軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:封魔の監獄鏡

……光が収まったのを確認して目を開ける。

何がどうなった?

状況確認。

抱き締めていた相棒はそのまま腕の中。

周りのサーカス団員はいない。猿の姿も無い。

そもそもいる場所がさっきまでのテントじゃなくなっている。

全体がぼんやりと明るく、廊下のような細長い場所だが天井がかなり高い。

そして、壁が全部鏡で出来ている謎の空間に俺達はいた。

……これ、キーナ大丈夫か?

腕の中を見ると、キーナは両手で仮面を被っている顔を覆っていた。

ダメそうですね。

「詰んだ……っ」

「早い早い」

苦笑いしながらボウガンを手に取る。

とりあえず周りにすぐ敵らしきモノは見えない。とはいえ、いつまでもここにジッとしているわけにもいかない。

……一応俺達は風切羽を使えば拠点に帰れるが、たぶんサーカス団の人達も巻き込まれただろうからな……放って帰るのも気が引ける。

すると、キーナが袖をチョイチョイと引っ張った。

「ねぇ相棒……ずっとギュッとしててくれたから大丈夫だとは思うんだけど……鏡っぽい場所だと、入れ替わりが定番でめっちゃ怖いから本人確認をさせてほしい」

「……なるほど?」

本人確認……ってなると、俺達がゲーム内で口にしていない事で確かめた方がいいな?

(……じゃあ、俺が初めてキーナが一人暮らししてる家に行った時)

(うん?)

(冷蔵庫の中に、開封済みのイチゴジャムの瓶は何個あったでしょう?)

(………………3個ですぅ……)

(はい、正解)

存在を忘れられていた瓶が2個いたんだよな。

結婚前の懐かしい話だ。

(……よく考えたら念話できてる時点で本人確定じゃんすか)

(……確かに?)

それはそう。

本人確認も出来た所で、とりあえずネビュラを呼ぶ。

「ネビュラ」

「……また妙な所に迷い込んでおるな。映し出された領域の中とは」

呆れたようなネビュラの言葉に頷き返す。

鏡が光って鏡の中にとか、割とベタな展開だ。こういうタイプのダンジョンもあるって事だろう。

「とりあえず、一緒に巻き込まれたサーカス団と猿を探そう」

「トゥティノコゥを獲りに行った時に出会った者達だな?」

「そう」

「……そういえば」

そこで、キーナが思い出したように首を傾げた。

「相棒は猿の言葉がわかってたんだよね?」

「うん」

「もうひとつの鏡が光った時……あの猿叫んでたけど、なんて言ってたの?」

……あれか。

「『危ない逃げて!』って言ってたよ」

「おや……って事は、改心してる猿って事でいいのかな?」

「たぶん?」

まぁ自己申告だから、鏡から出すならリスクを覚悟で挑戦するしかない。

でもそれは、サーカス団の人達の判断に任せていいだろう。

(……ちなみに相棒、鏡に出入口って作れる?)

(あー、試しておいたほうがいいね)

「【ミラークリエイト】」

インベントリから取り出した杖をすぐ横の鏡に向けて、相棒が唱える。

すると……鏡の表面が水面のように波打った。

矢を1本持って、それでつつくと同じように波打つ。

……そのままそっと矢を突き出すと、何の抵抗もなく鏡の向こうへ通り抜けた。

「「うわー……」」

「ふむ……奥方、慣れぬ内はあまり奥まで行かぬ方が良いぞ。恐らく、何処までも続いて戻れなくなる」

「だよね!」

合わせ鏡を延々と進めば、戻る場所が分からなくなるだろうからな。

……それはそれで何かありそうな気もするが、とりあえず今じゃなくていい。

「外に出るには、テントの見える鏡を見つけないとダメそうかな?」

「だな。それも合わせて探そう」

「オッケー」

問題は、どっちを見ても鏡だから何か見つけてもそこへ向かう難易度が高そうだって事か。

廊下のようなスペースをゆっくり進むと曲がり角に着く。

【感知】の範囲には反応無し。

ボウガンを構えて角を覗く……と、遠くにズルリと動いた黒い姿。

ダークスライム Lv50

おい、嘘だろ?

……あの時のよりはレベルは低い。やってやれない事は無い、か?

確か周囲のHPを吸い取るモンスターだったはずだ。

(相棒、ダークスライムがいる……前にオバケ屋敷でやった、【鏡魔法】の防御してもらえる?)

(わぁお、オッケー)

俺達全員に展開される鏡の盾。……そして【光魔法】のバフ。

(そういえば使ってなかったなって)

(うん、使ってレベル上げていこう)

支援をかけた所で……角から覗いて……ダークスライムを狙撃。

だが、そこで思わぬ事が起きた。

ダークスライムに向かって飛んでいた矢が、甲高い音を立てて曲がり、その曲がった先で命中する。

……ダークスライムの姿が鏡に映っていた姿で、ここの鏡は攻撃も反射するのか。

こっちを認識して向かってくるダークスライム。

「【グロウクリエイト】!」

そこに響いた相棒の声。

同時に光を放つ矢尻。

光属性を付与した矢で中央を撃ち抜くと、ダークスライムはパァンと弾け、ポリゴンとなって消滅した。

「ナイス」

「イエーイ」

ドロップは『ダークスライムの核片』とかいう謎のアイテムだった。

ようするに、厄介なのを放り込んである鏡なわけだ。

サーカス団は傭兵団でもあるから早々死に戻りはしないだろうが……合流の難易度は高そうだな。

(ところでさ……)

(うん?)

(もしかして……【鏡魔法】持ちの僕と、【ワイルド・ファクター】持ちの相棒が来たから、あの怪しい鏡の売り付けイベントが発生したとか……あるかな?)

(……あるかもしれない)

(あああああああー!)

【鏡魔法】持ちがいないと、死に戻らなきゃ出られない可能性があるからな。