軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:砂漠は過酷なフィールドである

やっぱりネビュラは速いねぇ。

今回は相棒の前に乗って支えてもらいながら、僕はのんびりと過ぎ去る景色を堪能していた。

ネモは船にもなってくれたから、やろうと思えば馬車みたいな物にもなれるのかもしれないけど……でもMP消費が激しそうだし、こうやってくっついてネビュラに乗るの好きだからね。

後ろから抱き着くのも背中の広さを感じて幸せだけど、こうやって前に乗って支えて貰うのも肩幅の差を感じて幸せなのだよ。

森と平原が交互に続くフィールドを、今回はネビュラで駆け抜ける。

前に通ったのは、梟幻獣ちゃんを探している時。あの時は探さないといけなかったから数日がかりで歩いて行ったけど、今回はただの通り道だから、時間をかけずに突き進んだ。

ゲーム内でほぼ1日近くかけて前に来たことのある森の辺りまで。

次の日、水曜日の夜にログインして続きを走り……僕らは、ログアウト寸前の昼過ぎ……オヤツの時間くらいに砂漠の入り口へと到着した。

「おおー! 砂漠だぁー!」

「……うん、砂漠だな」

緑の平原が、砂とグラデーションになって切り替わる場所。

そこから先は、オレンジ色の砂がどこまでも続く広大な砂漠だった。

波打つような砂の山。

草木の一本も生えていない、空色とオレンジ色だけのフィールド。

熱された砂から立ち上る陽炎が、ゆらゆらと景色を揺らしている。

まさに砂漠って感じの光景が、広がっていた。

「すごい、草と砂漠の切り替りの近くに来たら暑くなる!」

「こういうところはゲームらしいんだな」

砂漠に近付くと、真夏に日影から日向に出たような感じでジリジリと焼けるような暑さが来る。ゲームだから体全体に熱が籠もる感じはしないけどね。

「……で、この砂漠を街に向かって進むのかぁ……目印に石塔とか置けないのかな?」

「建てた有志はいるらしいけど……モンスターとか砂嵐とかで、壊れて無くなったり移動したりしてるらしいから、あんまりあてにしない方がいいってさ」

「マジかぁ〜」

さすが砂漠。難易度が高いね。

僕らは改めて地図を開いて、ベロニカと一緒に現在位置と方角の確認をする。

「……ネビュラ先輩は、砂丘の急勾配は避けた方がいいの?」

「いいや、気にしなくてよいぞ。あの程度の起伏ならば容易く越えられる」

「了解。それなら直進ルートで誘導するわ」

まずは確認のために、ベロニカは真上に高く高く上がっていく。

……そして、すぐに降りてきた。

「……ねぇ、すぐそこに倒れてる人がいるわよ」

「「えっ!?」」

「なんと……」

ベロニカがクチバシで指した砂丘の影には……バッタリと分かりやすく行き倒れている人の姿。

「……み、水……」

「遭難だー!?」

「Oh……」

* * *

「助けていただいてありがとうございます……いや本当すいません、あの森夫婦にこんな水不足なんかでご迷惑おかけして……」

「「お気になさらず」」

行き倒れていたのは、人魚のプレイヤーだった。

砂漠の環境デバフは人魚の水分にかなり深刻な影響を与えるみたいで、うっかり飲み忘れていたまま砂漠に踏み込んだらあっという間に倒れちゃったらしい。

「いやぁ〜……この分だと、他の面子も無事に着いたか怪しそうだなぁ〜……」

「え、他にも仲間いたんです? ……えっ、置き去りにされた?」

「いやいやいや、違うんですよ!」

人魚さん曰く。

始まりは掲示板の人魚スレだったらしい。

名前は忘れたが、誰かが何かの話の流れで、こんな事を書き込んだ。

──『まさかとは思うけど、初期からやってて今さら水分管理ミスったりしねぇよなぁ?』

「なんてテンプレな煽り構文」

「まぁそのくらいならAIチェック通るか……」

「通りますねぇ。でも俺らの煽り耐性は簡単に逆鱗判定出しちゃいまして!」

──『ああん? 誰に言ってんですかぁ?』

──『あったりまえだろーがよー!』

──『おう、証明してやんよ、砂漠行こうぜ砂漠!』

──『徒歩でサラサオアシスまで行けたら脱初心者ってことで!』

「……煽り耐性低すぎない?」

「しかも実際水不足で倒れてるし」

「いやお恥ずかしい!」

そして祭りスレの凸民みたいになった人魚達は、皆てんでバラバラに『砂の都・サラサオアシス』を目指して突撃して行きましたとさ……

「そして実況していた人魚達の書き込みは……ひとり、またひとりと途絶えていったのです……あー、やっぱりスレ止まってますね。お通夜状態!」

「ダメじゃん」

「……まさか全滅ですか?」

「全滅ですね!」

「……つまり、これからサラサオアシスに向かう途中には、点々と干からびた人魚が落ちてる可能性がある、と」

「そうなりますね!」

なんて嬉しくない道標だ!!

「じゃ、俺は帰りますんで!」

「「エッ」」

「助けていただきありがとうごさいましたー!」

助けた名前も知らない人魚さんは、すたこらさっさと帰っていった。

「……お仲間、助けにいかないんだね」

「……だな」

「……そしてサラサオアシス行きも、もういいんだね」

「……スレの祭りが空中分解してるからな」

……ということは?

「えっ、マジで僕らが人魚に水やりしてまわる感じ?」

「……まぁ、見かけたらでいいんじゃない?」

「だってベロニカちゃんが見逃すわけないじゃん」

「……儀式までに着けるか怪しくなってきたな」

なんということでしょう!