軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:熱意あるファンの熱心な声

「キ、『キミのような男に娘はやれーん!』」

「落ち着いて」

初手土下座して意味不明な要求を口走った聖職者風の男。

混乱して何故か父親側のテンプレ台詞を口にしたキーナ。

それを宥める俺。

なんだこの状況? と思ったのも束の間。

凄い勢いで村から走り出てきたのは、見覚えのある爺さんアバター。

「バッカモーン!! 何をやっとるかぁー!!」

これもテンプレみたいな台詞で聖職者風の男にカミナリを落としたのは、何度か顔だけは合わせている『モロキュウ冒険団』のクランリーダーだった。

……風切羽で帰ればよかったなぁ。

* * *

結局帰り損ねた俺達は、村の一室を借りて茶を出され、状況説明を受ける事になった。

走ってきた爺さんは『グランド爺』

『モロキュウ冒険団』のクランリーダー。

そして初手土下座したのは『大神官ロスティ』

『聖女アリリア守護騎士団』のクランリーダー。

俺達とグランド爺はテーブルに着き……大神官ロスティは床に正座している。

「いや申し訳ない。ご迷惑だろうとは重々承知しているのですが……しかぁし!『聖女アリリア守護騎士団』またの名を『聖女アリリアちゃん見守り隊』としては万が一、億が一にでもクエストを譲って貰える可能性が0.0000001%でもあるのならば手を伸ばさずにはいられなかったと申しますか……」

「つまり?」

「馬鹿な事を口走って申し訳ございませんでした!!」

……つまり、謎の『聖女ちゃんを俺達にください』発言は。

『聖女ちゃん(の重要な過去に関わるクエスト)を俺達に(譲って)ください』の意だったわけだ。

大霊廟関係の話がカステラさん経由のグランド爺さんから伝わって、居ても立っても居られず感情が暴走してモロキュウ村に特攻してしまったのだとか。そして運悪く、たまたま俺達がそこにいた、と。

普通に考えて譲るわけがないんだが……プレイヤーも千差万別だから、たまたまNPCとのやりとりで生えたクエストがイマイチ性に合わず『面倒だなー』と思いながらこなすような場合も無いわけではないらしい。

ファンクラブ筆頭としては、聖女の重要な過去に関わるクエストだから関わりたいのが半分、もしも聖女の重要な過去に関わるクエストを嫌々やるようならお互い不幸だから引き受けたいのが半分で、その結果が初手土下座付きのあの発言だった、と。

「普通に失礼じゃろ」

「はい、すみません」

……もう帰っていいかなぁ。

俺が若干の現実逃避を始めたあたりで、キーナから念話が飛んできた。

(相棒的にはイラッとした? 関わりたくない感じ?)

(……いや別に)

この状況は面倒だが、別になんとも思っていない。

誰も彼もが礼儀正しくて物分かりがいいわけじゃないしな。某番犬みたいなもんだ。

そんな俺の内心を確認したキーナは、ひとつ頷いて正座男に向き直る。

「……まぁ、僕らは別になんとも思わなかったんで、もういいですよ。でもクエストは魔女さんから任された大事なものなんで、譲るつもりは無いです」

「はい」

「ファンクランとパーティを組んで連れて行くつもりも無いです」

「はい」

ハッキリとお断りして、相手も大人しく受け入れて一件落着。

……やれやれ、理性的って言われてたクランリーダーでこれか。

カステラさんが心配するのも納得だ。

「……で、ですが……どうか当日聖女ちゃんを現地まで送り届ける許可はいただけませんかっ!?」

「……まぁ、それくらいなら?」

「ありがとうございます!! ……そ、それと、図々しい事は承知の上ですが……も、もし良ければ……聖女ちゃんを守るために、持ち込むためのアイテムなど作らせて頂けると……っ!」

「アイテムって、例えば?」

「聖水や【光魔法】の魔道具等です!『聖女アリリア守護騎士団』は教会所属がほとんどの神官系なので、その辺りのノウハウを学んでいますのでお役に立てます!」

あぁ、なるほど……そのへんは確かに欲しいな。

相棒がチラッと俺の方を見てきたから首肯を返す。貰えるものは貰っておこう。

「……じゃあ、アイテムもお願いします」

「ありがたき幸せ!!」

深々と頭を下げる大神官ロスティ。

なんだろうな……目の前に餌をぶら下げてるようなこの感じ。

(この熱意を完無視するのは確かによろしくない。適度にガス抜きして満足して貰った方が安全な気がする)

(それな)

面倒くさいが、送り迎えとアイテム提供で満足してもらえるなら別にいい。

アイテムは普通に助かるしな。

そんなやり取りを見ていたグランド爺さんが、感心したような呆れたような顔で言った。

「お主ら寛容じゃなぁ……それなのに何故ロックスの時に功労者の担ぎ上げをさせてくれんかったんじゃ?」

「「いやアレはちょっと……」」

爺アバターで不満そうに唇を尖らせるな。