軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:迷宮地下街グレースケール

ゲーム内時間はちょうど昼食時。

まだまだ午後いっぱい時間があるなら、わざわざ後回しにする理由は特に無い。

なので俺達は、今日の今日で『迷宮地下街グレースケール』へと赴く事になった。

(展開が早いな……)

(だねぇ)

あっちの助っ人も時間が取れるからと、あっという間に決まった午後の予定。

プロフェッサーさんは一足早く拠点に戻って住民NPCの誘導。

オイスターさんも特に用事が無いから、グレースケールのオーブ登録があって暇してる検証勢に声かけをして街へ転移予定。

その間に、未到達の俺達はネビュラに乗ってまだ行ったことのない『迷宮地下街グレースケール』へ向かう。

「エゴマ亭の北にある渓谷だっけ?」

「そう」

『迷宮地下街グレースケール』は治安のよろしくないNPCが集まる街。

その特性上、入口がわかりにくく偽装されているらしい。

だからスムーズに辿り着けるように、エゴマ亭北の渓谷沿いに東に向かった所へ迎えが来てくれる事になっている。

特別な準備が必要な事もない。

エゴマ亭へ転移し、たまたまエゴマ亭とその付近にいた人達にチラ見されながら、すぐに二人でネビュラに跨り出発した。

(エゴマ亭、聖職者っぽい人多かったね)

(いたなぁ)

たぶん大霊廟に巡礼やレベル上げをしにいく【光魔法】使い達なんだろう。

エゴマ亭はしばらく繁盛しそうでなによりだ。

北へ道なりに走り、大きな石橋がかかる渓谷に到着。そこから崖に沿って東へ向けてさらに走る。

それなりに走ったあたりで、前方に看板のような物を持った女性が立っているのを見つけた。

『☆歓迎!☆ 森夫婦御一行様。グレスケツアー!』

「…………」

書かれた文章に一瞬思考が止まったが……気を取り直してネビュラの速度を落とし、手前で止まる。

渓谷の縁、森の脇で、看板片手に待ち構えていたのは、やたらスタイルがいい女性だった。

セレブがパーティとかで着ていそうな、胸元と背中が大きく開いた裾が長く青いドレスを着用している。

キッチリセットされた髪と化粧の効果で、『女スパイ』という感じの印象を受けた。

(……セクシードレスに見惚れちゃダメだよ)

(しないよ)

苦笑いしながら否定すれば、(ならばよし)と満足気な返事が返ってきた。

立ち止まったネビュラから俺達が降りると、女性は優雅な動きで礼をする。

「お待ちしておりました。私はプロフェッサーの部下、名を『美人女幹部キャサリン』と申します」

「なんて?」

「……すいません。よく聞き取れなかったんで、もう一回お願いします」

「『美人女幹部キャサリン』です。お気軽にキャシーとお呼びください」

「……ア、ハイ」

「キャシーサン」

その名前を有能な秘書かってくらい爽やかな笑顔で自己紹介するのは経験値が高すぎる。

看板を持ったままのキャサリンさんに先導されて森の中を進む。ツアー客か?

そしてしばらく進んだ後に、木々に埋まるようにあった大岩にたどり着いた。

「こちらです。足元お気をつけください」

根元の地面が窪んだ所へ坂を下ると、上手いこと死角になっている洞窟の入り口があった。

ひっそりと見えにくくなっている入り口に、キーナが感動した声を出す。

「おおー、秘密基地みたい!」

「ありがとうございます。掘った甲斐がありました」

……掘ったのか? ドレス姿の美人女幹部が?

宇宙を背負いながら洞窟の入り口へ踏み込む。

中は長い下り階段になっていた。

結晶の幻獣のクロの本体がいた所のように、ぼんやりと仄かに光る結晶が置かれて光源になっている。

……途中の岩壁にちょいちょい小さな隙間があって、そこから誰かがこっちを見てるのは見張りなんだろうな。

【感知】で隙間の向こうの存在を確かめながら進む。

この拠点、襲撃の時は敵がどう攻めてくるんだろうかと考えながら階段を降り続けると……不意に視界が開けた。

石材で壁が整えられた広間のような空間。

階段や通路の穴が縦横無尽に壁に配置された、混沌とした場所だ。

あちこちに樽や木箱やロープが無造作に置かれて雑然とした雰囲気の中、見るからにガラの悪い見た目の人々が、壁に寄りかかったりそこらに座ったりしながらこっちに目を向けていた。

「……姐さん、ソイツら新入りですかい?」

「いいえ、プロフェッサーの客人です。くれぐれも粗相の無いように」

「へぇ……ボスのねぇ」

「ヒヒッ、また面白ぇ仕事かぁ?」

絵に描いたようなならず者の空気だ。たぶんNPC……だよな? そういう街を作れば、こんなガラの悪いのも住民になるんだな。

俺も相棒も、特に目線も向けず反応も返さないままキャサリンさんについて行く。

先導するキャサリンさんは、広場の奥の通路のひとつへと進んだ。

ジロジロと見られながら、名前の通り迷路のようになっている複雑な地下街を奥へと進んでいった。

(この街、案内してもらわないと絶対迷子になる!)

(それな)