軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:小さき者達の作戦会議

小さい種族に茶を出す時ってどうすればいいんだろうな……

悩んだ俺は、器が足りないと結論付けて潔く諦めた。

インベントリから果物を取り出し、相棒と手分けして皮を剥いて小さく切り分け、皿に乗せて作戦会議に提供する。

「なんだかすみませんであります」

「面白いからいいよー」

まぁ実際、小粒がわちゃわちゃと集まって果物食べながら会議をする様子は面白い。

現在ワイズラット族の集落では、多人数参加型のクエストが発生しているらしい。

前に俺達も手伝いに行った新しい北の農場。

そこに早速住み着いて作物を荒らす存在を退治するのがワイズラット族の新たな仕事。それに加勢するクエストというわけだ。

小さなネズミの身には北の農場もかなり遠い。

なのでそちらに移り住んでワイズラット族の拠点を作る関係のクエストが今まで多発していた。キーナがドールハウスの店でネズミを見かけたのもその一環だったんだろう。

拠点も確保できたから、駆除に本腰を入れるのがもうまもなくというわけだ。

「今回の討伐対象である『食いしん坊モグラ』は当然穴の中にいますので、大きなヒト達の協力は望めないです」

あ、NPCネズミの言葉にキーナがちょっと残念そうな顔をした。参加したかったのか。

「できれば猫やイタチや鳥なんかの従魔をうまく使いたいですけどねぇ」

「『食いしん坊モグラ』のモグラ穴はそんなに大きくないから詰まってしまうやも」

「となれば、やはり戦士が攻め入っての白兵戦ということに……」

「ただ数がとっても多いらしいのですよね」

「犠牲は出したくないなぁ……」

「【光魔法】で目潰しをしてはどうですか?」

「それが『食いしん坊モグラ』は鼻で周りの様子を知るので、目は開けてないのですよ」

「ありゃー」

モグラか……ネズミや小人よりは大きいから、戦闘の時に穴が狭いと人数差を活かせなくて辛そうだな。

一同が「うーん」と考え込んだ所に、相棒が「はーい」と手を挙げた。

「どうぞ大きな方」

「モグラの好物で穴の外まで引っ張ったりできないかな? 食いしん坊なんでしょ?」

「おお!」

停滞しかけた会議は、ざわざわと流れが復活した。

「なるほど、鼻が良くて目を閉じているなら、匂いに釣られて地上までくるかも!」

「そうすれば有利な従魔で存分に相手ができます!」

「先に試しておいたほうがよかろうなー」

「隠蔽持ちに頼んで、1匹だけいる巣穴で実験を……」

「モグラの好物って何?」

「ミミズっしょ」

「釣り餌に『挑発ミミズ』ってあったよな?」

「めっちゃ釣れそう」

収拾がつかなくなりかけた会議を、最初に開始宣言をした小人がパンパン!と手を打ちまとめにかかる。

「よろしい! では決行までの間に『挑発ミミズ』を使っての誘導が可能か速やかに確認を取るとしましょう! 次は、それが上手く行った場合の事を考えます!」

すると、一瞬静かになっていた小粒達が、またわいのわいのと盛り上がる。

「外へ出してしまえば袋叩きであります!」

「あ、でもでも、逃げられないかどうかが心配ね?」

「防壁の外は茂みに逃げ込まれたら厄介だぞー」

「魔法で囲いを作っておくのは?」

「大きい人達が撤去しないかな?」

大きい人の話になった所で、相棒が再び「はーい」と手を挙げた。

相手が小さいと注目浴びても平気なのか? ……いや、ちょっと緊張した顔してるな。

何でそんなに頑張っているんだ?

「どうぞ大きな方」

「大きい人な僕らが囲いを作って見張っておくのはどう? 小さいモグラを狙い撃ちするのは難しそうだけど、それなら大丈夫だと思います」

「おお!」

……なるほど?

(参加したいの?)

(うん、絶対かわいいから現地で見てみたい。……ダメ? 相棒が嫌なら僕ひとりで行くよ)

(いや、いいよ)

了承が出るならな。

小人達は予想外って顔をして相棒を見上げた。

「いいんですか? たぶんヒマですよ?」

「もしかしたら出番無いかも」

「大丈夫です。もし皆さんが良ければ」

「いえいえ、ありがたいのであります」

「大きい人達が見張っててくれるなら、通りすがりの大きい人も気付かず囲いを壊す事も無いかな」

「よしよし、それなら一網打尽に出来そう」

話はまとまり、俺達の下見と『挑発ミミズ』のテストを兼ねて、現地の農場へ移動する。

ピリオ北の農場は、既に防壁も出来上がっていて、農場として稼働していた。

一面の作物は実りに実った秋野菜。

この野菜を狙う『食いしん坊モグラ』が、防壁の真下にモグラ穴を作って住み着いてしまったらしい。

その穴の出入口が防壁の中と外に開いているので、両側から仕掛けるのが今回の掃討戦だ。

(リアルのモグラは肉食だけど、ゲームのモグラは雑食なんだねぇ)

(そうなんだ?)

(確かそう)

まぁ、これはファンタジーなゲームだからな。

『挑発ミミズ』のテストは成功。効果大。

当日誘導しやすいように、足の速いプレイヤーが手法を整えておくらしい。

「決行はリアル明後日の夜10時です! よろしくお願いします!」

「はーい、よろしく」

明後日か……変装してない状態での参加だから、俺達も戦い方を考えておかないとな。