軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:コケッコと召喚魔法

……フルダイブVR睡眠は、きっかり時間通りに目が覚める。

仮眠から目覚めた俺は、溜息を吐きながらゲーム内のベッドの上で起き上がった。

リアルで2時間。ゲーム内だと6時間。……ちょっと時間がもったいなく感じるが、機器から警告まで出たなら仕方な……

──まだまだこんなものじゃございませんコッコー!!

……なんだ?

家畜扱いの豆ニワトリの言葉は基本聞こえないはずなんだが。

* * *

庭に出た俺を待ち構えていたのは……キーナが乗る、ダチョウよりも大きくスタイリッシュなニワトリだった。

「あ、起きたの? おはよー」

「Oh……」

……まぁ、うん。いつもの事か。

とうの昔に慣れたよ。

「……覚醒コケッコ、ではないな?」

「うん、『快速コケッコ』!」

コケッコでカケッコか……

頭の中でクソギャグを呟きながら、苦笑いを浮かべる。

「……何食べたらそうなった?」

「えっとね、猫の取り替えっこ屋さんで知恵の林檎と取り替えっこした『運べハコベラ』って草」

「ほう」

アイテムもクソギャグか……

名前的に、食べた従魔を荷物やヒトを乗せられるように進化させるアイテムっぽいな。

……てか、猫の店に行ってきたのか。

「すごいんだよ、さっき試してみたんだけど、デューが乗った上からジャックを肩車してマリーを抱っこしても大丈夫だった!」

「無茶しやがって……」

快速コケッコも誇らしげに胸を張っている。

まぁ本人……本鳥?がいいならいいんだけどな。

「……オバケじゃないよな。【テイム】はした?」

「したよー」

「名前は?」

「『ダディ』」

「……なんでダディ?」

「雄鶏だったし、豆ニワトリと比べたらかなり大きいから」

なるほど?

なるほどじゃないが、いつものネーミングセンスだって事は理解した。

「次からダディに乗るの?」

「ううん」

「あれっ?」

「相棒とくっついてネビュラに乗るの好きだから、それはそのままがいい」

「……じゃあダディはいつ乗る?」

「NPC乗せないとヤバそうな時とか、あとジャック達が僕らがいない時のお散歩で乗る」

「あぁ」

そういう用途か。

ダディに二人乗りしてネビュラは戦闘にまわすのも有りだし。戦略の幅が広がるからいいんじゃないか。

「でもそうなるとさー、出先でいつでも従魔を呼び出せる魔法とかあればいいのにね」

「あるよ?」

「あるんだ!?」

俺も知ったの最近だけど、【召喚魔法】で従魔呼び出しができるらしい。サモナー1本でやってると必要にならないから見つかるのが遅かったんだとか。中々に罠だ。

「じゃあ【召喚魔法】覚えないとだね……あれ? 【サモンネクロマンス】みたいな付属の召喚機能じゃない【召喚魔法】って、どうやって覚えるの?」

そう、そこがまた罠なんだ。

「【召喚魔法】は冒険者ギルドで講習を受けないと覚えられない」

「へぇー、図書館の本とかじゃないんだねぇ」

NPCから教わらないと覚えられないタイプの魔法。つまり、欲しいと思って自分から調べないと習得できないのが【召喚魔法】だ。

だから余計に『テイマーだから必要ないかな』と思われて発覚が遅れたって経緯があるらしい。

「俺もベロニカを呼び出せたら便利だし、一緒に行くか」

「だね」

* * *

「……というのが【召喚魔法】の基礎になります。いかがかしら、習得はできました?」

──【召喚魔法】スキル取得

「えーっと……あった、覚えてまーす」

「……はい、大丈夫です」

冒険者ギルドにて、免許の更新を彷彿とさせる講習を受け、俺達は無事に【召喚魔法】を会得した。

講師は小人の婆さんNPC。

今の時間の希望者は俺達だけだったから、貸切状態で実に気楽だ。

「はい、よろしい。……さてさて、駆け出しの冒険者なら、このあと練習を兼ねて相性が良くて難易度の低い子を呼んで契約するのだけど……貴方達は経験豊富なようだから、ちょっと物足りなく感じるかもしれないわねぇ。どうします?」

ふむ……初心者サモナーは、その初心者向け召喚を武器に冒険を始めるんだろうな。

俺と相棒はチラッとお互い顔を見合わせた。

「「やります」」

「はい、じゃあ準備しましょうね」

せっかくやらせてくれるならやろう、もったいないし。

準備というのも簡単で、床に魔法陣の描かれた敷布を広げるだけだった。

「では、これに魔力を流してくださいな」

まずは俺から。

ダンジョン召喚の時と比べるとかなりシンプルな魔法陣に魔力を流す。

特に詠唱も必要無く、魔法陣の中央にポンッと音を立てて現れたのは……

「……犬だ」

「こんにちワン!」

現れたのはコーギーっぽい犬だった。

……俺はそっと【ベルンのオススメボール】を取り出す。

「あっ! なんてステキなボールですワン! キャッチボールする? する!?」

する。

ポーンとボールを投げると、キャンキャンと嬉しそうに飛びついていくコーギーっぽい犬。

「あらあら、それは『サーチワンコ』ねぇ。貴方達の強さなら攻撃はちょっと難しいかもだけど、探し物を匂いで追いかける役には立つんじゃないかしら」

なるほど。ボールを持って戻って来たサーチワンコをワシャワシャに撫で回しながら思う。

ネビュラも匂いで追跡はできるのかもしれないが、街中とかならこっちのほうがいいかもしれない。

召喚の契約をして、名残惜しそうに消えていく犬を見送った。

「ね、相性の良い子が来るでしょう?」

「ですねー」

……なんだその生温い微笑みは。

次はキーナの番だ。

「何が来るかなー?」と言いながら、魔法陣に魔力を流す。

……そしてポンッと出てきたのは……手のひらサイズのデフォルメシーツオバケって感じな半透明のオバケだった。

「あれー? お屋敷で感じた魔力の人だー」

……お屋敷?

俺達が エフォ(EFO) で入った事のある『お屋敷』は多くない。その中で、オバケに関わりがあったのはひとつだけだ。

「あっ」とキーナもそれに気付いて人差し指を立てた。

「もしかして……ポルターガイストちゃん?」

「ピンポーン!」

キャハハッと楽しそうに笑ったポルターガイストが宙をくるくると回った。

「契約したいの? いいよー、イタズラしたり物を投げて遊びたい時に呼んでー」

どこかポカンとしたままのキーナと契約が成立。……ポルターガイストは「バイバーイ」とあっさり帰っていった。

「あらあら……オバケが出るのは珍しいわねぇ」

それは、種族的な要因だろうなぁ……オバケの好感度が上がる状態だからオバケが来たんだろう。

「……すいません。妻がオバケを呼んだ事は内密に……」

「もちろんですとも、吹聴したりはしませんよ」

オッホッホと鷹揚に微笑む教官の隣で、『解せぬ』って感じの顔をしたキーナがしょっぱい顔をしていたのだった。