軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:目指すは本格的なNPCごっこ

休憩を終えて再ログイン。

……ああ、新しい部屋になったんだった。

新品のベッドで、二人揃って目が覚める。

新しい部屋の寝心地を具体的にステータスで確認すると、しっかりと良い部屋にした効果が出ていた。

「……全ステータス+5か……」

やたらバフ効果高いな??

有志wikiで見た戦闘プレイヤー向けの家具情報よりも高いが??

……考えられるのは、木材の効果かな。

相棒は生産職ではあるけど、スレに載っているガチの木工職人より【木工】のレベルは低い。

ってことは、夢に関するこの森の木材が睡眠に効果が高いと考える方が自然だろう。

……なんだかんだ、良いところ引いたよな。

序盤のドロップ品は襲撃をハイランクにするバランスの悪さだし、畑はまともに育たない。この分だと井戸は無理だろうし、魚介的な資源も見込めないだろうけど。

それ以上にメリットが俺達のプレイスタイルに合っている。

「……とりあえず、飯作るか」

「だねー」

何より、相棒が楽しそうなのが良い。

* * *

ベーコンエッグをつつきながら、俺はふとSNSで見た情報を思い出した。

「そういえば相棒。もうすぐピリオの襲撃が始まるってさ」

「あ、まだだったんだ?」

最初の街『ピリオノート』の定期襲撃は戦闘メインプレイヤー向けの小イベント。

定期的にあるからといって、手を抜くと本当に街が壊れるというからとんでもない。

街が壊れるとNPCの買い物機能なんかが一時的にストップするペナルティがある。

プレイヤーの参加人数が少ないとどうにもならなくなってしまうので、運営はサービス開始からしばらくの間、ログイン数や時間帯のデータを取っていたらしい。

それでスケジュールが決まって、公式カレンダーに記載された。

SNSはそのお知らせをしていたわけだ。

そして次の日曜日に、初回と言う事で ち(・) ょ(・) っ(・) と(・) 規模の大きな襲撃をやるらしい。

うちの休日は土日からズレてるから、俺達にとっては平日だな。

「それって戦闘メインじゃない開拓勢でも参加していいの?」

「もちろん」

実の所、最初の選択肢である戦闘メインと開拓メインの違いは、初期拠点の場所の違いでしかない。

スキル選択も支給アイテムも、どっちを選んでも制限は無い。

ソロで開拓を選んだのに戦闘メインのトップ勢と変わらないほど戦闘に明け暮れる奴もいるし、仲間で使う拠点にするためだけに開拓を選ぶ奴もいる。

β勢の大手クランになると、最初の開拓拠点選びで近い所から遠い所までメンバーで一通り網羅してダンジョンを探してるって話だ。

「ただ、開拓に力入れてるとどうしても戦闘しかしてない奴とのレベル差は開くから、参加してもあんまり活躍はできない。だから旨味が少ないって事」

「なるほどねー」

ピリオ定期襲撃は貢献度に応じてポイントがもらえる。

そのポイントを色んな報酬と交換できるらしい。

ポイントは貯めておけるから、初心者の参加でも損をするって事は無い。

ふんふんと聞きながら頷く相棒の顔は、ワクワクしている時の顔だ。

「ちょっと見てみたいかも」

「参加じゃなくて?」

「それこそ僕らのレベルって大して高くないだろうから、邪魔になっちゃいそう」

まぁトップ勢に比べれば低いが、そこまで低すぎるってわけでもないんだけどな。

「でも、いわゆる辻ヒールみたいな事とかできたらしたいかも? 危なそうな時にだけ、フッシーのフルリカバリー撃つとか」

「それは……モ○ゾーバレするけど?」

とんでもない事を言い出した相棒だが、俺の指摘は予想の範疇だったらしい。

なんだか不敵な笑みを浮かべている。

「ふっふっふ……いい考えがあります!」

「はい」

「……ちなみに、その襲撃っていつ?」

「次の日曜、リアル夜九時」

「……じゃあ余裕で間に合うと思う!」

あ、つまりこの後はその準備だな。了解。

* * *

相棒はピリオへダッシュし、布や糸を大量に買い込んで戻ってきた。

俺はその間、相棒の指示通りこの森の青緑色の葉っぱを大量に集めてきた。

「【裁縫】のレベルが上がったからね、染色もできるようになったの」

そう言いながら、相棒は 微睡(まどろみ) の森の木屑を水を張ったタライに入れていく。

ゲームだからか植物ならほとんどの物を染料にする事ができるらしい。

買ってきた白い布が、森の木材と同じ青みがかった白になった。

その布を広げて、俺が風魔法で乾かす。

相棒は次にせっせと葉の方を刻み始めた。

「僕らの エフォ(EFO) での普段着って、相棒は黒い暗殺者風だし、僕はハロウィンの魔女っぽくなると思うんだよね。つまり黒系。暖色はちょっと入るかもしれないけど」

そうだな、系統はそうなるだろうな。

「だから、それとは全然違う雰囲気の装備で変装すればバレないと思うわけだよ!」

「なるほど」

刻んだ葉を入れたタライに今度は糸を入れてスキルを使う。

糸は濃い青緑色に染まった。色の濃さはかなり調整が利くんだな。

相棒は乾燥が終わった布で服を作り始める。

「靴とか手袋はどうする?」

「あー……それも作ろうか。革素材あったっけ?」

「ダンジョンでしばき倒したヤギの革ならあるけど、相棒作れるの?」

「【防具製作】で一応作れる」

「つよい」

中に着るズボンとシャツ。同じ色に染めたヤギ革の靴に手袋。

フード付きの大きなポンチョは、シャツに縫い付けて完全に一体化させていた。

これを二人分。

「これに、仮面をつけます」

「ほう」

【アクセサリー製作】には、テンプレートに仮面があるらしい。

相棒は表情も鼻や唇も一切ない、のっぺらぼうみたいな無地の仮面を、森の木から削り出した。

「……目と口の穴も開いてなくない? これ見える?」

「…………そう思っていた時期が僕にもありました」

どういうこと?

「ここにひとつの確認ウィンドウがあります」

「はい」

「『メカクレ仕様』にしますか? と書いてあります」

「は?」

「『はい』を選びます……わぁすごい! 穴が無いのに視界も声も遮られない!」

「そんなことある!?」

渡された仮面を着けてみる。

うわ……本当に周りが見える。ほんの少し透過された仮面で白んでるけど、十分だ。うっかり着けてること忘れそうなんだが?

相棒が試しに一式装備した。

「どぉ?」

「うん、てるてる坊主」

白いんだよなぁ。一色だから余計にてるてる坊主だ。

「とりあえず肌は見えないよね? 身バレはしないでしょ?」

「しないねぇ」

「じゃあここからさらに装飾します」

相棒は、葉っぱで青緑色に染めた厚手の布を用意。

肩幅の細長い状態にして、頭を通す穴を開けた。

ポンチョの上から被ると、胴体の前と後ろに長い布が垂れる形になる。

そこに青みがかった白い糸を用意して、デカデカと鳥っぽいマークを刺繍した。

「【裁縫】スキルは刺繍の図案のテンプレートもいっぱいあるんだ。そこの鳥の図案を調整して、フッシーにしてみました!」

何故かフッシーがドヤ顔を決めた。

相棒の手は止まらない。

不死鳥の布も、ポンチョも中の服も靴も、全部の縁を刺繍で飾った。

てるてる坊主は、なんとなく民族っぽい雰囲気になった。

スキルのレベルが上がって自動で済ませられる作業が増えたからか、いつぞやのモ○ゾーセットを作っていたときとは比べ物にならない短さでここまで来ている。

相棒も、自分で時間を確認して驚いていた。

「すごい! 葉っぱ縫い付けた時より全然時間経ってない! じゃあもうひとつやりたいことやっちゃおう」

そう言うと相棒は、小さな【刻印】を服の模様扱いにしてズラズラと並べ始めた。

「え、まさかそれ全部重複する!?」

「わかんない……あ、重複五個までだって」

「デスヨネ!」

さすがに全部重複はぶっ壊れが過ぎる。

相棒は並べた刻印を刺繍で上からなぞった。

円や線なんかの刺繍テンプレートを組み合わせて、えぐい数の【刻印】をぶちこんでいく。

遠目に見ると普通に模様のパターンに見えるのがすごい。

……これは相棒の凝り性が出たな?

普段は割と大雑把なのに、こういうよくわからない所で凝り出すんだ。

「『HP増幅』『MP増幅』『筋力増幅』『魔力増幅』『強靭増幅』『精神増幅』『俊敏増幅』……各種耐性と行動系スキルのボーナス……魔法系も入れた……よし、たぶん良さげなのは全部入れた!」

「すげぇ」

「【刻印】スキルレベル上がった!」

「だろうね」

重複限界超えて余ってるくらい入ってるから、多少破れてもスペック落ちないなきっと。

【 微睡(まどろみ) の森人の装束】…防御+18

微睡(まどろみ) の森の木と葉で染めた、不死鳥の紋章入の装束。

全身を覆う一式。

念入りに籠められた刻印により、各種ステータスとスキルにボーナスが入る。

「出来たー!」

「全身セット装備じゃん」

ああでもセット装備はいいな。

メニューからの装備で一瞬で変装できる。

「まず明日は試運転として、これを着て相棒の変装用の弓と矢筒を買いに行きます。ついでにグレッグさんの店もチラ見します。そこでグレッグさんとシイタケさんにバレなければ、まぁ行けるでしょ!」

「なるほど、テストは大事だな」

「あと、声でバレるかもしれないから、変装してる間は一切声を出さない事!」

「徹底してるなぁ……意思疎通どうするの?」

「ジェスチャーか筆談」

「徹底してるなぁ……」

「謎のNPCごっこの続きだよ!」

まぁ確かに?

俺もこれなら問題ない。

どれだけ目立つ事しても、普段の俺達には有名税なんて欠片もこないだろう。有名税を脱税するわけだ。

「目立ちたくはないけど、縛りプレイもしたくないじゃん。僕だってフッシー使いたいし」

「まぁね」

なんだかんだ長い作業だったから、今日はここまで。

ダンジョンと製作とで、中々に濃い休日だったな。