軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:報酬の封印を解くと

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迷宮地下街グレースケールで封印を解いて大騒ぎしてから数日。

今日もキーナは拠点でせっせと王様からもらった封印の解除に取り組んでいる。

輪をひとつ外す毎に難易度というか糸の絡まり方が複雑になっていくらしく、やりごたえに夢中なようだ。

初日みたいに林檎屋をやる用事も無いから、拠点にこもりっぱなしで作業を続けている。

「もうちょっとで解けるー」

「おおー」

このアイテムはグレースケールの時のように、勝手に解けていったりはしないらしい。

たぶん、モンスターを封印していると、中から出てこようとして徐々に解けていくんじゃないかと俺達は予想している。

とはいえ、まだ爆発物っていう可能性があるからな……

開けた途端に拠点がボンッと吹っ飛ぶのは困る。……王様は老後にその辺どうするつもりだったんだろうか。

輝石が付いた輪は最後のひとつ。

それに手を伸ばしていた相棒は、達成感のある溜息をひとつ吐いて手を止めた。

「オッケー、あとちょちょいで開くよ」

「うん、じゃあ行くか」

封印解除寸前のアイテムを一度インベントリにしまって、俺達は拠点の外に出る。

流石に何が出てくるか分からない物を、拠点の中で開けるつもりはない。

俺と相棒はネビュラに乗って、死の海までやって来た。

「ネモ、足場になって」

ケタケタと笑うコウモリが、死の海の上に薄い通路を作る。

その上をネビュラで進んだ。

陸から少し離れた海の上で、ネモを円形の広場状にして、その中央でネビュラから降りる。

「ひぇ〜、死の海の上……大丈夫だとは思ってても心許ない……高い所から地面を覗き込んでる気分」

「うっかり落ちないようにね」

おそるおそる海を眺める相棒にひと声かけておく。

さて、ここならマズい生き物が出てきたとしても、そのまま死の海に落ちてもらえばなんともないだろう。

ヒュージソーンネペンテスが封印から出てきたのを知っているネビュラのお墨付きだ。

もしも爆発して吹っ飛んで海に落ちたら……まぁその時はネモの反応が間に合いますようにとお祈りするだけだ。

「じゃあ開けまーす!」

「いいよ」

封印を取り出して、キーナによる解除の最後の一手。

「……ていっ」

ペチッと解いたと同時に、アイテムをその場に残してキーナが全力で俺の方に逃げてくる。

──カシャン と、輝石の付いた輪が外れる音。

俺とネビュラは身構える……が、俺達の警戒に反して、アイテムはころりと転がったまま、特に何かが噴出するような様子は無い。

「……【感知】は特に何も引っかからない。ネビュラは?」

「余も特にアレから気配は感じぬ」

「相棒は?」

「封印解いたら【解析】には特に何も変なモノは見えないよ」

ネビュラが近付いて、前脚で円柱状のアイテムを軽く転がした。

「ふむ……特に問題あるまい」

全員揃って「ふぅ〜」っと息を吐いた。

「そんじゃあいよいよ御開帳〜」

「一応気を付けて」

なんともなさそうだと判断したキーナが、ウキウキとスキップしそうな勢いで近付きアイテムを拾い上げる。

そして輪が外れたアイテムの……茶筒のような蓋をスポッと開けて、中の物を手のひらにひっくり返し……た瞬間。

「ぅわぁあっ!?」

盛大に驚いてそれを放り投げた。

「どうした!?」

「奥方!?」

慌てて近付くと……尻もちをついたキーナの足下、ネモの足場にゴロリと転がる……ひとつの目玉。そして手紙のような物。

「ビックリしたー……いきなり手の上に目玉ゴロンは心臓に悪い……」

「……俺は相棒の叫びで心臓止まったわ」

「生きて」

ネビュラが半分呆れた顔で目玉を前脚でつついている。

「ふむ……魔力は感じるが、それだけぞ。噛み付いてくるような事はあるまい」

「そうか」

まぁ目玉が噛み付いて来たらモンスターだ。

とりあえず落とした目玉と手紙のような物を拾い上げて、陸に戻る。

ネモに椅子になって貰って森と砂浜の境目に座り、まずは手紙から確認する事にした。

「えーっと……『封印を解いた者へ。これは『目隠しの魔眼』である』」

手紙によれば。本国の方の世界では、昔々に魔眼が猛威を振るった事件があり、その対抗策として編み出されたのが、この『目隠しの魔眼』という事らしい。

事件が収束した後。魔眼の持ち主の希望で摘出し封印すると書かれていた。

「『後の世でも、ヒトを守るために使われる事を望む』……だって」

「へぇ」

魔眼なのか……そう思って、手の上の目玉をよく見てみる。

【目隠しの魔眼】…品質☆

青緑色の瞳の魔眼。

己の目に重ねれば、秘められた力を得られる。

目隠しの魔眼は、見つめる相手の視界に妨害の影を見せる。

※注意※

この魔眼は一度使うと消滅します。

魔眼を使用して魔眼持ちになると、解除する事が出来ません。

使用した方の目は、魔眼と同じ色に変わります。

魔眼の能力は使用者の意思で起動と停止の切り替えが可能です。

※効果※

起動中の魔眼で敵を見つめ続けると

その敵の視界の一部がランダムに覆われて見えにくくなります。

ただし、見えにくい視界の中で、原因となる魔眼の持ち主は浮かび上がって見えるため、敵に狙われやすくなります。

……いまだかつてない量の説明の記述だ。

使って魔眼持ちになると、魔眼の無い状態には戻れないようだから、『ちょっと試してみよう』なんて事にならないようにって事なんだろう。

「魔眼、ファンタジーあるあるだね」

「だな」

「相棒使う?」

「……自分で使わないの?」

「……僕、一点をじっと見続けるの苦手なんだよね。すぐ周辺が気になってキョロキョロしちゃう」

「ええ……」

まぁ、見続ける事で効果が出るモノだから、それが苦手なら致命的か。

「……じゃあ貰うか」

「どうぞどうぞ」

手のひらの目玉をつまみ上げる。

これは、どうしたらいいんだ……?

『己の目に重ねれば』……だから、こうか?

目玉を自分の左目の前に持ってきて近付ける。

──と、魔眼が俺の指から離れて、磁石が吸い付くようにして俺の左目に激突した。

「んぐぉっ!?」

「相棒ー!?」

「主!?」

激しいな……もっと溶けるように一体化してほしかった……

アイテムの目玉は既に跡形もない。

俺の目も違和感は無く、魔眼が入った代わりに俺の目玉が飛び出すような事も無かった。

そんな俺の目を、キーナがしげしげと覗き込んでくる。

「あー……ほんとだ、目の色変わってる」

「そう?」

「うん、相棒のアバターはオリーブグリーンっぽい目にしてたでしょ? 左目だけ青緑になってるよ」

「……目立つ?」

「んん〜……元の色と割と近いし、よく見たらわかる、くらいかな?」

目立たないならいいか。

「とりあえず使い勝手を確認したい」

「……でもモンスターにかけてもどうなってるのかわかりにくそうだよね」

モンスターがわざわざ『自分の視界がどうなってるか』なんて教えてくれるわけないからな。

そして魔眼による妨害なんて当然デバフだからプレイヤーにかけられるわけもない。

……と、なると。

「……闘技場で確認に付き合ってくれる?」

「いいよー」

これしかない。

俺達は一度拠点に戻り、準備をしてから闘技場へと向かった。