軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:お試し闘技場

やって来ました闘技場。

大霊廟召喚の打ち合わせをして以来かな?

本来の使い方って意味では、ラリーストライクの大会以来。

ラリーストライクを本来の使い方に含めないなら、僕らがここを本当の意味で利用するのは初めてだけど。ジャック達と来た時も、僕らは見学してただけだもんね。

受付で鍵付き個室の申請をして、部屋に入る。

1番小さな部屋でもPvP用だからそれなりの大きさ。

変装も無しネビュラも無しで、2人でやって来た僕らは、のんびりと部屋の中央へ進んで足を止めた。

「よし、ではどうぞ!」

「はいよろしく。……最初はビックリして転ばないように座っててくれる?」

「ウィッス」

冷静な相棒の言葉に首肯して、僕は仁王立ちをやめてその場にペタンと座った。

フルダイブVRだから転んだってなんともないんだけどね。その優しい言葉が嬉しい。好き。

相棒は少しの間頭に手を当てて、魔眼のオンオフのやり方を確認していた。

パチパチと瞬きを何度か繰り返して、うんうんと頷いている。

「うん……こんな感じか」

「コツ掴んだ?」

「コツと言うか……俊敏100超えの思考加速と似たようなもんだな。頭の中で念じたら動く」

「へぇ~」

では、魔眼体験!

「いくよ」

「カモーン」

相棒が僕をじっと見始めると、すぐに視界がおかしくなった。

モノクロのノイズみたいなモノが視界を覆い始める。

目眩の酷い物に似てるかな?

完全に見えなくなるわけじゃなくて、ザラザラと見えている景色が所々覆われて隠される。

大体……五割から七割くらいがノイズで隠れるかな?

『目隠しの魔眼』だっけ……確か、魔眼の事件の対策で作られた魔眼。

じっと見つめる事で効果が出るのが魔眼なら、確かにこれは対策になるんだと思う。

何かを見続けようとしても、ザラリとしたノイズが割り込んで見えなくなるし。そもそもチラつくノイズが気になって集中が削がれる。

魔眼対策だけじゃなくても、めっちゃ視界の邪魔だねコレ。

ただ……僕は相棒の方を見る。

ノイズが大量に発生している視界の中。

相棒の姿だけはノイズが重ならずにハッキリと見えていた。

お絵かきソフトのレイヤーに例えると、景色のレイヤーが1番奥で、その上にノイズのレイヤーを重ねて、さらにその上に相棒のレイヤーを重ねてるような状態。

……うん、めっちゃ相棒目立つ。これは魔眼の事知らなくても一発で相棒が原因だってわかるわ。

そんな感じの事を、魔眼を受けた感想として相棒に伝えた。

「なるほど……あとはモンスター相手でどれくらい効果があるか、だな」

「だねー」

それこそPvPなら絶大な効果を発揮しそうだけどね。

エフォ(EFO) のPvPはオマケだから。

その後も僕らは色々と確認や検証を続けた。

僕が魔眼を受けている状態に少し慣れてきたら、歩いてみたり、軽く走ってみたり。

この視界だとものすごく走りにくいねぇ。

本物の目眩と違って頭がぐわんと回るような感じは無いけど、うっかり何かにぶつかりそうって思うと全力ダッシュは躊躇しちゃう。

人によってはすぐに慣れるのかな?

僕は慣れた頃に油断して何かに派手にぶつかりそう。

「……うん、こんなもんか。ありがとう」

「はーい、お疲れー」

……ところが、相棒は確認を終えてからも、顎のあたりに手を添えて思考に没頭している。

ふむ……僕もちょっと気になってた。

これだと、移動に関するお試ししか出来てないよね。

どうせなら出来る所までやっちゃえばいいんじゃないかな?

ちょうどよく闘技場にいるんだし。

「……ねぇねぇ。 エフォ(EFO) だと初めてだけどさ、久しぶりにタイマンしない?」

そう言い出した僕を、相棒がチラッと見てくる。

タイマン、1on1、アクションゲームを2人でやってると時々やる。

「……いいの?」

「いいよー」

ここで戦っちゃえば、戦闘中だとどんな感じかわかるよね。

……まぁ、僕がへっぽこすぎて魔眼使う所までいかないかもしれないけどさ!

相棒は「ふむ……」と、少し虚空を見上げて思考してから頷いた。

「……じゃあやるか。ポーションは?」

「無しでしょ、キリ無いもん」

「オッケー」

「ネビュラは呼んだら? 僕もネモとか使うし」

「んー……それだと相棒にジャック達がいないのがな……ネビュラは同化するだけにする、使う時に呼ぶわ。スキル制限は無しでいいよな?」

「いいよー。アイテムも回復しなければ好きに使ってー」

サクサクと僕らがお互い丁度いいと思えるラインを決める。

細かいルールが必要な試合じゃないからね。ふわっとしてる部分が多くても、僕らが納得出来ていればいいのだ。

部屋の中で、間をあけて向かい合う。

武器を手にしながら、初手を考える。

……ふふ、ドキドキしてきた。

怖いようなワクワクするような……これが大人数相手の大会みたいな物だと緊張で怖い方が勝るんだけど、相棒が相手なら楽しい武者震いになってくるから不思議だね。

「開始の合図はどーするー?」

「……リリー1枚投げる。床に落ちたら開始」

「オッケー」

二人っきりの闘技場で

煌めくリリーの硬貨が1枚、宙を舞った。