作品タイトル不明
幕間:宴の後
とある二人の魔女好き女性プレイヤーは、客人が全員帰ったカフェの中、揃って夢見るような溜息を吐いた。
「「はぁ〜〜……」」
落ち着いた色合いの店内は、魔女が住んでいそうな雰囲気の調度品で整えられており、特に今日は黒いクロスをかけた丸テーブルが巨大な時計のように鎮座していて非日常感が強い。
ここはCafe『割れた砂時計』
ついさっきまで、ここには魔女が大勢いた。
正確には、魔女っぽい装備に身を包んだプレイヤーがたくさんいた。
秋のイベントにハロウィンっぽい催しがあるから……その前座のように、魔女好きで集まって魔女集会みたいな事をしてみたのだ。
大きく宣伝したりせず、顔見知りの顔見知りに招待状を出すような回りくどさで、内緒の密会のごとく、こっそりこっそり集まって、人目を避けてお茶を楽しむような……
そんな集会も、今はもう終了して解散済み。
夕日が差し込む椅子に体を投げ出してボーッとしているのは、魔女集会の主催の2人。
発案者の『ヘレナ』
あまりゴテゴテしていない、スリットの大きく入ったロングスカートでキレイ系の魔女スタイルで決めてみた女性。
彼女は魔女集会では4時の魔女だった。
場所を提供した『魔法少女☆ドレッドノート』
リボンとフリルで可愛く可愛く、普段通りなコッテコテのカワイイ系魔法少女スタイルで決めてみた少女。
彼女は魔女集会では12時の魔女だった。
そんな2人は、魂が半分抜けたような様子でぼんやりと天井を見上げている。
「すごい人来ちゃったね〜……」
「ね〜……」
それぞれが『俺の考えた最強の魔女衣装』でやってきた今回の集会。
古今東西の魔女が集まった本当の魔女集会のようで、大変心が躍っていた最高の集まりであった。
小人や民族系な魔女達までやってきて……目の保養を大いに楽しんでいた……その時だった。
あの、魔女が、やって来たのは。
「透明人間って……種族あるのかな?」
「わかんない……」
なんというか、あの人は 本(・) 物(・) に近かった。
ファンタジーな世界観で魔法が使えるゲームなのだから、魔女っぽい服を着れば誰しもが本物の魔女になれるのだけど。
けれどあそこまで凝り性を爆発させた人が来てくれるとは思わなかったのだ。
黒1色の肩が出るタイプのワンピースは、ドレスのようにエレガントな雰囲気で。
ふんだんに飾られた刺繍とレースがそれはそれは豪奢で。
でも黒1色だから決して派手にはならず、ただただ繊細かつ高級な雰囲気が『本物!』という空気を作り出していた。
衣装だけでそれなのに、なんと着ている当人が透明になっているのである。
ファンタジーの強みを全力で使って殴りかかって来たのだ。
「『そんなにサービスしてもらっていいんですか!?』って言いそうになった……」
「わかる〜〜……」
コスプレしていたら、二次元の壁を超えて本物が混ざってたみたいな。そんな感覚だった。
そして恐ろしい事に、その本物から『おいでおいで』と手招きまでされた感じだ。
「魔女……職業にあるんだね……」
「ね……なれるんだね……」
ある、という情報だけでなく、その条件まで教えて貰った。
習得の難しそうなスキルもあったが、可能性はゼロではない。
本当の魔女に、本当の魔女集会に、なれるのだ。
……実は、2人には魔女集会にひとつの目的があった。
こうやって、魔女好きに声をかけて集まってみたら……ワンチャン、森女が来てくれないかな、という目的が。
かつてのフリーマーケットで、箒タイプの杖という物を エフォ(EFO) 内で初めて実用化し売り出してくれた、魔女好き達のレジェンド。
【死霊魔法】を発見し、【占術】まで使える、魔女の先駆者と言ってもいい森女。
だから魔女集会は匿名オッケーにしたし、覆面装備もオッケーにしていたのだ。
そうしたら……予想外の大物が釣れてしまったのである!
「アレって……森女さんだったと思う?」
「わっかんなぁい……」
ぶっちゃけお出しされた情報といい、怪しいNPCなりきりレベルの高さといい、半々くらいの確率で森女ではあるまいかとは思う。
けれど確証は無かったし、何より匿名オッケーとした集会の参加者の正体を主催が暴くのはあまりにも無粋だ。
それに……お出しされた情報が、とっても嬉しかったから。
「まぁ……どっちでもいいかな」
「そだね〜……」
「とりあえず、あのスゴい人の事は心の中で『大魔女お姉様』って呼ぶ事にする」
「あ、ズルい私も」
スペシャルゲストが来てくれた。それで充分。
とてもとても、楽しい魔女集会だった。
「またやろうね」
「モチのロンロンよ」
この集会がきっかけで、魔女好き達は魔女を目指すだろう。
それだけでも意味のある集まりだった。
「……検証勢には内緒でね」
「当たり前じゃん」
有志wikiにも載っていない隠し要素のような情報だ。
大事に大事にしなければ。
魔女になる方法なんて神秘的な事は、秘密の口伝くらいがちょうどいいのだから。
次の魔女集会も、こっそりこっそり相手を見極めて招待状を送ろうと、2人は心に決めたのだった。
「……ところでドレちゃん」
「なぁにヘレナちゃん」
「ここに……読むと【占術】を習得できる本があります」
「な ん で !?」