軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:ラリーストライク予選トーナメント

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キーナが魔女集会からめちゃくちゃご機嫌で帰ってきてから数日後。

今日はついにラリーストライクの予選トーナメントだ。

予選は本戦とは別日開催で、ここでかなりの数がふるい落とされる。

俺の目当ては予選突破報酬のシマエナガだから、実質今日が本番だ。

「相棒は……Iブロックだっけ?」

「そう」

予選はブロック別に分けて行われる。

全部で16ブロック、AからPまでに分けてトーナメントで、勝ち抜いた1人だけがブロック代表として本戦トーナメントに出場する。

割と狭き門に見えるが……スレの傾向をみる限り『俊敏低いけどシマエナガ欲しいから予選だけでも運任せワンチャン』で出場してるのが結構いるらしい。

俺の俊敏は高い方だと思うから、優勝候補とかにうっかり当たらなければなんとかなるかもしれない。

「こういうのって、運営の方で強そうな選手を別々のブロックに散らしたりとかしてるのかな?」

「……どうかな?」

「だって完全ランダムだとさ、『予選Aブロックの決勝が一番熱い試合だった』みたいになっちゃうかもしれないじゃん? それは運営的には嬉しくないのかなーって」

「まぁ、それはそう」

そういう裏事情は俺達にはわからない。

大会は匿名不可でプレイヤー名が出るから、普通に変装無しでの参加だ。

キーナと二人で闘技場に入ると、広い受付ロビーには大量の映像スクリーンが少し高い位置に並んでいた。

本戦と違って観戦席無し。個室でサクサクと進めるから、気になるブロックの試合はここでスクリーンで観戦しろって事らしい。

混みあうから動画サイトでライブ配信もやっている。複数の試合を同時にじっくり見たいならそっちの方がいいだろう。

……それにしても人が多いな。

配信があっても、現地に来る観戦者はそこそこいる。

「相棒、緊張してる?」

「まぁ、それなりに」

「でも手足が震えたりはしてないね」

「そういうのは無いな」

学生時代の吹奏楽演奏会のプレッシャーに比べれば、全然。

「すごいなぁ……僕だったら手足ガックガクになって、最終的に発狂して笑い始めるかもしれない」

「そんなに?」

会場の端でそんな風に雑談しながら待っていると……スタッフの腕章をつけた兵士が数人やってきて、声を上げ始めた。

「これよりラリーストライク大会の予選を開始します! 各ブロック、第一から第四試合まで出場の方、受付へ来てくださーい!」

「個人メッセージも送っています! 確認して該当選手の方のみ受付へ来てくださーい!」

「じゃ、行ってくるわ」

「うん、頑張ってー」

さて、どこまで行けるだろうな?

* * *

「いやーっ!」

「ぐわーっ!」

「あばーっ!」

予選トーナメントは思いの他順調に勝ち上がっていた。

運任せシマエナガ狙いっぽいプレイヤーももちろんだが、それ以上にテイマーの出場が多い。

なんでテイマーがわかるかと言うと、対戦相手の従魔達がスタッフの指示に従い部屋の隅で待っているからだ。犬を連れて来てくれてありがとうございます。

まぁよく考えれば、上位入賞の賞品がドラゴンだの鳥だのだったな。従魔メインで運用しているテイマーが欲しがるのは当然か。

ただ、ガチテイマーは従魔へのバフスキルのために精神ステータスを伸ばして機動力を騎乗従魔任せにしている場合が多い。だから、ラリーストライクでは分が悪い。

「試合終了、『ユーレイ』選手の勝利です!」

「Iブロックの決勝はすぐ始まりますので、そのまま受付でお待ちください」

「……はい」

なんだかんだ決勝まで来た。

これに勝てればとりあえず目的は達成だ。

嬉しそうにブンブンと手を振ってくる相棒に手を振り返して、すぐに案内されたIブロック決勝戦の部屋に入る。

……まず目についたのは、部屋の壁際にズラリと並んだ従魔達。

なんだか、これまでのテイマーの従魔達とは違うな?

見た事の無い種類が多いし、装備がしっかりしているというか……ガチ度のレベルが違う感じがする。

その答えはすぐに出た。

試合が先に終わっていたのだろう、旅慣れていそうな軽鎧の上からゼッケンもワンドも装備して準備万端の対戦相手……夏のイベントで見た顔の男に会釈して、俺もさっさと準備を済ませる。

「では、Iブロック決勝戦。『バイトリーダー』選手対『ユーレイ』選手の試合を開始します」

「よろしく」

「……よろしくお願いします」

コートイン、カウントダウン。

……2……1……0!

試合開始と同時にスライドして、相手の出方を窺う。

バイトリーダーは3ショット。

俺めがけて放射状に三発放つのを、加速して置き去りにした。

やってみるとわかるが、球技と見せかけて半分PvPなのがラリーストライクだ。

とにかく球が相手に当たればいい。

だから。

速さで相手を圧倒できるなら、肉迫してのゼロ距離射撃は割と有効だ。

球が少ない内に、駆け抜けて、急接近。

すれ違いながらワンドを向ける。

2ショット。

バイトリーダーは2ポイント減。

当たった球はそのまま消える。

運任せっぽい相手にこれをやると、大体は狼狽えてバランスを崩すが……さすが有名プレイヤーか。

距離をとって、2ショット撃ってくる。

回避。

フィールドの球は5。

ストライク狙いのプレイヤーなら、大体このくらいの数で打ち合いを始めようとする。

バイトリーダーもそのタイプか。

積極的に球へ向かってのラリーが始まった。

ただな、球へ向かうから割と動きが分かりやすい。

そっちへ向かって偏差撃ちしてやれば、面白いくらいによく当たる。

避けられて球が増えても、ラリーで返そうとする相手の方が球数に対応しきれなくなる。

反射する球が来るのを、パリィの要領で適当に打ち返す。

テニスと違ってネットも白線も無いから反射先はほとんど気にしていない。

筋力ステも関係なく、必ず等速で飛ぶから、ワンドの魔法陣で撫でるだけでいい。

……まぁほとんど攻略動画と上級者NPCの受け売りだけどな。

そうして捌いている内に、俺と相手のポイントは27と13。

差がつけば、必然相手はストライクを狙う。

「『ストライク』」

バイトリーダーの宣言。

赤く光るワンド。

……ストライクの極太ビーム砲の速度は、通常の弾速の倍だ。

筋力ステが影響しない、必ず倍速になって飛んで来る球。

ビームが派手だから脅威に見えるだけで、対応できない代物じゃない。

踏み込んで

加速する

そうすれば、世界がその分遅くなる。

秋イベント前のレベル上げのおかげで、俺は素のステで俊敏が100に到達していた。

俊敏100超えの思考加速処理は全プレイヤー共通の挙動。

コート内での解除対象にはならない。

周囲の球を一度に複数薙ぎ払って、邪魔の無い状態で迎え撃つ。

必殺のビーム球。

遅くなった世界なら、通常球と大して変わらないそれを。

「『ストライク』」

小さく呟き、赤く光らせたワンドでもって

真正面から打ち返す!

「ぅわっ!?」

崩れたな?

アクションゲームは敵が怯んだ所に攻撃を叩きこむのが定石。

俺は加速も、ワンドのストライクモードもそのままだ。

そのままスライド。

残りポイントを考えれば、俺が邪魔な数発を踏み抜いたところで関係ない。

近場の球をストライクモードのまま、数発バイトリーダーに叩き込めば……

残り少ない相手のポイントは、一瞬で蒸発し消え去った。

── 25-0

「試合終了! 『ユーレイ』選手の勝利です!」

「『ユーレイ』選手、Iブロック突破おめでとうございます!」

「……どうも」

バイトリーダーとその従魔達に拍手されながら、スタッフが予選突破景品のシマエナガが入った籠を手渡してくれた。

……よし、目的は達成。

意外といけるもんだな。