軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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キーナが経緯を話し終えると、検証勢の集団がそれぞれ思い思いに面白い顔になった。宇宙猫顔だったり、悔しそうにシワシワになったり、両手で顔を覆って天を仰いだり……情緒が忙しそうなのが手に取るように分かる。

そんな面々を置き去りにして、カステラソムリエさんが「はいどーも」と礼を言いつつ進行してくれた。

「そういうわけで、どうしても高レベルサモナーが7人必要だからそこのクランと、あと必要そうな所に声かけさせてもらったわけだ」

カステラさんがそう言って、全員に自己紹介を促してくれた。

相互に把握目的……というか、たぶん俺達向けだな。

……まずは『麗嬢騎士団』の『カトリーヌお嬢様』

後ろにいるのは、執事っぽい老紳士の『セバスチャンZ』と……前にトライアスロンで見たドMに定評のある『番犬ジョン』

それと、サモナー枠の『アリス・リリス』っていう女性騎士が1人。

……次が、『グリードジャンキー』

あんまり興味無さそうな雰囲気の『ガルガンチュア』

真剣に話を聞いているのは、後ろに立ってる『ボルシチ』

一緒にいる謎のペリカン……の、口の中にいた小人の少年がサモナー枠らしい。名前は『お掃除エビ』

……そして『モロキュウ冒険団』の『グランド爺』だ。何度か姿はチラ見してるし、この前トマト結晶をグレッグさんに渡しに行った時に挨拶はしてる。

一緒にいるのは『グレッグ』さんと、サモナーの『海亀』。

「呼んだクランはとりあえずこの3つ。……で、次が、アイテム関係の情報にちょうどいいかと思って、後で煩くならないように呼んだ検証勢」

「言い方」

苦笑いしながら自己紹介したのは、椅子に座っていたモヒカンヒャッハー系の見た目をしたプレイヤーだ。

「どうも、『抜け毛千本ノック』です!」

「「ブフッ!」」

俺も相棒も耐えきれずに吹き出した。

相棒に至ってはテーブルに突っ伏して必死に笑いを抑え始めてしまった。

モヒカンでその名前はズルいだろ!

髪型左右の刈り上げ部分が抜けてしまったみたいに見える。

「よっしゃ、森夫婦も落としたぜ。俺の抜け毛の強さは留まるところを知らねぇな」

「お前は何と戦っているんだ」

論丼さんの冷静なツッコミが追い打ちをかけてくる。やめろ、やめてくれ。

抜け毛千本ノックさんはサモナーだから検証勢を代表して椅子に座っているらしい。【召喚魔法】のレベルも足りているから、そのまま参加してくれるそうだ。

そして最後の一人。

「最後は……場所の提供目的で呼んだ。砂漠に街を作ってる開拓主の『アラジン』だ」

「どうも、初めまして」

砂漠にアラジンか……RP重視なのかもな。

「今回ダンジョンを召喚するにあたり、砂漠のどこに呼べば邪魔にならないかと相談を受けましたが……ぜひともうちの街の真横に呼んでください!」

「え……あの、それは大丈夫なんですか?」

「スタンピードイベントとか来たら街が吹っ飛ぶかもしれんぞ?」

「覚悟の上です。砂漠の街に遺跡は付き物なので、ぜひ!」

あぁ……このゲーム、文明の無い世界だから遺跡って物が無いもんな。

「それにダンジョンが現れてからも、街が真横にあれば何かと便利ですよ?」

「そりゃそうだ」

「攻略する側には願ってもないですけどね」

まぁ本人が言うなら……俺達に否やは無い。

アラジンさんが持参した砂漠の街の地図が円卓の中央に広げられて……戦闘ガチ勢の意見を聞きつつ、街の西側を召喚の儀式場にする事が決まった。

「いやぁ、自分でピラミッドとか作らないといけないかなーと思ってたんで、嬉しいです!」

うん、こだわりが筋金入りだな。

* * *

「よし……サモナーは5人決まったから、あと2人。場所も決まったから、砂漠に魔法陣を描く為に何が必要かを考えて、アイテムを全部揃えればいいな」

埋まった項目を指折り数えるカステラさんに、恐る恐るという感じでお嬢様が質問のために挙手をした。

「他のアイテムの手配は済んでおりまして?」

「いや全然?」

アッサリした返事に、頬杖をついていたガルガンチュアがズルッと滑り落ちる。

「全然なのかよ?」

「だって今日聞いた話だし」

なぁ? とこっちに振ってくるカステラさんに、俺達は揃って頷き返す。

「……今日相談した話なんで」

「今日読んだ本なんで」

「マジで今日の今日なのかよ!」

マジで今日の今日ですが?

むしろカステラソムリエさんの行動の早さに俺は驚きっぱなしだが?

「必要なアイテムは……その本と、魔法陣を描く為の物と……」

「鏡がひとつ、これは市販品でいいんじゃね。綺麗に磨けばいいだけだろ」

「切れ味の鋭い剣を3振り、これはモロキュウで引き受けよう。うちの鍛冶師は腕が良いからの」

「噛み合う錠の無い大きな鍵……これは鍵だけ単品で新規に作れってことかねぇ?」

「それでよいかと。鍵は麗嬢騎士団で承りますわ。細工物が得意なメンバーがおります」

「世界か神かを象徴する物ってのが見当つかんな……」

「それは検証勢で情報を集めよう。聖女に聞き込みもした方がよさそうだ。出来ればそっちの天使にも確認してみてもらいたい」

「了解」

「魔法陣を描くための物……つまり砂漠に魔法陣を描かないといけないって事だよね?」

「大きな布か板に描いて広げた方が確実だと思いますよ」

「ああ、それがいいか」

……うん、やっぱり数の力は強いな。

俺達が特に口を挟まなくても、どんどん担当が決まっていく。

(いやぁ~、熟練プレイヤーはすごいねぇ!)

(そうだね)

情報提供者って事でほとんど仕事を終えてる状態の俺達は、実に呑気に会議を眺めていた。

ファンタジーRPGとかで、色んな国が力を合わせてデカいことしようとしている雰囲気がある。映画みたいだ、モヒカンだけ浮いてるが。

そんな俺達の傍観具合が気になったのか、お嬢様が俺達をチラッと見て声をかけてきた。

「お二人は、何か気になる事等はございませんか?」

俺は特に無い。ひとつ頷いて相棒を見る。

相棒は「ん~」と少し唸ってから

「手順通りだと、儀式をやってもらう7人はそれぞれ必要なアイテムをひとつずつ持ってもらうわけですけど……二人がフェアリーと小人っていう小さい種族なんで、その二人には二人が持てるくらい小さいアイテムを割り振った方がいいのかーって思うくらいですかねぇ」

相棒の言葉に、数人がハッとして「確かに」と呟いた。

そうだな、鍵なんかは『大きな』って指定があるわけだから、小さい種族は担当しない方がよさそうだ。

……そして相棒はさらに続けた。

「あとは……儀式で詠唱する文言がどう見ても厨二病に片足突っ込んでるんで、唱える人は恥ずかしがらずに言えるように頑張って下さい」

それを聞いた何人かは「ゔゔ〜っ!」と顔に手を当てて崩れ落ちた。

……心の黒歴史を開いてしまったのか。

「めっちゃ大掛かりな感じな上に、ダンジョンが増えるっぽいから公式ムービーになりそうな気がするんですよね! 楽しみにしてますね!」

「もうやめてぇ!!」

「チクショウ! 持ち込んだ当人が安全地帯にいやがる!」

俺達夫婦は【召喚魔法】は習得してもいないからな。

頑張ってほしい。