軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:趣味にピンポイント

クラゲの骨以外は特にこれといって特殊そうな物と交換出来そうな物は無く、相棒の交換はひと段落。

で、次の交換は俺の番。

フリーマーケットで買った魔道具をカウンターに乗せる。

猫の店主はウンとひとつ頷いた。

「これは魔道具。魔道具は魔道具と取り替えっこ」

どれどれ、と猫の店主は棚の間を歩き、交換可能な魔道具を見繕って戻ってきた。

「それと取り替えっこはこのあたり。まずは……『煮干し食べ放題』」

「「煮干し食べ放題???」」

「お魚にコレを使うと、それが何でもどんな大きさのお魚でも普通の大きさの煮干しにしちゃう魔道具。どこかの世界の漁師さんが使う魔道具」

魚のサイズが大きいと、サイズに応じた数の煮干しが出来上がるらしい。なんだそれ。

猫の店主もちょっとヨダレをすするな。ジュルリって聞こえてきたぞ。

「お次は……『猟犬の魔笛』」

「……犬笛?」

「そう、笛の形の魔道具。吹くと勝手にMPを消費して、魔法が猟犬の形を取って敵を勝手に追いかけてくれるの。どこかの世界の猟師さんが使う魔道具」

つまり何もイメージしなくても吹くだけで猟犬型の魔法が出るのか。なんだそれ最高か。……ある意味、無詠唱では?

「それからこれは……『時止めの小瓶』」

「あ、かわいい小瓶」

「中に入れた物の時を止めて保管できる小瓶の魔道具」

ふむ、使い道はありそうだが、ちょっと小さいな……

「そして……こっちは『新たなる連結腕』」

「マネキンの腕っぽい」

「体にくっつけると自分の腕として動かせる、ちょっと変わった魔道具。亡くした腕の代わりでもいいし、追加の腕でも大丈夫」

義手かと思ったが、3本目の腕とかでも有りなのか。

今回交換出来るアイテムはこの4つらしい。

「どれにする?」

「『猟犬の魔笛』で」

「デスヨネー」

知ってた、って顔で相棒が頷いた。

それはそうだろ。このラインナップなら犬笛が一番俺の好みだ。犬ってだけじゃなく仕様も。

「またどうぞ」

猫の店主に見送られながら店を後にする。

丸い扉をくぐって外に出て、また眩しさに立ち止まっていると……

通りの角の向こうから、猫の鳴き声と人の声が聞こえてきた。

「ね~こちゃぁあ〜ん! 待ってぇ〜! 今日こそ誘惑に負けて余所見したりしないんだからぁ〜! 必ずアナタの魅惑のボデーを堪能し──」

「「あ」」

たぶん、角をこっちに曲がってくる所だったんだろう……猫だけがスルリと角を曲がって姿を見せて、それを追っていたらしい誰かは、姿が見える前にその声ごと消えていた。

「……3つ目の角だったのかな?」

「……たぶん?」

なるほど、あの店に行く第一段階を第三者が目撃しているとこんな感じになるのか。

追われていた猫は、振り返って追ってきていた誰かがいなくなったのを確認すると、『やれやれ』って感じに座って毛づくろいを始めていた。

「……なんか、ごめんな?」

思わず猫にそう言うと、猫は。

「別に、角3つ曲がればいなくなるから大して気にしてないニャア」

と、鼻で笑った。

……そうか、猫の店の仕掛けは、猫にも優しい仕様なのか。

* * *

猫の店の帰り道。

その足で、図書館に立ち寄った。

新しく翻訳済の本が無いかどうかの確認だ。

結果は特に無し。

と、言うことは、相棒が交換した『失われた言語』を使って読解が可能になる本で内容が初見の物は、ゲーム的には新発見って事になる。

拠点に戻って、相棒は早速未翻訳本の確認を開始した。

「念の為に有志が翻訳してくれてた本から猫さんとの取り替えっこに使ってて良かった」

自拠点でゆっくり確認出来るからな。

図書館も個別フィールド扱いだから他プレイヤーがいなくて静かは静かなんだが、一応司書のNPCがいる。

本当に二人で何も気にせず、となるとやっぱり自拠点がいい。

まずは、持ち帰った『失われた言語』を確認してみる。

「それ読めるの?」

「んー……まず、表紙が開かない、かな?」

「ああ、本の形してるだけで本じゃないのか」

「そうみたい」

って事は説明文の通り、手に持って使うしかないわけだ。

早速、該当する本があるかどうか確かめる作業を開始する。

俺が未翻訳かつ見知らぬ言語の本をテーブルに並べていって、相棒がそれを確認していった。

「ん~……違う……違う……これじゃない…………あっ!」

そして相棒がひとつの本に手を伸ばす。

それは、丸と三角を組み合わせた見たことのない文字の本だ。

「これ! これは読めるよ!」

「おおー、あった」

全部確認してみたが、該当する本はこの一冊だけだった。

相棒の表情が、嬉しそうにキラキラと輝いている。

……そんなキーナにこれを言うのは、少し心苦しいんだけどな。

「じゃあ早速……」

「うん、読むのは明日にして今日はログアウトしようか」

キーナは一瞬フリーズして……恐る恐る俺に訊いてきた。

「……いま何時?」

「もうすぐ深夜2時」

「……明日は?」

「平日」

「アァ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」

フリーマーケットから通しで猫の店と図書館に行ったからな。

かなり濃い内容で時間の流れが頭から飛んでたんだろう。

「残念ながら時間切れです」

「うぁあああっ! ここでぇ!? どうして! どうしてですかー!?」

「明日が平日だからだな」

「ピャアアアアアアッ! 気になるよおお!」

奇声を上げて嘆く相棒を抱きしめて慰めながら、俺は苦笑いしつつログアウトを促したのだった。