証勢はありがたい存在だな。

そうして仕様を理解した俺は、ツーパンベアの爪を使って、確実に跳弾する矢が作れないかと考えた。

それなりのサイズの爪をいくつかの欠片に砕いて、形を軽く整えて矢尻にする。

……うん、上手く行ったな。

【跳弾の矢】…品質★★★

何かに当たると一度跳ね返る矢。

2ヒットする爪だから、跳ね返るのは一度って事なんだろう。

……もしかして、スリーパンベアとかが出て来たら、2回跳弾する矢とかになるんだろうか。

一応ツーパンベアの爪を使って、跳弾じゃない矢も作ってみる。

【二撃の矢】…品質★★★

命中すると衝撃を2回与える矢。

うん、多段ヒットする素材を使った矢はこんな感じだろう。

結果に満足して、俺は矢の量産を進めた。

ツーパンベアの爪はドロップ率がそんなに高くないが、ひとつから複数作成出来るからそこまでしょっぱくもない。

矢が出来上がったら次だ。

図書館裏で採取してきた粘液の入った大瓶を取り出す。

完成した矢を1本手に取り、試しに矢尻を粘液に浸してみた。

【跳弾の矢・滅】

何かに当たると一度跳ね返る矢。

矢尻に塗られた滅びの雫により威力が向上しているが

使用せずに長期間経過すると矢が消滅する。

※消滅まで:3日

消費期限がついたか……滅びだし、矢だもんな。本を溶かしてた粘液だから、ガラス瓶よりは影響が出るのは早いだろう。

威力はまぁ矢尻に付着する程度ならこんなもんだよな。劇物ではあるだろうけど、溶かす速さもゆっくりだったし。なんなら強い毒を塗る方が効果は高いだろう。

……ただ、この後やりに行く事のためには、こっちを用意しておいた方がいいってだけだ。

作った矢と……普通の矢もいくらか粘液を着けて、矢筒にセットしておく。

そうして装填の感覚を確かめていると、キーナから念話が入った。

(無事にアポ取れたー)

(ん、誰かいたんだ?)

(ドMのジョンさんがいた)

思わずフリーズした。

いや、うん……間違ってはいないんだろうけど。

……待てよ? よりによってあの駄犬と会ったのか?

(……変な事言われなかった?)

(全然? 僕は下ネタ向きじゃないなーって言って踏みとどまってたよ)

踏みとどまれるのかよ。

いや、その理屈だと、俺はイケると思ったのかよ。どういう事だ。

(直接話したら意外と普通の人だったよ。ニヤニヤ見てきたりもしなかったし)

(ほー?)

まぁそうじゃないと麗嬢騎士団にいないか。女性ばっかりのクランらしいから、女性に嫌がられたらアウトだもんな。

……もしかして、わざと暴れて注目を引いてクランの番犬してるのか? いやでもドMなのは事実っぽいしな……

(まぁ……何も無かったならいいよ。会うのはいつ?)

(今日のリアル夜9時)

(ああ、即日オッケーなんだ。じゃあ早めに夕飯と寝る支度済ませようか)

(だねぇ)

時間もちょうどいい。

キーナは現地のまま、俺は拠点でそれぞれログアウトした。